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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第二部 [ エディ追跡編、高次元戦闘編 ]
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『エイリアン脱走』

クラウディアたちは月面の異星人、ミカの審問を試みようとするが、魂が覚醒したミカはクラウディアたちを打ち倒し志門を救出、脱走を図る。

工廠内は警報が発令され、〈あまてらす〉の艦長、五十鈴一等宙佐とロバートソンは地下ドックへと急ぐ。


『エイリアン脱走』




酷い扱いを受けたその日の晩、ベッドに身体を横たえた志門に誰かが呼び掛けた。


それは、言葉というより明確なエネルギーの方向性………前にエディ·スイングと行ったテレパシー(意識感応)よりもダイレクトで深いものだった。



「ミカ?ミカなのかっ………うん、大丈夫…………でも、前の世界の記憶を抜かれてしまった………ミカにこんな能力が有った?…………隈野出津速雄と接触したとき魂が覚醒したって!?…………空間転移テレポーテーションは出来るの?………さすがにそこまでは出来ないって?………俯瞰するように本質を観る力?…………透視能力かっ!…………明日はミカが尋問される、僕たちは記憶と知識を抜いたら用済みらしい、ミカ、逃げられるか?…………分かった、気を付けて………」



志門はまるで、携帯で誰かと話すように独り言を呟いた。


(クラウディア………彼女は僕に用済みだと言った。彼らは必要な情報を手にして何をするんだ?  何れにせよ、此処に居ては危険だ。)と志門は思った。




   …………………………………………




翌日、クラウディアたちは必要な機材のチェックを済ますとミカのいる独居房へ進んだ。彼女の暴れっぷりがあまりに酷かったため部屋を変えなければならなかった。


入口には警護の者がいて、クラウディアたちに敬礼した。先ず、クラウディアはドアの覗き窓から中の様子を伺った。


ミカは少し長めのチェーンの付いた手錠を掛けられた状態で椅子に座り、憎悪の目で彼女を睨みつけていた。


「これはダメね。入ったら噛みつかれそうだわ………ガトウ、麻酔ガスを用意して。」、とクラウディア。


ガトウは機材を載せた台車からボンベを取り出しホースを入口ドアの下部にある給仕用のスリットに差し込もうとした、その瞬間……………………



“ドカァアアーンッ”



まるで爆発するような音と共にドアが吹き飛び、ガトウは入口対面の壁に叩きつけられ気絶した。ガスボンベがガランガランッと廊下を転がって行く…………


「爆発物かっ?!」


クラウディアは警護の者から小銃を引ったくり、ボルトを引くとチャンバーに弾を装填した。


クラウディアが入口に銃口を向けるのを見て、後ろにいるマーキュリーとマッキナー大尉は慌てた。


「次官、やめてくださいっ!」、とマーキュリー。マッキナー大尉も叫んだ。

「クラウディア、大事なサンプルにキズを付けるつもりかっ、銃を降ろせっ!」




そう言っているとき、衝撃で発生した埃の靄からミカが現れた。クラウディアから1メートルも離れていない。


クラウディアが親指でセーフティーを外し、人差し指をトリガーに掛けようとしたその時、ミカはまるでその意識を読んでいるかのように銃口を払い、目にも止まらない早さで三人を打ち倒した。


警護の者は無線を耳に当てたまま、廊下を走って逃げてゆく…………



直ぐに警戒のサイレンが工廠内に鳴り響いた。




  …………………………………………




警戒警報を聞いた赤松三等宙将は驚いた。内線で状況が伝えられた。


{ 司令、異星人が脱走しましたっ! }


「工廠内の警備を固めろっ!絶対、地下ドックには行かすなっ、高次ジャマーは発信しているかっ?」


{ 発信は継続中です! }


「了解したっ、だが火器は絶対に使うなっ!」、赤松は怒鳴るように発した。


赤松は内線で五十鈴一等宙佐を呼び出すと直ちに地下ドックへ急ぐよう命令した。


「五十鈴艦長、急いで〈あまてらす〉に乗艦せよっ!エイリアンが工廠内を移動している、艦を守れ!」




  …………………………………………




ミカは志門の部屋のドアを蹴破ると志門を救出した。


志門はミカの力に驚いた。ドアは鋼製で頑丈に出来ていたからだ。


「ミカッ…………そんな力はなかったはずだっ?!」と志門。

「出津速雄とコンタクトしてから………力が

増大して………」、ミカは苦しそうに志門に言った。それは自身の力を制御出来ていないように志門は感じた。


「とにかく、此処から脱出しよう!あいつらは僕たちを消すつもりなんだ!」と志門。




ミカは、この工廠内を初めから知っているかのように、志門の手を引っ張って、止まることなく走り続けた。


途中、ミカが居た独居房の前に差し掛かると、ミカが打ち倒した四人はまだ床に転がっていた。


それを見た志門は足を止めた。


「あれは………クラウディア。ミカ、まさか殺したのかっ!?」、そう言って志門は顔を青くした。


「安心して、志門。今回、急所は外している………貴方の悲しい顔は見たくないから。」、とミカは悲しげな表情で志門に返した。


志門はミカの肩を引き寄せて言う………


「ミカ、ごめん………こんな世界に君を巻き込んでしまった。」


そう言うと志門は床に横たわったクラウディアへ走り、屈んで彼女の顔に手をやった。


(お姉さんもごめんよ………)



立ち上がると志門はミカに連れられて走って行った。




      ◆




その頃、〈あまてらす〉の艦長、五十鈴はロバートソンと共に地下ドックへ急いでいた。

地下へ続くシャフトを出ると五十鈴は歩哨にドックの状況を聞いた。


「ドックの状況はっ?」

「現時点で侵入者は有りません!」と歩哨は答えた。

「捕獲対象はエイリアンと人間一人だっ、絶対に火器は使うなっ!」、と五十鈴。


通路を出たあと、ドックの広大な空間が広がり、五十鈴とロバートソンは〈あまてらす〉底部に伸びるエレベーターシャフトの前まで来た…………その時だった。



ガントリーの影から男性と銀髪の女が現れた。ロバートソンはそれが捕獲対象の二人(志門とミカ)だと気が付いた。


「五十鈴艦長、あそこに居るっ、異星人と男だっ!」、ロバートソンは五十鈴の方を向き、叫んだ。




銀髪の女はロバートソンと五十鈴の存在に気づき、お互いに目が合う。









SFミリタリーアクション『機動空母リベレーター』はSFローファンタジー『カインの使者』とリンクしています。一つのストーリーを片側からの視点で描いています。この機会に双方のストーリーを追ってみてください。


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