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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第二部 [ エディ追跡編、高次元戦闘編 ]
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『密約』

広大な地下ドック、〈あまてらす〉のガントリーの底部で志門とミカを発見した五十鈴一等宙佐とロバートソン。そこで五十鈴とロバートソンは二人の意思を確認し、エレベーターカプセル内で二人と話し、最終的には空間転移テレポーテーションで二人を工廠内から脱出させる。


だが、これは五十鈴とロバートソンにとって重大な軍規違反だった………


『密約』




ロバートソンと五十鈴は銀髪の女と目が合ったとき、何故かこの者を理解した。だが、五十鈴艦長は腰に装備しているハンドガンを抜き、この銀髪のミカを牽制した。


「動くなっ、異星人!」と五十鈴は叫んだ。


ロバートソンは五十鈴の前に出て振り返ると落ち着いて言った。

「五十鈴艦長、彼らは戦う意図はない。さっき君も理解した筈だ。」


ロバートソンの言葉を聞いた五十鈴は小声でロバートソンに言う………

「分かっています、提督………私の言う通りに動いてください。多分、モニターで監視されています。」


五十鈴艦長は片手を上げ、銃口を向けたまま、こちらの言う通りに動け、というふうに二人を誘導した。



〈あまてらす〉へ上がるガントリーのエレベーター内へ入るよう五十鈴は誘導した。



捕獲対象の二人、志門とミカ、そしてロバートソンがエレベーターカプセルに入ったところで、五十鈴はドアを閉鎖しカプセル内のモニターを切った。そして、自身が装着しているインカムを外した。


「すみません、提督………もういいわよ、二人とも。楽にしなさい。」、そう言うと五十鈴はハンドガンをホルスターに戻した。



ロバートソンは二人の前に進み出た。



「先に君と目が合ったとき、君たちの全てが私の中に入ってきた………君は月の裏側の基地に居た女性だな、月のドローンオペレーションの映像で見た………」


ミカの後ろにいた志門はフーッ、と大きく息を整え、前に進み出ると自己紹介した。


「貴方たちは僕たちに危害を与えないようですね、彼女がそう言いました。僕は風早志門、彼女はミカ·エルカナン。出身はカイン………」


「カイン………月の人間の総称なのか? 私はJC·ロバートソン、こっちは五十鈴一等宙佐だ………私は最近まで、君が思っているところの軌道プラットフォームで敵性異星人と戦っていた。カインともね………」、とロバートソンは志門に言った。


志門は少し驚いた顔をした。


「あの船のっ………艦長ですか?」と志門。


「いや、………艦長は君たちを此処に連れて来た者だ。…………君たちに聞きたい、我々が君たちと戦わねばならない理由は何だ?」、とロバートソンは尋ねた。



志門はどこから話して良いのか腕を組んだ。それを見たミカは霊子感応でその記憶をロバートソンへ送ると、加えて口頭で次のように述べた。


「争いの原因は遥か太古に遡る…………だけど、今、貴方がたを戦わせているのは、それとは違う理由だと私は思う…………いや、そう思いたい。」、とミカ。


「そう思いたい、………か。確かに………昔のボタンの掛け違いを世代を超えて話しても意味はない。軍人の自分が言うのもアレだが、政府が軍事に力を入れる理由は、戦争をしなければ社会が成り立たない構造を作ってしまった事だ………平和な時も必ず仮想の敵を忘れない。」、とロバートソン。





横で話を聴いていた五十鈴艦長は志門の方を向いて尋ね

た。



「私はあなた達がアメリカの対異星人特別チームから審問を受けていた事を知っているけど、彼らのイメージは貴方にとってどうだった?」


「残念だけど疑念と支配しか感じなかった…………審問の責任者の、………クラウディアって名前のお姉さんだったかな? あの人は異星人の事で家族に何か有ったんだと思う。根は悪い人には感じなかった………」、と志門は答えた。


「志門くんもミカさんと同じような能力があるの?  私は少しだけ、そういう能力を持っているの。人の感情が文字のように読めたり、近い時間の予知とかね………」


五十鈴艦長の言葉を、横で聞いていたロバートソンは、前に彼女が自分が思っていることに対し、私が聞く前に答えていた事実を思い出した。


(あの時は冗談かと思っていたが………本当だった!)




志門は目を大きくした。


「そうなんだ! もしかしたら………自分も最近になってそういう部分が覚醒しているのかも知れない。ミカは隈野出津速雄にコンタクトしてから劇的に変化している。」、と志門。


「志門くん、貴方は超次元に逃げた仲間を追っているのね………」、ここで五十鈴はロバートソンの方を向いて話した。


「提督、アメリカ政府の特別チームは必要な技術をミカさんから取得すれば、恐らく二人を拘束監禁するか、表に出れないようにするでしょう。彼らはカインと交渉する前に対等な力を持ちたいと考えています………もし、それが出来なければ二人と引き換えに技術的要求をするかも知れません、………私は志門くんとミカさんを逃がしたいと思います。」



「一体、どうするのだね?」とロバートソンは聞いた。



五十鈴は暫く腕を組んで俯くと、ミカの方を向いて尋ねた。

「ミカさんは空間転移テレポーテーションは出来る? 貴方の力は秒を追うごとに大きくなっている感じがする。」



ミカは疲れた感じで顔に汗を滲ませながら言った。

 

「確かに力は大きくなっているけど、私の身体が追い付いていない………」



五十鈴はそれを聞くと首のジッパーを下ろし、身に着けていたネックレスをミカに手渡した。そのネックレスには勾玉のような物が付いていた。


「これは?」、とミカ。

「TXマテリアル、貴方が言うところの霊子で出来た物よ。これで貴方の身体は少し楽になると思う………」と五十鈴は答えた。



ロバートソンはその事について尋ねた。


「TXマテリアル(エキゾチックマテリアル)はTX機関開発のために厳重に管理されている筈だが……何故、君が?」


五十鈴はクスクスッ、と笑いながらロバートソンに答えた。


「これは永らく家に伝わっている物(私有物)なんです。私の家は代々、巫女の家系ですが、私はその能力を山元作戦司令に認められて、このプロジェクト(あまてらす建造計画)に参加しました。」



五十鈴は志門の方を向いた。



「ミカさんと一緒に、ここから飛びなさい!」、と五十鈴は言った。


「飛ぶ、空間転移?………でもミカが能力に追い付いていない。」、そう言って志門はミカの方を見た。


五十鈴から受け取ったネックレスを手に巻き、祈るように俯いているミカだった…………次に変化が訪れた。



ミカの身体は薄い半透明になり、次に眩い光に変わった。


「さあ、行ってっ!」、と五十鈴。



志門は頷くとミカの光の中へ入った。すると光は薄くなって行き、二人の影は消えた。



「消えたぞっ!、こんな事が………人間の体で可能なのかっ?!」、と驚くロバートソン。この時、彼はリベレーターに乗艦していたGEバイオエレクトリック社のシュミットの言葉を思い出した。


(エディ·スイングも簡易な空間転移が行える、と彼は言っていたな………)



五十鈴はロバートソンに呼び掛けた。


「提督、私たちは命令に背きました。これは明らかな反逆罪です…………ここで有った事は、無かった………私たちは異星人を捕らえようとしたが空間転移テレポーテーションにより逃げられた、…………いいですね。」、五十鈴はそう言うとホルスターからハンドガンを取った。






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