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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第二部 [ エディ追跡編、高次元戦闘編 ]
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『幽閉の恐怖 』

エネルギーが全ダウンしたリベレーターCIC。暗闇の中、各科管制員は状況を確認するためCICの外に出るが、そこで彼等を待っていたものは、予想もしない恐怖だった……

『幽閉の恐怖 』




CICは完全に灯りを失った。それは非常灯さえ点かない異常事態だった。


「何が起きたっ!」、と私は立ち上がった。


ランドーは私には応えず、すぐさまSAIに状況を問うたが全く反応が無い……


「フスター少佐、どうなっているっ!?、バートル中尉、動力系統はっ!?」、とランドーは闇の中で叫んだ。


「分かりませんっ、システムが全て死んでます! これでは確認すら出来ないっ!」、とバートルは大声で言った。




「ランドー艦長、艦内通信もダメですっ! 一旦、CICから出ましょう!」、とフスター少佐は進言した。


「………フスター少佐、アンドロイドは?」、とランドーは聞いた。


各エリアの者は手探りでアンドロイドの待機シートへ行き、確認したが動かなかった。


「ダメだ………、SAIリンクと個体AIも動いてない」、航法管制の中島は呟くように言った。彼の隣に居たイングリットは額から脂汗を滲ませ、顔を俯け、自分のやった事が、この状態に何かしらの関連があったのではないか、と震えていた。



「提督、一旦、CICから出ます、灯りが有りません。気を付けて、………各員、CICから退去っ!手動でエアロックを開けるんだ!」、ランドーは叫ぶと、私と共にエアロックへ進んだ。



全員が手探りでエアロックの手動開放のためのハンドルを探し出し、何とかエアロックの開放に成功した。


エアロックをこじ開け、艦内移動用のリニアチューブに入ったが、ここにも灯りはなく、システムもダウンしていた。




この異様な状況でランドーは腕を組み考えた。


(リニアチューブもダメか………、CIC以外のセクションはどうなっている、………)


ランドーは顔を上げ、全員に伝えた。



「全員で艦内を調べるんだ、各科エリアの者は管轄のセクションへ行けっ! それと、艦内のガンロッカーは絶対に開けるなっ、私は〈あまてらす〉へ行く、提督はCICに残って下さい。」



ランドーが指示を出した後、各科員はリニアチューブに入り、徒歩で所轄のセクションへ向かった。




「ランドー艦長、気を付けて行け。何が起きるか分からん!」、私は最後にリニアチューブに入ろうとする彼に言葉をかけた後、シートに腰を落とし、ポケットの中の電子タバコを取り出し、吹かした。


(こいつは生きてるみたいだな………)、そう思いながら、私は握っている過熱器を見た。それはバッテリーの残量を示す緑色のLEDが、暗闇の中で一際明るい光を放っていた。



(奇妙だな………、非常用のハンドライトでさえ、点かないというのに?)






暗闇の中で暫く時が経った頃………



私は数本目のカートリッジを過熱器に差し込もうとした時、不意に横から女性に声を掛けられた。私は固まった………


(CICには私しか居ない筈だっ………)



「吸い過ぎよ、………貴方は困った事が有ると、いつもそうやってタバコを吸う癖が有るんだから。」


私は、ゆっくりと声の方へ顔を向けた。



そこには、まるで蛍光塗料で浮かび上がる様に”家内“が立っていた。


(バカなっ!! こんな所に居るはずがないっ!)、私は激しく、この状況に混乱した。



家内は続けて言う………


「私は貴方に早く家に帰ってきてほしいの………、いつもそう……私たちを放っておいていつも宇宙に飛んでいくのよね………どんなに寂しい思いをしたか………」



(?)、私は固まった顎を無理やり動かすように、その者に声を掛けた。


「キャシー、君は………私が家を出る時、貴方は家の誇りよ、って言ってくれたじゃないか………君自身も軍人じゃないか、何で今さら、そんな事を言い出すっ?!」


「それは軍人として、………私はいま、一人の女性として言っているの……」、と家内?は答えた。



「………その部分はすまないと思っている…」、と私。


「貴方は軍人だけど、その傍らで”人道“を掲げてきたんじゃないの………軍規と私、どっちが大事……」




「…………」、私は黙った。




     ◆




一方、火器管制のフスター少佐は兵器システムを確認する為に妹のマーベリット大尉とリニアチューブを進んでいたが途中、はぐれたようで、呼んでも返事が無かった。


「クソッ、あいつ何処に行ったんだ……、まあ、リベレーター艦内図はニューラリンクシステムのVerアップの時に更新しているから大丈夫か……」



若干の恐怖を紛らわす為にフスターは独り言を呟きながら、重粒子砲の射撃管制室へ入った。声を掛けたが応答は無い……


(………誰も居ない……ってのが異常だよな…)



「フスター少佐。」


その声にフスターは飛び上がった。この声はランドー艦長のものだったが、こちらへ近づく足音がしなかった事と、ここへ来るまで追い抜かれた記憶も無い………


「ランドー艦長、いつの間に……、?」


「私はもうここに来ていた。」、とランドー?は言った。


これを聞いたフスターは訝しんだ。


(射撃管制室へ来るには、何重もの防御区画の狭い通路を通らないと行けない………、そんな所で風のように自分の横を通り過ぎれるのかっ?)



「艦長、〈あまてらす〉はどうなったのですか?」、とフスターは彼に尋ねた。


「〈あまてらす〉は大丈夫だった、………それより敵が多数、艦内に侵入している。直ぐにガンロッカーを開けてくれ。」、と彼は言った。


「艦長、それは危険です。この状況で暗視スコープも無しでは敵味方の判別が出来ませんっ! ならば、〈あまてらす〉のTX兵装を使用して下さい、アレなら個別の目標を確実に倒せますっ!」、とフスターは自分の意見を具申した。



「TX?………、そのような物は無いっ! 早くガンロッカーを開けろっ!急げっ!!」、と彼は威圧的に発した。



(!!………違うっ、コイツは艦長じゃないっ!)





      ◆





動力管制のバートル中尉とマーク少尉はお互いの距離を声で確かめながらメイン推力器の熱核炉へ進んでいた。




動力室に入った二人は室内の機器にぶつからないよう、慎重に歩みを進めた。


「ここだ、着いたぞ、マーク。」、とバートルはマークに呼び掛けた。


「どうです、中尉?」、とマーク。


バートルは熱核融合炉の目視点検用の分厚いハッチを開いたが、中に見えるものは闇だけだった。


「一体、どうなってるんだ?電場は直ぐには消失しないように設計されている………、炉は完全に死んでるな…」、そう言うとバートルは次に、エネルギー全停の時に起動する筈の ER(Emergency Reactor:緊急用反応炉)を調べた。


マークは外殻壁に触れたが、直ぐ異常に気が付いた。


「バートル中尉、これは異常ですよっ! 艦のERは竣工の時からずっと稼働し続けている筈です、………全く熱が無いっ!?」





そんなやり取りの中、二人を割るように火器管制のマーベリット大尉の声が入った。






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