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機動空母リベレーター  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第一部 [火星、月地球 間軌道戦闘編 ]
2/32

「CICトラブル」

SCV-01リベレーターは出撃の最終チェックが行われていた。宇宙戦闘という前例のない事に備え、訓練を重ねた乗組員だったが、それでも尚、艦の運用について完全な習熟とは成りえなかった。CICに於いても十分な認識が共有されていない事に苦悩する艦長のランドー……


提督ロバートソンは一人自室で今日に至るまでの異星人の人類の対応と支配の歴史、その対抗策とも言えるTX機関開発の経緯を改めて調べていた。




「CICトラブル」



艦内では各科で最終チェックが行われていた。


艦体運用要員420名、戦術兵器運用の約400名、そして艦の統括AIが指揮する作業用アンドロイド400体は当直要員を含め其々の持ち場に着いた。


航法管制の飛鳥大尉は当直から外れているアンドロイドが一体、おかしな場所に居る事に気が付いた。


「何でアンドロイドが航空団要員居住区の一室に居るの? SAI、アンドロイド37号は何をしている⁉直ぐに保管エリアへ戻らせて!」


飛鳥大尉は艦のSAI(サイ)(艦の統括AI)に呼び掛けた。


{37号は航空団029ーレオン・マーク少尉と楽しんでいます}SAIは答えた。


「楽しむ……何、それ?」



飛鳥大尉の声が聞こえたのか動力管制エリアのバートル中尉は「アァッ……あのバカ野郎がっ!」と叫んで頭を抱えた。


飛鳥はバートルの方を振り向くとキッとした感じで睨んだ。


「アンドロイドを自室に連れ込んでオモチャにしてるんだな、えぇっ、おい! 答えろ中尉(バートル)!」


バートルは自分のエリアを離れて飛鳥の元へ走ると腰をくの字に折って謝った。

「少尉には厳しく言って措きます!」


飛鳥は彼の胸ぐらを掴むと引き寄せ、次のように脅した。


「動力管制なんかSAIに任せておけばお前たちなんて要らないんだよ!冗長性を持たせるために航空団のお前らを特別に置いてるだけだ。CICから追い出すぞ!」


「………(汗)」飛鳥の余りの激しい剣幕でバートルは言葉が出なかった。


「SAI、レオン・マーク少尉の部屋の様子をモニターへ映せ!」と飛鳥はSAIに指示した。


{了解}


SAIはマーク少尉の部屋の様子を映し出した。そこにはアンドロイド37号とマークがベッドで絡み合っている姿があった。


「なっ、何という…破廉恥なっ…」飛鳥はモニターの様子に目が固まりながら拳をプルプルと震わせた。



暫くしてモニターの映像が切れると飛鳥大尉にインカムで艦長の声が入った。


{飛鳥大尉…}


彼女は直ぐに上にある艦長の居る統括エリアを仰ぐとランドーが見下ろしていた。


{君は間違っている、宇宙空間の長期滞在を考慮してアンドロイドは開発されている。アンドロイドの約三分の二が女性型なのはマーク少尉のような案件を解消するためでもある…以後、勝手に個人のプライベートを暴くような事はするな!}


飛鳥はランドーの言葉に唖然とした。同時にアンドロイドの運用に関して知識不足を恥じた、が――

飛鳥はランドーに反発した。



「では、女の私の場合はどうしますか……艦長がアンドロイドの代わりをやってくれますか⁉」

彼女は手を胸に当てランドーを仰ぎ見た。




インカムでCICの全員に伝わっていた。全員が「えっ⁉」という感じで飛鳥の方を見た。




{……程度の低い質問には答えられんな。終わりだ、作業へ戻れ飛鳥大尉。}ランドーはそう言うと奥へ引っ込んだ。



まるで取り残された飛鳥を見て他の者は顔を背けて肩を震わした。



火器管制エリアに居るマーベリック・フスター大尉も必死で笑いを堪えていた。その横に居た交代要員のマーベリット・フスター少尉は軽く彼の頭を叩いた。


「兄さん……大尉、仕事!」




  ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




艦長のランドーは後部に在る提督の部屋に入ると先の事を報告した。



「………このような事が有りました。この先が思いやられます。」とランドー。


私は腕を組んで彼に言った。


「この艦は宇宙にこそいるが地球の潜水艦と同じだ…友人が海軍の戦略原潜に乗っていた。彼が言うには

水上艦と比べて覚える事が桁違いに多い……全ては “Know the ship” ……自分の艦を知る事から始まる。本艦は宇宙艦だ。乗組員は訓練を受けている、とは言え前例が無い。その点を君には鑑みて欲しい。」



「承知しました…イザとなれば私は誰とでも代われます。」



そう言うと彼は部屋を出て行った。私は机の引き出しから電子煙草を取り出して吹かした。



「困ったものだな、艦の事を誰よりも知っているのは分かるが…」







CICへ戻ったランドーは火器管制員のフスター大尉に状況を確認させた。


「重粒子砲とTX機関の状況を伝え!」

「重粒子砲、核融合炉とのエネルギーコンタクトは完了、何時でも発砲可能です…TX機関、攻撃及び防御フィールド展開可能です。」



ランドーは頷くと動力管制のバートル中尉へ指示を出した。



「TX機関要員を操作カプセルで待機するように伝えてくれ。敵のUFOに対して最初に使う事になるだろう。」


「了解しました!」そう言うとバートルはメイン推力室(TX機関動力室)を呼び出した。



モニターに眼鏡をかけ口ひげを蓄えた作業着の高齢の男性が映し出される。


「シュミット博士、エディ・スイングをカプセルで待機させて下さい。本人と倍力装置〈操作能力の強化のための人工生体脳(AQB-09)〉の状況をお願いします」


バートルがそう言うとシュミットの前に割り込むようにして一人の女性?がモニターに映し出された。その者は髪の色がエメラルドグリーンの何処かミステリアスな雰囲気を放つ‥‥年齢、性別が判別しにくく、どちらかと言うと中性がかった感じだったが温厚な雰囲気が漂っていた。


「エディ、状況を」とバートルは彼女?へ呼びかけた。


{私も09(人工生体脳)も良好です、いつでも対応できます}と彼女は答えた。その後、モニターのサブ画面に艦長のランドーが映った。


{エディ、TX機関はこの艦の要だ。上手くやってくれ!}それだけ伝えるとサブ画面は直ぐに消えた。





        ◆





私は自室で電子ファイルを再度、確かめていた。政府が蓄積してきた異星人に関する極秘ファイルだ。過去から近年に至るまで異星人たちは人の姿を纏い政府の中枢にまで入り込み世界を操っていた…それが明るみになったのは1980年代後半…異星人はアメリカやロシアと取引し政府も条件を出して彼等の技術供与を受けていたのは確かだ。


しかし、異星人はそれに飽き足らず政府の中に紛れて国を乗っ取ろうと画策していた。恐らく人類の技術力では供与した物(UFO:時空間操作機)のリバースエンジニアリングは不可能だと思って気を許していたのだろう。確かに彼等のオーバーテクノロジーは完全に再現された訳ではない……我々は焦っていた。


だが、そんなとき考古学の分野で日本から驚くべき遺物が発掘されたのだ…超太古の完全に保存されたミイラと一振りの剣。日本の考古学術機構で “ヒヒイロカネ” と呼ばれたそれは鉄でありながら全く酸化しておらず非常に強い輝きを放っていた。


アメリカのCIAはそれを自国へ運び、詳しい調査が極秘裏に行われた。ミイラはクローン再生され、GEバイオエレクトリック社でヒヒイロカネと併せて研究が進められた。それは 通称 “Thing X” ト呼ばれた。後のTX機関と呼ばれる物だ。それは今まで蓄積してきた異星人の科学とは根本から異なり、その力は遥かに凌駕するものだった。

ミイラはクローン再生により二体製作され、一体は軍の戦闘指揮用、残る一体は機関操作要員に充てられた……


 



ファイルに目を通している中、インターフォンを通して声が聞こえた。








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