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機動空母リベレーター  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第一部 [火星、月地球 間軌道戦闘編 ]
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「新たな敵とTX機関」

「しきしま」からリベレーターへ戻ったロバートソンと艦長のランドーは機動宇宙軍本部から艦のデータリンクへ送信された情報をCIC各科員と共に精査していた。初めて知る驚くべき情報…現在の世界が別の時間線と複合している可能性と、そこで確認されたUFOにはリベレーターに搭載されているTX機関の動力発生源 “ Thing X ” の同位体を示していた。

TX機関の動力室ではGE(ジェネラルバイオエレクトリック社)のシュミットが操作員を省いた、人工生体脳AQB-09での機関運用を提督へ申し出るが却下される…


「新たな敵とTX機関」



リベレーターへ戻った私とランドーはCIC火器管制エリアのマーベリット・フスター少尉の元を訪ねた。横には担当のアンドロイドが座り、兄のマーベリック大尉の姿はなかった。CICクルーの多くは副官等、交代要員アンドロイドに作業を引き継いでいた。



「ご苦労、マーベル(マーベリットの略称)少尉、データリンクに新しい情報は追加されたか?」と私は彼女に聞いた。


「入りました!暗号解析、SAI及びTX機関とのデータ共有も終わっています。」


彼女がそう言うと艦長のランドーは全球モニターに情報を映し出すよう指示した。



モニターに映し出された情報は十二年前に日本で起きたUFO墜落未遂と同時に起きた空自の宇宙域戦術部隊に所属する機体の行方不明事件と関連画像、そして四年前に同じく日本に飛来したUFOとの照合結果と監視衛星から撮られた画像、そのUFOが何処から飛来したのか、が説明されていた。



これを見たランドーは八年前の事件に言及した。



軍総本部(ペンタゴン)の時空戦部隊、タイムゲートチームですか⁉……十二年前に現実には起きていなかった事件…提督、これは一体…?」とランドーは訝しがった。


「現実には起きていない事象だが、そこで見られたUFOは四年前に確認された物と同じものだ……これは飽くまでも私個人の推論だ。現在、我々が居る世界は別の時間線と複合しているのかも知れんな…」私はこの情報の核心を言う前にCIC各科に向けて発した。



此処(CIC)に居る者はモニターを見ろっ!これから我々が戦わなければならないのは今までと違う!」



私はマーベル少尉の肩に手を置いて言った。


「これから火器管制の仕事が重要になって来る…頼むぞ」私がそう言うと彼女は頷いた。



ランドーはUFOの形状や構成する金属の詳細を見た。形状は突起の無い完全な楕円…そして、他の異星人のUFOとは違う金属……その先を読み進めた彼は「ウッ…」と一瞬言葉を詰まらせた。


特殊なフィルターにより解析されたUFOの金属はTX機関動力発生源の “Thing X” (ヒヒイロ金)の同位体と示されていた。



「同じエネルギーだなんて……高次ソナーや高次ジャマ―が有効に機能するか分からない…」マーベリット少尉は不安気に呟いた。



飛来場所はそう多くない資料を元にAIに解析させた結果、凡そ90%の確率で月の裏側とされた。活動圏は主に地球軌道、地球、月間の宇宙域…何度か地上にアクセスを取っている形跡がある。



私は飛来場所や活動圏がそう遠くない事に若干の有利性を感じたが、敵が同じ物を持っている、更には先進的な運用をしている可能性を考えると安易に有利に思う事も出来なかった。



「これは相当厳しい戦いになるな…」と私は呟いた。





暫くの間、データ―を確認した私たちはCIC後部に在る自室へ戻った。



自室の前に来た時、ランドーは私に敬礼し声を掛ける。


「提督、リベレーターの発進準備を進めます!」彼はそう言うと更に奥にあるCIC要員の士官待機室(自室)へ向かって行った。


(…飛鳥大尉の件を忘れていた! 彼に任せるか…)私は彼を見ながら部屋へ入った。




   ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




飛鳥大尉の部屋の前に来たランドーは彼女の在室を確認する。


「私だ…飛鳥大尉、居るか⁉」


{はい……少し待ってください}とインターフォンから彼女の声が聞こえた。




暫くしてドアが開かれると第二種船内服の黒色のボディースーツを着た彼女の姿があった。


「休んでいたのか?すまない。言伝を頼まれたものでな…」とランドー。



少し眠たそうな顔をした彼女は辺りを見回すとランドーを自室へ招いた。ランドーは警護のアンドロイドを外で待機させ入室した。



中へ入ると飛鳥は椅子を用意しようとしたがランドーはそれを断った。


「気を使わなくていい」とランドー。


「何か…私に有りましたか?…艦長が士官の部屋を訪ねるなんて珍しいですね。」



ランドーは短く息を吐くと言伝を飛鳥に言った。


「作戦司令部の山元一等宙将に君によろしく、とお願いされた。」ランドーがそう言うと、飛鳥はハッとした表情になった。


「山元司令が!」

「空自(宇宙域作戦部隊)の上官だったのか?」とランドーは尋ねた。


「はい……」と彼女は他に何か言いたげな表情を浮かべながら返した。


「用事は済んだ、私は…」ランドーが言い終わる前に彼女はランドーの後ろへ回り込み入口を塞ぐと次のように言った。


「ありがとうございます、艦長…その……」と飛鳥。

「まだ、何か有るのか? 早く言い給え!」ランドーは少しイラつくものを感じた…


ランドーの硬い言葉を売り言葉のように感じた飛鳥は思わず次のようにハッキリ言ってしまった。


「もう一度、こうして艦長と個人的にお話が出来れば私は大変嬉しく思います!今回はありがとうございました、ランドー艦長!」そう言って飛鳥はランドーに向かって敬礼した。


ランドーも敬礼で彼女に返したが何も言わずにドアまで進むと一度立ち止まった。そして背中を向けたまま彼女に言った。



「ありがとう……飛鳥大尉 」


そう言うとランドーは部屋を後にした。




   ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




TX機関の動力室でGE社のシュミットはエディの様子と人工生体脳(AQB-09)の機能をチェックしていた。

(09単体ではTXの力は安定的に出力できるがパワーレベルが低過ぎる……これでは実用に供さない。困ったものだ…)




カプセルの外に出てベッドで横になっていたエディは起き上がるとカプセルへ走ろうとして床に転んだ。シュミットは慌てて彼女?を抱き起す。



「今は入らなくていいっ! 身体を休めて居なさい。」シュミットは台に置いてあったシリンジを取ってエディに鎮静剤を打った。


「私が (操作カプセル)入らなければ……TX機関は動きません、博士。」とエディは疲れた感じで言った。



「今、09だけでTX機関を動かす方法を考えている……火星で行ったようなやり方では君の人間が持たない。」シュミットは彼女にそう言うとTX機関のパワー経路を調べ直した。


「09のエディとの最大共鳴時のデータ―を利用できないものか… “Thing X” に彼女が操作していると誤認させることが出来れば…」


シュミットは提督へ通信チャンネルを開いた。




    ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




CIC後部、提督の自室…



「フム…ウム……シュミット博士、それはもう少し待ってくれ。この方法は公試時でも行った記録が無い。出来るだけ操作員(エディ)に負荷が掛からない方法を採るつもりだ。今は艦の安全を優先したい……よろしく頼む」


そう言うと私はチャンネルを閉じた。私は机の引き出しを開けると電子煙草を取り出し加熱器にカートリッジを差し込もうとしたその時、警報が発令された。



私は引き出しに煙草を放り込むと部屋を飛び出した。








〈SCV-01リベレーター乗組員の参照資料〉


● 飛鳥 麗 大尉♀(パイロット、航法管制)


日本航空宇宙自衛隊(宇宙領域専門部隊)よりアメリカが主導するSSFP(Space Strike Force Program):宇宙打撃軍計画に参加した宇宙航法士のベテラン。


日本宇宙開発機構に所属の後、同機構に協力していた日本航空宇宙自衛隊(宇宙領域専門部隊)へ移籍。若さと技量を買われSSFPの日本参加者として選出される。


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