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機動空母リベレーター  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第一部 [火星、月地球 間軌道戦闘編 ]
3/32

「航空団と陸戦団」

提督のロバートソンは前回のライト少佐の事を受け、機密資料を航空団のライトニング少佐と陸戦団のライト少佐の代理として来たジール大尉へ手渡す。それに不満を示す艦長のランドー。


其々のエリアへ戻った二人は副官へ資料を渡すが……


SCV-01リベレーターの発進の時が迫る。



「航空団と陸戦団」



ファイルに目を通している中、インターフォンを通して声が聞こえた。



{航空団ジョン・F・ライトニング並びに陸戦団ジール・パットン大尉両名、出頭致しました}


「……入れ!」と私はモニター越しに言う。



ドアが開くと二人が立っていた。両名は部屋へ入ると敬礼した。



「陸戦団はライト少佐を呼んだはずだが?」


私がパットン大尉を方を見て尋ねると彼女は言いにくそうに次のように答えた。


「少佐は…具合が…体調不良だそうです…私は少佐の代理です。」

「副官のクルーガー少佐はどうした⁉」


「………ランダー(地上戦用人型兵器)の整備と補給で手が離せないと…(汗)」


私はその言葉を聞き、椅子に座ったまま机の下に隠した拳を思わず強く握りしめた。



「座りたまえ…」私は二人にそう言うと引き出しから電子煙草を取り出して一本吹かした。



二人が椅子に座ると私は次のように述べた。

「君たちは最前線で本艦の乗組員より早く敵に遭遇するだろう。そこで敵か味方かの判断材料を提示して置く……本来なら本艦中央の発令には状況を問わず作戦を遂行しなければならない。ここに個人の判断は無い……君たちは実戦の経験は有るか?」


「有りません!」と二人は声を揃えて言った。


「有る訳がない、無くて当然だ。君たちがその年齢になるまで地上では大規模な戦争は無かったからな…私は元々空軍に在籍していたが、それでも実戦は多くなかった。最後の実戦は台湾戦争だ、それでもドローンやミサイルのアウトレンジ戦術の高度化で敵の顔を見ることは無かった……AIの指示でミサイルの発射ボタンを押すかAI火器管制ネットワークで自動で発射された。  今回の戦闘もTX機関とのコネクトによって自動化された戦闘になる。ここには敵味方の人間の判断は無い。」



私は加熱器から吸い切った煙草を抜くと次の一本を差し込んだ。



「それでも敵味方という思いが引っ掛かるなら―――相手がどのような者か知るのも良いだろう。」


私は電子ファイルを二部、高速でコピーアウトし二人に渡した。



その時、インターフォンから声が入った。


{提督、ランドーです。}


「入れ!」


ドアが開き中へ入った艦長のランドーは二人の方を見た。

「何故ここに…」


「私が彼等を呼んだのだ……何か?」と私は言った。ランドーは敬礼すると準備が整ったことを報告した。


「14:00、定刻通りドックより発進可能です!」

「ウムッ…」私はそう言って頷くとライトニング少佐とジール大尉へ言い渡した。


「その資料の閲覧は航空陸戦団の佐官クラスにのみ許可する。確認したら破棄せよ!」


それを横で聞いたランドーはジール大尉から資料を取ると内容を確認した。そして私の方に向き直った。


「提督、これはレベル2の機密情報ではないですか!何故これを…⁉」とランドー。

「艦長、我々は仮想の敵と戦う訳ではない!これは最低限度の情報共有だ、私が許可する。」


私はそう言うとライトニング少佐とジール大尉を退室させた。


残ったランドーの方を向いた。彼は表情にこそ出さなかったが靄った感情が伝わって来る。


「不満かね?」と私は言った。


「……いいえ」と彼は先に二人が出たドアの方を見たまま答えた。




       ◆




CICエリアから出たライトニングとジールはリニアチューブで艦中央のセントラルデッキへ向かっていた。



ライトニングはチューブ移送中に資料に目を通していたがジールは手に持ったまま資料を開こうとしない。それに気が付いたライトニングは大尉に言った。


「今のうちに見ておけ。」

「この資料は佐官クラスにだけ許可されています!」彼女はムッとした感じで答えた。


「お前はライト(少佐)の代理だ。閲覧の権利も代用できる……ライトの奴、体調不良だなんて白々しい嘘つきやがって。大方、自分の部屋でクルーガーと賭けでもしてるんだろうよw」


「私の上官の侮辱は許しませんよ、ライトニング少佐!ライト少佐はそんな人じゃありません!」


ライトニングは見ていた資料をパタッと畳むとジールのに手を伸ばし頭を撫でた。


「チョッ…勝手に触らないで下さい!」

「ハハハッ…君は良い部下だな。最初の戦闘が終ったら打ち上げでもするか、生還祝いでもw……デッキに着いたようだな。」



チューブのドアが開くと二人はそこで別れ、自分たちのエリアへ戻った。




   ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




ライトニングは航空団エリアへ戻ると副官のジャック・ハミルトン大尉を訪ねた。


部屋へ入ったライトニングは躊躇することなく資料をハミルトンへ渡した。


「確認しておけ…同じ土俵の戦いじゃない。」とライトニングは厳しい表情を浮かばせながら言った。



暫くの間、ハミルトンは無言で資料の内容を見ていたが次第に表情を曇らせ額に汗が浮き出した。


「少佐、これは…敵が人じゃないのは分かりますが、この技術情報が……」

「通常の3次元兵器では刃が立たない……これに対抗できるのは時空戦闘機のTR-3Dだが、この艦には二機しか搭載されていない。操縦できるパイロットも限られている……航空団の中には居ない。」


「我々に勝算は有りますか…」


ハミルトンがそう言うとライトニングは資料を彼から取り、ページを捲った。そして或る所で手を止めた。


「ここだな…TX機関、唯一の対抗手段だ。この艦のメイン動力システムだが単に航法の為の推進機関じゃない…攻撃、防御、索敵……この艦に付属するあらゆる物の防御が可能だ。」


「あらゆる? 航空機やランダーもですか…」

「勿論、搭乗員もだ」

「???」ハミルトンは尚も疑わしい表情を浮かべた。


ライトニングは彼の着ている船内服の胸に付いている統合機動宇宙軍のパッチを指さして答えた。


「この統合機動宇宙軍のマークが何か?」とハミルトンは言った。


ペンタゴン(五角形)形状のマークを指しながらライトニングは問うた。


「何を意味しているか解るか?」

「詳しくは…アメリカの国防総省を表しているのでは? 機動宇宙軍の指揮権は宇宙打撃軍計画(SSFP)の時からアメリカに有りますから…その象徴的な意味では?」とハミルトン。


ライトニングは冷蔵庫からチューブに入ったコーヒーを二本取った。そして一本をハミルトンへ渡した。


「悪いな、貰うぞ…パッケージを見ろ」とライトニング。


ハミルトンは言われた通り、パッケージを確認すると統合機動宇宙軍のマークが入っていた。


「少佐…自分には分かりません」とハミルトンは言う。


「本来なら、こんな物にまでマークを入れる必要はない。今度、補給品や機体のパーツを注意して見て置け、全部このマークが入っている。」



ここでライトニングは腕時計を見て時間を確認した。



「そろそろ艦が出るな…回りくどい言い方をして済まない、単刀直入に言う。このマークはTX機関が認証した御守りだ。TX機関とエネルギーリンクされている。」


ハミルトンはそれを聞いてポカンとした顔になった。


「御守り、そんな非科学的な物が……役に立つんですかね?」

「実際の戦闘で分かるだろう……その資料によく目を通しておけ。終わったら裁断して破棄しろ、提督の命令だ。」




そう言うとライトニングは部屋を出た。




   ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




一方、ジールはライト少佐の部屋へ向かった。



部屋の前で入室の許可を求めた。


「ジール大尉、只今、代理を終え戻りました!」


暫くしてインターフォンから声があったがライト少佐の声ではない。ジールは部屋を間違えたと思いドアのネームプレートを確認したが、やはりライト少佐の部屋だった。


「声が……クルーガー少佐ですか? 入りますよ」



そう言ってジールはドアを開けた。



「アッ‼」思わず声が出た。



何と、ライトはクルーガー少佐とポーカーで賭けに興じていた。そして、ライトニングの言った事が的を射たものだったのを知った。



「ご苦労…」とライトは一言だけ…



ライトは背中を向けたまま、ソコに、っという感じでテーブルを指した。



「ライト少佐、提督からこの資料を……確認したら破棄せよ、との事です。ここへ置いておきます」



そう言うとジールはテーブルに資料を置き、退出した。



(同じ階級じゃないと分からない事もあるんだ……)





彼女がそう思っていた時、CICから発進準備の発令がインカムを通して伝わった。










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