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USSF機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『USSF機動空母リベレーター』第二部 [ エディ追跡編、高次元戦闘編 ]
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『五十鈴宙佐の疑惑』

CICが使えなくなった各科管制員は、今後の対応を合議する。それが終わった後、マーティンはランドーに自身とエディについて尋ねる。暫く経った後、地球の統合機動宇宙軍司令部からイギリス艦艇の撃沈処分の命令が下る。〈あまてらす〉の艦橋で五十鈴は、今回の作戦でカインの介入が在った事をロバートソンに打ち明ける。この報告がまだ成されていない事に驚くロバートソンだった。BS(Break Shot:指向性破壊波動放射)によるイギリス艦艇の破壊消滅の時が来ようとしていた……


『五十鈴宙佐の疑惑』




暫くして、ロバートソン以下、CIC管制官たちは目を覚ました。ロバートソンはマーティン中佐から現在の状況を聴くと、メディカルセクションの一室に集まり、今後の対応を話し合った。但し、航法管制のイングリット大尉は別室に移され隔離された。



彼等が話し合っている最中、マーティンはランドーが体験した事象の解明を進めた。彼が思うところ、高次干渉の中で、ランドーと対峙したエディ·スイングは作られたイメージではなく、エディ·スイング本人の高次意識の現れではないか、という推論に至った。



(ランドー艦長が抱えている闇、弱点がエディだったとしても、エディは破壊的な方向に誘導しなかった、………もし、高次干渉に別の意識が割り込んだなら、それはエディではない別の誰かだっ、が、それは無かった、………本物のエディの意識は高次干渉と同じか、その前後で我々を観ていた、と考えられるな…)



マーティンは腕を組み、暫く考えた。



(恐らく、エディの高次意識は、高次干渉時以外に、この艦の何処かに現れていたはずだ、………SAIの記録を調べるしかないか。)




そう思っていた時、ドアが開き、ロバートソンとランドーが入って来た。


「提督、ランドー艦長、お引き止めしてすみません。………今後の対応は決まりましたか?」、とマーティンは聞いた。


「CICが使えない状況だ。全てのコントロールは〈あまてらす〉に集中するが、管制各科員全員を〈あまてらす〉の艦橋に詰め込む訳にはいかない、……あそこは狭い。そこで、私とランドー艦長だけ〈あまてらす〉に入る。他の科員は管轄の重要セクションに居てもらう。」、とロバートソンは答えた。



「分かりました、提督。」、そう言うとマーティンはランドーの方を見た。


「ランドー艦長、個人的に話が有ります……」、そう言うとマーティンは再びロバートソンの方に視線を向けた。それに気が付いたロバートソンは、〈あまてらす〉へ行く、とランドーに伝えると部屋を出て行った。


「何かっ?」、とランドー。


「ランドー艦長、貴方の高次干渉時の出来事は調べました、………貴方と、かつてのTX機関操作員、エディ·スイングは、………」、と言うとマーティンは言葉を詰まらせた。



ランドーは彼の聞きたい事が分かっていた。


「中佐、君が聞きたい事は分かっているよ、………私とエディ·スイングは人工人だ。」


「…………」、マーティンは黙った。


「この事は秘匿してくれ、艦の規律に影響する。」、とランドー。


それは余りに簡潔な暴露!、そこに在ったのは恐れや誤魔化しではなく、毅然とした組織の規律を守る軍人の姿だった。その姿にマーティンは畏敬の念さえ禁じ得なかった。また、それを聞いた自分に情けなさを覚えた。



「勿論です、貴方が何者でも、この艦の艦長です。私もこの艦と共に在りますっ!」、とマーティン。


「聞きたかったのは、それだけかな?」、とランドーは尋ねた。マーティンはもう一つ、という感じで少し俯き、人差し指を立てた。


「艦長が高次干渉に侵された時に見たエディ·スイングは本人の高次意識の現れです。高次干渉の前後で彼女を見ましたか?」


「いや、それは無かったな。」、とランドー。彼はそう言うと席を立ち、ご苦労っ、と言うと部屋のドアを開けて外へ出た。マーティンはその時、通路にロバートソンが立っているのを見た。


マーティンは敬礼で二人を見送った。


(提督はランドー艦長の事を知っておられるのだな…)、とマーティンは思った。




     ◆




リベレーターが土星宙域で留まり、艦内時間で二日が過ぎようとしていた。その頃、やっと地球の統合機動宇宙軍作戦司令部からイギリス艦艇の処分の回答が届いた。


「………敵の機動要塞及び、イギリス艦艇は撃沈処分せよっ、との事です。ロバートソン提督、…」、と五十鈴。


ロバートソンはランドーの方を向いて小さく頷いた。


「承知しました、………五十鈴さん……失礼、五十鈴宙佐。BS(Break Shot:指向性破壊波動放射)の準備をお願いします。私はイングリット大尉を連れて来ます。」、とランドー。


「お願いします……」、五十鈴は力の無い声で言った。




ランドーが艦橋を出た後、五十鈴はロバートソンに話した。


「ロバートソン提督、貴方には言いますが、今回の作戦の成功、………成功と言えるものか分かりませんが、本艦が、こうして無事で居られるのは……、カインの介入が有ったからです。リベレーターが次元斥流で超次元から現時空間にフェードアウトしそうになった時、彼らが手を差し伸べてくれたのです……」、と五十鈴は吐露した。


私は、その事を聞き驚いたが、同時に気持ちが軽くなった。


「それは、……誰だったのだ!?」、と私は尋ねた。


「私が日立宇宙工廠で逃がさせた二人、それと、リベレーターの元TX機関操作員、エディ·スイングです。」、と五十鈴は答えた。


「エディ!!……、彼女はカインと行動を共にしていたのだなっ!………、結果だが艦の安全が保たれたのは良かった。」



五十鈴は、それを聞いていたが暗い顔をしていた。



「提督、この事は作戦司令部には、まだ報告していません………」、と彼女は言った。それを聞いた私は一瞬、ウッ、となった。


「何故、報告しなかったのだっ!これは重大な報告義務違反だぞっ!! それもカインが介入したとなると必ず、その理由を問われる筈だっ!」、私は一転して谷底に落ちたような気持ちになった。



「この件は全て私に責任が在ります。何れ、真実は明らかになります。私は地球に戻ったら全てを話さなければなりません……」、と五十鈴は言った。



私は早急に答えは出さなかった。彼女が日立宇宙工廠で月の者、ミカ·エルカナンと風早志門の脱出の手助けをしたからこそ、現在のリベレーターの無事が在るのだ……。



「五十鈴艦長、結果を急ぐ必要はない、………その事は地球へ帰るまで時間を掛けて話し合おう。君は人道を鑑みて行動したっ、そのお陰で我々は現在、無事で居る。君の行動が結果として自身を救ったんだ。絶対、悪くはならないっ!」、と私は五十鈴を励ました。




そんな中、ランドーがイングリット大尉を連れて艦橋内に入って来た。


「提督、五十鈴宙佐、イングリット大尉を連れて来ました。」


「ご苦労だった。」、と私はランドーを労った。


イングリットは顔を俯けたまま、肩を震わしていた。



私は五十鈴宙佐や自分の事も含め、彼女に対し、次の様に言った。


「大尉、………人は間違いを犯す。我々は常に自身の心と向き合わねばならない、………それは外に在るものじゃない。大尉、……自身の闇と闘うのだっ!、そして我々も……」、私は自戒を込めて彼女に言った。



「五十鈴宙佐、トリガーを…」、とランドー。



「待って下さい、シーケンスが途中です、………」、五十鈴はロバートソンとの話し合いで、BSシーケンスが進んでいない事に気が付いた。




「…………ターゲットロックッ!目標、敵機動要塞及び、イギリス艦艇、アークロイヤル、ヴァンガード、……エネルギーレベル、全消滅っ………ランドー艦長、射撃準備完了しました。」、そう言うと五十鈴はリモートトリガーをランドーへ渡した。



ランドーは大尉に言った。


「君の手でスコット提督を葬ってくれ…」


それに対し、イングリットはランドーと五十鈴宙佐に悪口を浴びせた。


「何で私がっ!? これは嫌味ですかっ! 私がイギリス宇宙防空軍の出だからっ!? わざとヤラせるんですかっ!」



ランドーはそれを聞き、眉間にしわを寄せ、彼女に迫ろうとした時、五十鈴が割って入った。そして、静かに諭すように話した。




「イギリス宇宙防空軍の栄光の燈火は、後進の私たちでは消す事は出来ない。だからこそ、敬意を持って貴方にお願いしたのよ。イングリット大尉……」



それを聞いたイングリットは、立ったままウワァーッ、と大泣きした。






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