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USSF機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『USSF機動空母リベレーター戦記』第四部 [ 最後の夢編 ]
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『ランデブー』

地球周回軌道へ入った日本防衛省の軌道ドック〈しきしま〉とランデブーを行う為、エドワーズから再び宇宙へ向け発進したSCV-01〈リベレーター〉。機関である〈あまてらす〉が無いにも関わらず、TXコンデンサーにエネルギーが補充され続ける、という問題を抱えながらも、リベレーターは〈しきしま〉との接舷に成功する。〈しきしま〉のCICで艦長の林と語らうランドー。リベレーターCICへ戻る中、移送される戦傷者の中に、かつて操縦航法管制に就いていたL·イングリット大尉を見つける。


CICに戻ったランドーを待っていたのは、TXコンデンサーのサーモグラフの中に多数の人影が蠢いている、という異常事態だった。


『ランデブー』





戦傷者の回送を本部のボイス中将から下令されてから一週間後、SCV-01〈リベレーター〉は再び宇宙へ向けて飛翔した。



CIC内では、通信と動力系統のチェックが行われた。


「通信はパッシブッ! コールだけ確認せよっ、絶対に交信は行うなっ、接近時は発光信号で交信せよっ!……動力管制っ、TXコンデンスに変化はないかっ!?」、ランドーは下の動力管制エリアを見て発した。


「現在、コンデンサー内、TXエネルギーは約60%、…尚も上昇中っ!」、とバートル大尉は返した。



(殆ど空になっていたTXコンデンサーが、何故……機関の〈あまてらす〉は分離して居ないのに…)、とランドーは思った。


一週間前、戦傷者回送が下令された直後から、TXエネルギーはコンデンサーに蓄積され始めていた。その原因は全く分からなかった。例えるなら発電機で発電しないのに、蓄電池に電気が貯まるのと同じだった。


ランドーはバートル大尉他、技術部門に〈あまてらす〉を接続していたガントリーとTXコンデンサーを調査させたが、遂に原因は特定出来なかった。只、推論として成り立つ理由としては、”思考の物質化“が何らかの影響を与えているのではないか…、という事だった。前例と科学的根拠が無い為、それなら、原因が分からないまでも、使えるなら、そのまま使おうという事になり、今に至っている…



「承知した、エネルギーの変化を監視してくれっ!…マーク中尉、熱核と反動推進に異常は無いかっ!?」、それを聞いたマークは統括エリアを見上げ、異常なしっ!、と返した。



「高度800km、〈しきしま〉を確認したっ!距離、400km、高度差、+0.4、速度+248ノットッ!」、とマーベリット大尉が目標のデーターを読み上げた。


操縦航法管制のアスカはSAIが指示するデーターと照合し、機関の推力を補正した。



「反動推進推力、+0.5……、高度同期。距離380km、………主機、推力上げますっ!」、とアスカ。


マーベリット大尉は軌道ドック〈しきしま〉の拡大画像を全球スクリーンへオンボードした。それを見た管制科員は一様にザワついた。


〈しきしま〉の通信アレイから幾つも伸びる棘のような結晶…


「何なんだっ、あれはっ!?……、まるで生物みたいだっ!」、と火器管制のフスターは呟いた。隣に居るマーベリットもそれを見て顔を歪めた。


「気持ち悪い…」、とマーベリット。動力管制に着いていたバートルとマークらも同様に気分が悪くなった。それはトライポフォビア(集合体恐怖症)にも似ていた…



指揮統括エリアから見ていたランドーも、あまりの異様さに言葉を失った。

この状況と〈しきしま〉の艦長、林との交信内容を鑑みると、宇宙空間では、恐ろしいスピードで変化が起きている、と彼は思った。



「〈しきしま〉接近、……拡大モニターを閉じます。入渠準備距離まで240sec、減速開始っ!」、とアスカが発した。




SCV-01〈リベレーター〉が〈しきしま〉へ最接近(入渠準備距離)すると航法管制のアスカはリベレーターの主翼を畳み、メンテナンスポジションに移行させた。


「〈しきしま〉の誘導ライダーを確認……、艦長、そのまま入渠しますかっ!?」、アスカがそう言うと、ランドーは発光信号を送るようマーベリット大尉に命じた。〈しきしま〉も通信の異常を知っているようで、物理系及びTXCIのコールは無かった。



「マーベリット大尉っ、発光信号送れっ!”リベレーターはこれより接舷するっ、信号送れっ!“…」、それを聞いたマーベリットは直ちに発光モールスを打った。


暫くして〈しきしま〉から返信の発光モールスが帰ってきた。


「〈しきしま〉より応答っ、”SCV-01、入渠せよっ!“」、とマーベリット大尉は返信を読み上げた。


「よしっ!…アスカ、リベレーターを入渠させよっ!」、とランドー。また、全艦に接舷、収容作業準備を発令した。




”「全艦っ、接舷準備っ!! 戦傷者及びKIAの搬入に備えっ!」“




ドックステーションに居るライトニング中佐とハミルトン少佐は直ちにデッキディレクターへ指示を出した。



全長812mのリベレーターは、その巨大な艦体をゆっくり軌道ドックの中へ滑り込ませ、速度を同期させたところでガントリーがリベレーターをキャッチ、固定した。


艦内に”接舷完了っ!!“のアスカの声が響くと、乗組員は一斉に動き出した。カーゴベイの大型エアロックが開放され、〈しきしま〉から伸びてきた搬入用ボーディングブリッジが接続される…




  ………………………………




ランドーは早速〈しきしま〉CICへ赴き、艦長の林を尋ねた。ランドーがCICの入口に立つとエアロックが開かれ、林が中へ招いた。



「ランドー艦長、ご苦労だった。発光信号を使ったのはよい選択だった。君も既に知ってると思うが、物理系通信やTXCIは使えん、……この前は危なかった!危うく吸い込まれそうになったからな…」、と林。


「長い航海、ご苦労でしたっ! 林艦長、一体何が起きたのですか?」、ランドーがそう言うと林はポケットから電子煙草を取り出し、吹かすと煙を燻らした。


「我々が打撃群艦隊の居る宙域から離脱する際に、破壊された艦や浮遊している残骸が光りだしたんだ……、加えて戦傷者の傷が直ったり、失われた部位が光りだした………、今搬出しているKIAの遺体も光りだした…、その後に起きたのは通信の物質化だ…」、そう言うと林はモニターに映し出された搬出作業の映像を見た。KIAの遺体を入れたボディーバッグは遺体から放たれる光が透過して見えた。



「宇宙空間では、この現象が早かったのですね。地上でも同様な事が起き始めています。」、ランドーがそう言うと林はその理由を聞いた。


「ランドー艦長、この事について君は詳しい情報を持っているかね。」


「…この情報を知っていたのはリードマン大将とカートライト提督、ロバートソン少将と私、それと大統領と補佐官、地上でアメリカ独立新政府に反抗騒乱を企てた、前副大統領のエバンス氏だけでした…」、とランドーは答えた。


「詳しい話を聞きたい。」、林はそう言うとランドーをサブシートに座らせ、自らもキャプテンシートに座した。お互いに目線を合わせる、林の目の奥には、真剣さの中にも好奇心が見て取れた。



「この情報は敵性異星人との艦隊決戦が差し迫っていた為、各艦の艦長たちには報告されていません、恐らくですが…。SCV-01は超次元へ飛び、カインの避難民を収容した訳ですが、カインの空間に残った者が超次元と物理次元の境界層を破壊すると言っていました…」、とランドー。林は彼と距離を詰めた。


「破壊するとどうなるっ?」


「先ず、次元そのものの構造が変わります。詳しくは伝えにくいですが、思考の物質化と死者の復活が起きる、との事です。貴艦〈しきしま〉の通信アレイから伸びた結晶体もその結果だと……」、ランドーがそう言うと林は拳で手の平をパンッと叩いた。


「なるほどな、これで辻褄が合ったわけだっ!………死者が復活するとなると、KIAの遺体は保管しておいた方が良いのではないか?」


「その事は本部に着いたら話し合ってみます。」


「宜しく頼むっ、ランドー艦長っ!」



ランドーと林は握手と敬礼をし、〈しきしま〉のCICから出ると、リベレーターへ向かった。


カーゴベイへ伸びるボーディングブリッジを進んでいる時、後ろから車椅子に乗せられた戦傷者が彼を追い抜こうとした、その時、ランドーは車椅子に乗せられた者と目が合った。女性だった…


「イングリット大尉じゃないかっ!!」、ランドーがそう言うと車椅子を押していた乗組員は止まった。


「ランドー艦長っ!!……」、とイングリットは思わず声を上げたが、それ以上は何も言わなかった。


「君も宇宙戦に出ていたのかっ!?…アッ!!」、ランドーは彼女の両足が無い事に気が付き、声を詰まらせた。彼女の両足は無い代わりに、元有った足の形に薄い光が覆っていた。


「………見ての通りです、…私は両足を失いました…」、と悲しそうに彼女は言う。


「私はリベレーターで大きな過ちを犯しました。きっと、………その報いです。……艦長、すみません…ウゥッ…フッ…ウゥッ…」、彼女は嗚咽を漏らした。ランドーは彼女に寄り添い、有る限りの言葉で励ました。


「…イングリット大尉、過去は捨てろっ、……今を生きてくれっ、こうしてお互いが会えた事に感謝しよう。それが成されなかった者も沢山いる…」


「艦長、…中島大尉は…?」、とイングリットは聞いたがランドーは首を横に振った。彼女は頭を垂れて両手で顔を覆って泣いた。




  ………………………………




リベレーターCIC内。



「戦傷者及びKIA、収容完了したっ!」、とアスカが報告した。


火器管制のフスター少佐は乗組員のポジションを確認し、艦長のランドーがこちらへ向かっているのも確認した。


「OK、……マーベリット、〈しきしま〉へ発光信号!ボーディングブリッジ及び、各係留ラインをパージさせろっ!アスカッ、発進に備えっ!……バートル、機関に異常は無いかっ?!」、フスターは各管制科員に指示を出した。


「主機、異常なし、………TXコンデンス、現在、82%…、依然上昇している。フスター少佐、このままではTXエネルギーが艦内に漏れ出る事になりますっ!」、とバートル。それを聞いたフスターは難しい顔をしてウウーンッと唸った。そこへランドーが戻って来た。



「ランドー艦長っ、出渠準備完了っ、〈しきしま〉の係留が解除されたら出れます…、動力系統に問題が出ていますっ!」、とフスターが報告すると、ランドーはどの箇所に問題が有るか聞いた。


「どの部分だっ?!」


「TXエネルギーコンデンスの上昇が止まりませんっ、………このままだと艦内へ漏出の可能性が有りますっ!」、フスターの報告を聞いたランドーは動力管制のバートル大尉の方を向いた。


「万一、漏出した場合はどんな影響が有るのだっ?!」、とランドー。


「現在、コンデンサーに蓄積されているTXエネルギーは無指向性のものです。火器管制を通して放射される指向性のものとは違いますが、100%の安全性は前例が無いので何とも……」、バートルがそう言いかけた時、副官のマーク中尉が声を上げた。


「艦長っ、大尉っ、コンデンサー保守要員から異常を確認したっ、との事ですっ!」、とマークは緊張した声で発した。バートルはオープンチャンネルに切り替えさせた。



”「TXコンデンサー室よりCICっ!コンデンサーサーモグラフに異常っ!!」“、と保守要員の声がCICに響いた。


バートルは直ちにサーモグラフを全球スクリーンへオンボードさせた。それを見たCICに居た者は思わず息を呑んだ。マーベリット大尉は悲鳴さえ上げた…



全球スクリーンに映し出されたサーモグラフには人型のようなものが多数蠢いていたからだ。







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