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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第一部 [火星、月地球間軌道戦闘編 ]
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「この世界を創りし者」

月面の異星人が “ Thing X ” を狙っていると確信したロバートソンは艦長のランドーに艦内のセキュリティーを強化するよう命じる。TX機関動力室へ来た動力管制科のバートルは今回の戦闘で敵の波動干渉を受けた後にTX機関のシステムに異常が出ていないかシュミットに聞く。その後、バートルはエディに近づき自分の思いを彼女に伝える…そんな中、警備隊のアンドロイドが入って来た為、エディは再びカプセルに戻り、そこで前に行った月への意識感応を行う。


CICでは再び月面の異星人のUFOを探知し監視強化と全艦に戦闘態勢を発令する。暫くして、UFOは再び月の裏側へ消えた為、艦内はCP-3(Combat Position 3:第3種戦闘態勢)へ移行する。その時、エディは一時、操作カプセルから出ると月からの来訪者を待った。それは、この世界のベースを創った男性だった…

「この世界を創りし者」



(しかし……なぜ彼等は “Thing X” を狙うのだ。 彼等は既にそれでUFOさえ造っているのに……それとも何か別の意味を持つのか…)



私は部屋を出てCICへ入ると統括エリアのキャプテンシートに掛けて居るランドーに思うところを話した。

「彼等は “Thing X” を盗りに来るはずだ。理由は分からんが…、これを許せば我々は窮地に立たされる。艦内の警備を厳重にしてくれ! 特に動力室だ。」


私は彼に言うとランドーは火器管制に対し、艦セキュリティーレベルを上げるよう命令した。

「艦内セキュリティーBクラス、TX機関動力系統に注意せよっ!」


それを受け、火器管制のマーベリット少尉はSAIへ発令する。

「SSG(Shipboard Security Guard)へ、艦内SC-B発令。強化セクション、TX機関動力系統!」




   ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




TX機関動力室内でエディとバートルは向き合っていた。



「もっと早くお姉さんに出逢っていれば…」とバートルはエディの上腕を抱えるような形で言った。両手を胸に持って来てバートルを上目使いで見るエディ。


「中尉さん。私…こういうの、初めてなの。」とエディ。

「良かった、自分はとても幸運だな。」そう言うとバートルはエディと面を合わせじっと目を見つめた。


バートルの意識を観ているエディは恥ずかしくなり彼の目を見れなくなった。


(中尉さんは私を欲している…どう対応すればいいんだろう?)




二人が向き合っている中、動力室のドア(エアロック)が開かれ、数体の警備用アンドロイドが進入して辺りを見回した。


「一体なんだ、入る前に声くらい掛けろっ!」とバートルは気分を害した感じでアンドロイドたちに言った。

数体の中のチーフアンドロイドは現在、TX機関動力系統の警備レベルが上がった事を伝えた。



それを聞いたエディはバートルの手を優しく解いた。


「緊急に備えて私は操作カプセルへ戻ります…中尉さん、ありがとう。」



エディはそう言うと服を脱ぎカプセルに戻った。彼女は全裸だったがバートルは今まで既に何回も見ているので特に慌てなかった。


足元からコネクティングバイオリキッドが嵩を増してエディを包み込み、やがてカプセル内を満たした。



バートルは名残惜しそうに手をカプセルに着け、寂しそうな顔を見せた後、動力室を出て行った。




      ◆




警備用アンドロイドが部屋を出た後、動力室は閑散とした。シュミット博士はまだ戻って来ない…エディは09とヒヒイロカネ(Thing X)にコネクトするとSAIによる警備強化発令の詳細情報を観た。



(月の人達がヒヒイロカネを狙っている……何故?)


ふと疑問に思った彼女は再び意識感応で月へ飛ぼうと思った。彼女は “Thing X”(ヒヒイロカネ)のエネルギーを自分の中へ移し、その能力を強化した。



前に試した時より遥かに鮮明で確かな映像が瞼の内側へ映された。それは彼女の意志によって、その力が前向きに強化された結果、とも感じられた。




エディは再び月の裏側へ意識をダイブさせた―――――‥‥





月のUFOの中には、この世界のベースを作った男性とその奥さんの他、二名の女性が居た。彼等が何を話しているのか、私は意識を近づけた…しかし、前と同じように声は聞こえない、映像だけが私には解る。私には簡易なテレポーテーションの能力はあるが、それはそう重くない対象物を近距離に移動する程度のもので自分自身を移動させることはまだ出来ていない。この時、私は自分自身をこの場所へ飛ばそうと頑張ってみたが出来なかった。



彼等は空中に何か見た事のあるような物の透視図を展開させ何かを話している……私はその通し図を見た時、それがSCV-01(リベレーター)だと気が付いた!  彼等がリベレーターの艦内の詳細を手に入れていた事に私は驚いたが、それ以上に提督や艦長のランドーが彼等の狙いを正確に見抜いていた事に驚いた。



彼等はリベレーター艦内のTX機関動力室を指し何かを話していた。これで彼等、月の人達が間違いなくヒヒイロカネ(“Thing X”)を欲している事を私は確信した。



彼等は話し合いが終ったところで例の男性をリベレーター乗組員のデッキ用第1種宇宙服に擬態させた。


男性の着ている服は他の者と共通だったが、その被服はまるで生きた金属のように流動し、完璧な擬態を完了させた。私はその様子に驚いた…



(これが月の科学力なんだっ!)




これを見た私は、この事を提督たちに報告するべきか迷った…


彼等の意識には私たち地上の人間を恐れているが “争い” の意図は見えない……(むし)ろ血が流れる事を拒んでいる様にさえ思えたからだ。そこで私は例の男性の意識の更に奥深いところを観た。





“ ……皆で一緒に帰るんだっ!ミカとお姉さんが、また家で馬鹿なことを言い合って欲しいんだ… ”





(彼の気持は自分の奥さん?と他の複数人を地球へ連れ戻す事で溢れている…その為にヒヒイロカネを…だけど、彼等のUFOなら地球へ行くことなんて造作もないはず……彼は何処から連れ戻す、と言っているのだろう?    アッ‼ )




私は今この状況を俯瞰している意識に気が付いた。これは前に私が意識を飛ばした時に感じたものだった。私は慌てて、その意識と波長が重ならないよう自分の意識の波長をずらした。



(これは集合意識体……プレアデス⁉)




そう思った時、私は09(人工生体脳:AQB-09)の発する警報に呼び戻された。




       ◆




リベレーターCICは再び騒然となった。火器管制の物理探知系及びTXソナーが月の裏側から出て来たUFOを捉えた。



「14時の方向、距離20万㎞の位置にUFO! TXソナー透過しないっ、月のUFOですっ!」と火器管制のマーベリット・フスター少尉は上に居る艦長のランドーに向かって叫んだ。隣の席に着いていたフスター大尉は艦内に直ちに全艦に戦闘態勢レベル1を発令した。


「全艦兵装コンバットポジション!  TX兵装(TXジャマ―、ブレイクショット)はレンジ外です、艦長、どうしますか?」とフスター大尉は言った。



「警戒態勢を維持っ、ターゲットの指向波に注意せよっ!」




   ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




暫くして距離を置いて対峙していたUFOは再び月の裏側へ消えた。



CICは監視体制は維持しつつ、一旦、艦内の戦闘態勢を緩めた。


{全艦、CP-3(Combat Position 3:第3種戦闘態勢)…}




TX機関動力室でエディは一端、操作カプセルから出た。


「少しの間だが君は身体を休めておけ…」シュミットはエディにそう言うと09とヒヒイロカネの入った台座を見て回った。


(自分で言うのもアレだが……人間自体を武器に使うなど…愚かな事だ)とシュミットは思った。




一通り目視で点検し、モニターで機関の状態を確認し終えたシュミットは自室で休憩を取る、とエディに伝え動力室を出て行った。




エディは身体を乾燥させた後、服を着て先ほどシュミットが座っていた椅子に腰を掛けた。この時、彼女は此処へ例の男性が来る事を予感していた。


(彼は此処へやって来る…私は彼に…会わなければならない。そして話をしなければ…)



私は彼の気配(意識)が近づくのを待った。




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