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機動空母リベレーター  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第一部 [火星、月地球 間軌道戦闘編 ]
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「恐怖のシンクロニシティ」

リベレーターのブレイクショット(指向性破壊波動放射)使用を境に多くの乗組員に原因不明の悪夢が襲う。


ランドーの報告を聞いたロバートソンは先にTX機関操作員エディ・スイングの発したUFOに登場している者が人間と言う事、そして今回、多くの乗組員が見る悪夢に何らかのシンクロニシティの現実化を危惧する…


ランドーは敵の月面基地の詳細を得るべく地上ドローンによる偵察をロバートソンに具申し、ロバートソンはそれを受け入れる。

航空隊のブラックバードはドローンを搭載し再びリベレーターを飛び立つ。作戦が実行される中、CIC火器管制のフスターはTX機関の発生するエネルギーについて再考する。

「恐怖のシンクロニシティ」



リベレーターは月地球間の静止軌道で艦体の修理を継続していた。その間、乗組員たちに異常な事が起きていた。乗艦している者の多くが不眠や極度の眠気に襲われ、幻影や悪夢に悩まされた為、メディックに係る者が急増した。




艦長のランドーはCICでメディカルからのデータ報告を見ていた。報告には “注意” を示すサインが冒頭に在り、報告文は赤文字で表示されていた。報告者はメディック(艦内衛生科)の責任者S・マーティン中佐(軍医)だった。


ランドーはメディックとの艦内回線を開き、中佐を呼びだした。


「ご苦労、中佐。報告は見た、これは異常な事なのか?今回の事もある…心的外傷ではないのか?」とランドーは聞いた。


{この症状は先のUFOの接触の後に急増しています。問題なのは殆どの者が同じ幻覚に悩まされている、と言う事です。この部分が無ければ、ただのPTSD(心的外傷ストレス)で片付けられるのですが……}とマーティンは言った。


ランドーはその症状の各科に於ける偏りに注視した。殆どの者が陸戦隊で占められていた。


「火星の戦闘の事もある…それが尾を引いているのでは?」とランドーは言った。それに対しマーティンは次のように答えた。

{それも有るかも知れませんが……時期を境に急増、と言うのは腑に落ちない、ウイルスの類も確認されていません。}


「……了解した。ご苦労だった。」そう言うとランドーは回線を閉じた。





ランドーはモニターに映し出された報告内容を読み進めた。


(症例は幻覚悪夢……具体的な内容は…月面における戦闘、敵基地内に擱いて〈人間〉を大量に殺戮……)


「人間、か……」呟くように言うとランドーは俯いて軍帽を脱いだ。額から汗が顔を伝った……




   ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




私は自室に来たランドーの報告を聞いた。



「艦長、確かエディもそう言っていたのではないか…人間だと。」と私。


彼女(エディ)はそういう感じがした、と言っただけです。確証はありません。」とランドーは言った。


「ウゥーンッ……しかし、困った。これだけ数が居るのだからな。」私はどうしたら良いものか悩んだ。

(これは何かを示唆しているのか……しかし、それをこの場で言うのも難しい)



「そこで――、」そう言うとランドーは私の前に進み出た。

「?」


「更に密度の高い偵察を具申します。敵基地の所在は偵察機によって明らかです、陸上用小型ドローンを使って敵基地に接近、より詳細な情報を収集します。それで敵の正体に近づけると考えます。」



「………よろしい、それではやってくれ!」私は彼の具申にGOサインを出した。敵基地の所在が分かっている以上、この機会を使わない手はない。



  

 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




ランドーは直ちに火器管制のフスター大尉と航空団のライトニング少佐を呼び装備の選定と作戦の流れを練った。


「使用装備は陸上用小型ドローンSGD-A1、使用個体数は10機……ライトニング少佐、搬送機体はブラックバード。途中で通信リレー器を月面に投下、極低高度で接近してドローンの航続距離内で空中投下、ドローンの格納ポッドはスラスター降着ポッドを使用してくれ。」とランドーは少佐に言った。


フスター大尉はランドーに映像に関して質問した。


「この前の映像はTXソナーでもかなり解像度の悪いものです……恐らく向うはTXエネルギーと同質のものでステルス化しています。こちらのTXステルスと同じだとすると発見できないかも―― TXステルスは物理ステルスのように見えないだけじゃなくて存在自体を消していますからね…」


「その辺は大丈夫だ、小型ドローンもTX機関のエネルギーフィールドとリンクしている。接近に成功すれば良い絵が撮れるかもしれん。」とランドーは言った。




       ◆




リベレーターの艦体下部格納庫でブラックバードの発進準備が進められた。主翼のハードポイント(パイロン)にはドローン格納ポッドと通信リレーポッドが懸架された。


パイロットは前回に引き続きオブライエン中尉とボマー少尉が担当した。



デッキステーションでライトニングは状況を見守った。


「落ち着いて行け、中尉。今回も重要任務だ!」とライトニングはオブライエンに声を掛けた。


{いい役回りをありがとうございます、少佐。帰ったら打ち上げをお願いしますよw}そう言って笑いながらオブライエンはライト二ングに返した。


「うっ、打ち上げ…その言葉誰から聞いた⁉」


{みんな知ってますよ、少佐がラウンジで陸戦隊に金を巻きあげられたってw}とボマーは笑った。


「ウゥッ…二人とも黙れ! 射出シーケンスに入るぞっ ‼ 」




格納庫内でガントリーに接続されたブラックバードは開放された発着艦ベイの真上へ移動した。そしてガントリーによって下へ押し出された。


ブラックバードは勢いよくリベレーターから離脱して行った…




ライトニングは心の中で呟いた。


(戻ってこいよ…シップカードが使えなくなるまで打ち上げしてやるぜっ!)




   ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




CIC火器管制のフスター大尉はブラックバードの離艦を確認した。


「ブラックバード、出ました!」とフスターは統括エリアに向かって叫ぶ。

「よしっ、状況の監視を続けよ!」とランドーは指示した。


統括エリアでランドーと私は状況を見守っていた。彼は何時になく良い顔で状況を見ていた…彼がこの状況を楽しんでいるかは分からないが、私の気持は全く浮かない。むしろ、或る種の不安が自分の中で増大しているのを感じた。


(それは作戦の成否ではない……TX操作員のエディの言った“人間” と乗組員の見る悪夢がシンクロニシティを起こすかもしれない、という事だ。)




全球モニターに映るブラックバードの機影を追いながらフスターはTXエネルギーについて考えていた…



(このエネルギーはまるで魔法のようだ…異星人の高次技術のように人間が扱えない訳でもなく、いとも簡単にそれを超えている。極めつけは従来の物理機器を置き換えることなく能力の上乗せが出来る事だ…このエネルギーフィールドにリンクされていれば紙飛行機が宇宙船にもなる…)








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