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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第二部 [ エディ追跡編、高次元戦闘編 ]
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『最新鋭艦〈あまてらす〉』

エディ捜索に出たランドーと別れたロバートソンは新造最新鋭艦〈あまてらす〉の艦長、五十鈴摩利香一等宙佐の案内で工廠地下ドックへと進む。そこで見たものは日本が対高次元技術を結集した超次元戦闘艦〈あまてらす〉だった。

ロバートソンはそこで五十鈴 摩利香一等宙佐から艦の詳細について聴く。この中には日本の深宇宙防衛指針に関しても説明が及んだ。


『最新鋭艦〈あまてらす〉』



私はエディ捜索に出たランドーと別れた後、五十鈴摩利香一等宙佐に伴われて工廠の地下ドッグへ進んだ。


大深度地下へ伸びるシャフトのエレベーター内で五十鈴は私にSCV-01(リベレーター)の戦績を讃えた。


「提督とランドー艦長のSCV-01(リベレーター)による火星戦績は最初の対異星間開戦として歴史にその名を刻むことでしょう。」と五十鈴宙佐は言った。



彼女はそう言いつつも、私の階級を気にしてか遠慮しているように感じた。私は次のように答えた。


「先に言って置くよ。今から私の言う事を聞いて気を悪くしないで欲しい………君とは真実に話したいからだ。先の君が言った事は確かに歴史には残る。だが、決して賞賛を受ける事ではないのだよ、これは戦争なんだ。既に艦の運用で亡くなった者も出ている………五十鈴艦長、君にはその責任と覚悟は在るかね?」


「勿論っ!私の乗る艦で私以外に戦死者は出ません!」と彼女は笑顔で返す。


(出ません? 出しません、なら艦長としての責任を表す言葉だが…………)と私は彼女の言葉に疑問を抱いた。





エレベーターが地下底部に着きドアが開かれると外に立っていた歩哨は姿勢を正し敬礼した。五十鈴宙佐はいったん立ち止まり、一人々の顔を見てそれぞれの方を向き丁寧に敬礼した。

アメリカ式に慣れている私は彼女の末端の者に対する敬意の有り方は過剰なまでと思いつつ、内省を覚えた。



長い通路の先に出て私の目に飛び込んで来た物はまるでプラモデルのディスプレイに使われる様なタワー状の独特な形状のガントリーの上に接続された中型?、いや小型艦だった。



立ち止まり、それを見入っている私に彼女は言った。


「驚いて居られるようですね、ロバートソン提督。もっと大きな艦だと思っていましたか?」



彼女の問い掛けは的を射たものだった。日本の工業技術力であればリベレーターと同クラス、若しくはそれ以上………まして〈あまてらす〉という神の名を冠した艦であれば、それなりの威容を誇っている…という先入観が在ったからだ。


彼女はフフッと笑うと次のように言った。



「確かに日本の工業技術力は統合機動宇宙軍の他国の艦船とも無関係ではありません………この工廠で建造された艦の中にはアメリカの物も在ります。」



私はエッと驚いた。それは話の内容ではない。



「私は君にそのような問い掛けはしていない………まさか君は心が読めるのかっ?」



「チョッとだけですよ〜w」と五十鈴宙佐はクスクスッと笑い、次に艦〈あまてらす〉の概要を大まかに説明した。




「先ず〈あまてらす〉のサイズですが全長は173m、全幅18m、高さは21.3m………ご覧の通り葉巻型、言い方を変えるなら潜水艦です。動力機関はSCV-01(リベレーター)に搭載されたTX機関と同原理の物が搭載されています。主機はIHIバイオテクノクラフトと防衛省先端技術開発局で製作されました。」と五十鈴。


「この艦の特徴は何ですか?」と私は聞いてみた。


「なるほど………運用方法をお知りになりたいのですね。」と彼女は先回りして私に返すとガントリー底部の昇降エレベーターに案内した。



「艦内へご案内します。それを見れば運用の仕方も概ね解ると思います。」と五十鈴宙佐は言った。



   ………………………………



昇降エレベーターはシャフトを斜め上に上がっているのが分かった。エレベーターカプセルはそのまま艦内へ入った。リベレーターのように艦内移動にはリニアチューブのようなものは無い。


「ブリッジに着きます、提督。」


五十鈴がそう言うとエレベーターカプセルのドア(エアロック)が開放され、そこでロバートソンが見たものはとても狭いコックピットの様なところだった。多くて五人入れば良いような狭さだ。照明はとても暗かった。五十鈴宙佐がエリアに入ると同時に壁面の輝度が増し、室内を照らし出した。




私はこの室内を見たがパイロットシートとシート前方にあるTR-3Dのような感応スティック以外、リベレーターCICの様なモニターやその他複雑な表示システムは一切無い。


「この艦は時空機なのかっ!? 五十鈴宙佐。」と私は彼女に大きな声で問うた。


「そんなに驚かれるとは………SCV-01の提督ともあろう御方が。」

五十鈴宙佐は両腕を組んで、フウ〜ンといった感じで少し上から見下ろす様にロバートソンに言った。


「もちろん、その特性も備えていますが〈あまてらす〉は超次元航行が可能な艦です。確かSCV-01(リベレーター)も可能ですよね。長距離ジャンプを行う時だけですが………」と五十鈴宙佐。


「超次元空間の連続的な展開はSCV-01でも試験的運用について航法管制科の方でも意見が有った………」と私は答えた。


「SCV-01(リベレーター)の航法管制の責任者は飛鳥麗大尉でしたね。防衛省の推薦でFFSP(Space Strike Force Program:宇宙打撃軍計画)では初めて日本からの参加者だと作戦司令から聞いています。」五十鈴宙佐は懐かしそうに笑みを浮かべながら言った。


(山元司令は他の者に吹聴し回っているのだな……)私は思わず顔を崩したが次に下士官や乗組員について訪ねた。


「この艦の乗組員は、副官は居るのか?」


私の質問に対し彼女は次のように述べた。



「副官は居ません。乗組員も………その代わり各セクションには緊急的な物理修理作業の為にアンドロイドが18体、コンパートメントで待機しています。私は艦長ですが、どちらかと言うと戦闘機のパイロットと呼んだほうが適切です。   〈あまてらす〉は対高次元UFOに特化した超次元戦闘艦です。運用方法は高次元UFOが入って来れない超次元からの奇襲攻撃です。これらは実験艦〈ことしろ〉で実戦データーを取得出来ています。」


続けて五十鈴宙佐は運用コンセプトの根拠を語った。



「我が国の深宇宙防衛指針ガイドラインは地上のそれと変わらず専守防衛です。そういう事もあり、SCV-01(リベレーター)のような陸上、航空や核兵装は有りません。基本兵装はエネルギー兵器のみ、です。」 



私は淡々と語る五十鈴宙佐の言葉に、同じ統合機動宇宙軍内でも各国のスタンスの違いを改めて知らされた感じだった。




 


現在、スマホから執筆投稿しています。慣れると卓上のキーボードで打つより簡単で、とても楽だと分かりましたw

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