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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第二部 [ エディ追跡編、高次元戦闘編 ]
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『カイン の介入』

超次元内でSCV-01リベレーターにフェードアウト(次元斥流)の危機が迫った時、〈あまてらす〉の艦橋内に現れたカインのミカと風早志門。彼等の波動はリベレーターの波動を安定させ、五十鈴の作戦を成功させる。超次元空間からBS(Break Shot:指向性破壊波動放射)でイギリス艦艇のSAI(艦統合AI)を破壊したリベレーターは現時空間に再び現れ、航空隊と陸戦突撃隊、回収調査班を帰投させる。


『カイン の介入』




リベレーターの超次元離脱の危機は刻一刻と迫っていた。



その中、五十鈴はリベレーター以外の波動を感じ取った。


(こんな時にっ! この空間に一体、誰がっ?!……超次元空間には人間以外、高次元のエネルギー意識体は入れない筈だ…)


その波動は大きくなりリベレーターを包み込もうとしていた。


(フェードアウト[ 次元斥流 ]まで時間が無いっ! ダメだっ、元の次元へ押し戻されるっ!!……)



そう思った時、正体の分からない波動はリベレーターを包み込み、波動を安定させた。リミットは解除され、艦は超次元内で安定を保っていた。五十鈴はエッ?っと言う感じだったが、次に艦橋内に数人の波動を感じた。それは、何処かで感じた波動だった。それは次第に、人間の形として実体化した。


リベレーターと同期した其れ等を、SAIは艦内侵入者として緊急警報を発しなかった。



状況を見て、五十鈴は思わず叫ぶ……


「貴方たちっ!、……どうして此処にっ!!」


実体化したのは、五十鈴が日立宇宙工廠で逃がさせた、カインの女性、ミカ·エルカナンと風早志門、そして、もう一人は知らない女性だったが、その者はかつてリベレーターに関係のある者、というのが伝わって来た。


「五十鈴お姉さん、状況は分かっているっ。仕事を続けてっ!」、と志門は言った。



五十鈴は波動の正体が判ると取り直し、BS(Break Shot:指向性破壊波動放射)のシーケンスを続けた。


「ウェポンズレデイッ! 照準、ヴァンガード及び、アークロイヤルのSAI、制御バイパス、ターゲットロックッ、………サルボーッ!、ファイヤッ!!」、と五十鈴。



リベレーターセントラルデッキに在る〈あまてらす〉の艦体から銅色の光が二回連続で放射されると、それは次元を超えターゲットへ届いた。




数秒後、五十鈴はイギリス艦艇のSAIの破壊を確認した。


「ターゲットデストロイッ!状況終了…」、そう言うと五十鈴はヘルメットを脱ぎ、フゥーッと大きく息を吐いて、座ったまま上半身を崩した。



顔が血まみれの五十鈴を見た、もう一人の女性は駆け寄ると、持っていた FAK(First aid kit:応急処置セット)を胸ポケットから取り出し、ガーゼで五十鈴の顔を拭いた。


五十鈴は、その女性が持っているFAKのパッケージを見ながら、その女性に呟いた。


「それは統合機動宇宙軍の官給品ね、………貴方はこの艦に乗っていたの?」


女性は小さく頷き、次の様に言った。



「私はエディ·スイング、………この艦のTX機関の操作員でした……」


「………、ランドー艦長が追っていた人ね…」、と五十鈴は脱力した感じで答えた。



横で見ていたミカが五十鈴に進み出て、自分の首にかけていたネックレスを外し、五十鈴の首に掛け直した。それは日立宇宙工廠から脱出する際、五十鈴から手渡された物だった。


「この前は本当にありがとう、……これのお陰で私は自分の身体を保てた、………私はもう大丈夫なので貴方が持っていて下さい。」



ネックレスが五十鈴に戻ると、彼女の身体は急速に力を取り戻して行った。


五十鈴は志門の方を向いて尋ねた。


「どうして助けてくれたの?」


「この前の借りを返したかったのと、エディがそうしてくれ、と強く言ったんです。彼女は自分の意識の中でずっと、この船を観ていたんです。彼女は、意識の中で、少し前にこの船の艦長と会って話をしました、……彼女は僕とミカに言ったんです。この船を助けてあげてって………」、と志門は答えた。



五十鈴は志門の話した事がよく分からなかったが、それは後に敵の高次干渉と合わせて話す事になるとは思いもしなかった………



「では五十鈴さん、私たちはこれでやる事が終わったので帰ります。」、とミカは言った。


五十鈴は身体を起こし、ミカに尋ねた。


「帰るっ?!、この次元に消えたカインの都市にっ? 何処に居るのっ?!」



ミカと志門、そしてエディはお互いに顔を合わせた。そして、互いに小声で呟き、小さく頷いた。


「私たちは、あなた方とそう離れていないところに居ます。」、ミカはそう言い残すと、他の者と一緒に影を薄めて行き、見えなくなった。




     ◆




安全宙域に避難した回収班の内火艇と救難機、陸戦突撃隊輸送機はリベレーターからのコールサインを待っていた。また、航空団の戦闘爆撃機ファイヤーフライも機体の損耗を防ぐために安全距離から状況を監視していた。



救難機のパイロットがマーティン中佐に報告した。


「少佐、来ましたっ!リベレーターからコールサイン、RTSです。誘導QB(Quantum Guidance Beacon : 量子誘導ビーコン)確認っ!」


「来たかっ!リベレーターと継ないでくれっ…」、とマーティン。


パイロットは出力回線を開き、リベレーターと継ないだ。



「リベレーター、回収調査班のマーティンだっ、状況はどうかっ?」、とマーティン。


{ 攻撃目標(イギリス艦艇)は沈黙した、状況終了、……… 全機、帰投して下さい。} 、と五十鈴の声が有った。




  ……………………………




リベレーターは外に出ていた機体収容の為、土星リングを離れた位置で滞宙した。


航空団の戦闘爆撃機隊と回収調査班、陸戦突撃隊の輸送機が帰還すると、五十鈴はマーティン中佐に高次干渉救助チームを編成させ、直ちにCICへ向かわせた。五十鈴も操艦をSAI(艦統合AI)に渡し、〈あまてらす〉の艦橋からリベレーターCICへ走った。



CICエアロックの前で五十鈴はマーティンと落ち合うと、次の注意点を伝えた。


「先ず、高次ジャマーのエネルギーバイパスを繋いでCIC内の高次干渉汚染を除去して下さい。室内に入る時は絶対に電子機器を持ち込まないでっ、どんな微細なエネルギーパルスも感染を引き起こす可能性が有る、………CIC管制科員の収容が終わったら、この区画は地球帰還まで閉鎖して下さいっ!」


「承知したっ、管制科員の対応は私に任せてくれっ!工廠内の件もある。」、とマーティン。



次に五十鈴は、申し訳なさそうな顔をしてマーティンに伝えた。


「中佐、………イギリス艦艇はまだ形を残していますが、遺体の回収は諦めて下さい。イギリス艦艇は

BS(Break Shot:指向性破壊波動放射)で破壊消滅させます……」



マーティンは五十鈴を見て少しの間、何も言わなかったが黙って頷いた。




五十鈴は踵を返すと、再び〈あまてらす〉の艦橋へ戻り、QCC(Quantum Cipher Communication:量子暗号通信)で地球の統合機動宇宙軍作戦本部に状況経過の報告とイギリス艦艇の撃沈処分の許可を申し出た。








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