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USSF機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター戦記』第四部 [ 最後の夢編 ]
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『治癒と躍動』

地球へ向かう日本防衛省の軌道ドック〈しきしま〉とランデブーを行うため、艦体とシステムのチェックを進めるSCV-01〈リベレーター〉。CICでは火器管制のフスター少佐がシステム不具合と格闘していた。PHA (Periodic Health Assessment:定期的健康評価)を受けて帰ってきた動力管制のバートル大尉は、副官のマーク中尉と交代し、彼にPHAを受けに行かせる。マークは持病の血液性疾患に悩んでいたが、メディカルセクションで各種評価項目を受け、診察室でDr.のマーティン中佐から結果を聴くと、なんとマーカーは陰性を示していた。狂喜したマークはCICへ戻ると、火器管制員のマーベリット大尉に告白しようとするが、妹の名前を聞いた兄のフスター少佐はマークへ詰め寄る。艦長のランドーはトラブルの雰囲気を感じ、フスターを連れて艦長室へ向かう…

『治癒と躍動』




SCV-01〈リベレーター〉が再び宇宙へ向けて飛翔するには約一週間の時間が必要だった。修理改修個所のチェック及び、火器管制系の入念な動作確認、それとミサイル、弾薬等の起爆が正確に行われるか確かめなければならなかった。


世界で兵器開発工場が停止したように、軍内部においても、保持している兵器、弾薬が正確に作動起爆しない事例が訓練でしばしば報告されていた。先の宇宙戦闘で敵性異星人のUFO艦隊は退けたが、それは終わりという訳ではなかった。その確証が得られなかったからだ…




  ………………………………




CICでは、火器管制に就いているフスター少佐が兵装のチェックを行っていたが、彼はボヤいた。


「ランドー艦長、兵装をテストモードで確認したのですが、約30%が正常に稼働しません、………ミサイルと対空火器弾薬の炸薬が起爆しない。………分解して炸薬だけ取り出してテストすると、ちゃんと発火爆発するのですが…」、彼の報告を聞いてランドーはウウーンッと唸った。


「30%か……、重粒子砲は?」、とランドーは聞いた。


「高エネルギー兵装は今のところ問題は有りません…」、とフスターは自信なさ気に返した。ランドーはフゥーッと大きな溜め息を吐いた。


「敵性異星人は、まだ完全に殲滅できたわけじゃない…、USSF(アメリカ統合機動宇宙軍)で残っているのはこの艦だけだ。何か有ったら対応出来ない…」



そんな話の中、CICにバートル大尉が帰ってきた。彼はPHA (Periodic Health Assessment:定期的健康評価)を受けに行っていた。


バートルは動力管制に着くと、隣に居るマーク中尉にPHAを受けに行くよう言った。マークは頷いたがフゥッと短い溜め息を吐く…。彼は持病の血液性疾患が有り、生活や健康上、問題は無いにしても、周りの者との接触はある程度制限が在った。血液を介して病気を移した場合、移された側は重篤な症状を引き起こす可能性が有ったからだ。


マークは暗い顔で席を立ち、CICを出た。



リニアチューブを通り、メディカルセクションに着くと、彼は受付をして処置室へ入り、採血、その他の健診をした後、軍医のマーティン中佐に結果を聞くことになった。


待合室で暫くした後、アンドロイドから呼ばれ、彼は先に居た者と入れ替わりで診察室へ入った。そこにはモニターを見るマーティンの姿があった。



「Dr.…、どうです?」、とマークは自分の健康状態を尋ねた。マーティンはマークの方をチラッと見ると、あぁっ…と言って、再びモニターを見入った。


「ウウーンッ…」、と唸るマーティン。暫くして彼はマークの方に向き直った。



「君は確かHIV系の病気だったよな…」、とマーティン。マークはハイッと答えた。マーティンは再度モニターに向かい、IDに間違いが無いか調べた。



「IDは君ので間違いない、……ウイルスがねぇ……」、とマーティン。マークは、またかっ…と思った。


「消えてるんだよ、…」、とマーティン。その言葉にマークは、エッと驚いて彼に迫った。


「Dr.、それっ、本当ですかっ!?」


「ああ、マーカーは白、陰性だ。…私も驚いている。」

「本当にっ、本当ですかっ!!」、とマークは鼻先が着くくらいマーティンに迫って繰り返し聞いた。


「チョッとっ…中尉、落ち着いてっ!…近いっ!! 検査結果は確かだっ、だが、念の為、今まで通り薬は服用してくれ、次回のPHAでは、…遅すぎるか、……三週間後に来てくれ。もう一度、検査を受けてくれ。」、と彼はマークに伝えた。マークは彼から離れ、笑顔で敬礼した。


「有り難うございましたっ、Dr.!!」、そう言うとマークは小躍りするように診察室を出て行った。



部屋に残ったマーティンは無言で出口を見ていた。



(PHAの結果で健康評価が劇的に上がったのは彼だけじゃない……、血液サンプルから抽出した細胞に、明らかな活性化が見て取れる。)



そう思うと、マーティンは政府の保健省にリンクし、最近の情報を調べていった。似た傾向は示していたが、保健制度上、定期的に健診を行う者は少なかった。


(統計的に、少し信頼性が落ちるな……軍内部を調べてみるか…)



彼は国防保健局(Defense Health Agency: DHA)にアクセスするとPHAの評価ページを開いた。そこで分かった事は、艦内で行われたPHAの結果と同様に、その評価は、この一2ヶ月で劇的に上がっていた。彼は報告内容の一部を凝視した。そこに書かれていた事は…



「エッ!なっ、…なんだって…」、と思わず声を出した。


(テロメア(Telomere)が減らないっ!? だとっ…、いやっ、むしろ元の長さの状態に戻っているっ、だってぇーっ!!)


マーティンは腕組みをし、目を瞑って俯くと、ウウーンッと唸った。




  ………………………………




メディカルセクションからCICへ向かうマークはとても気分が良かった。胸ポケットに入れていたラッキーアイテム(マーベリット大尉の下着)を取り出して、それを眺め、ウフフッ…と薄ら笑いをした。


リベレーターが土星宙域で敵性異星人の高次干渉と捕らえられた友軍のイギリス防空宇宙軍の〈ヴァンガード〉と戦い、エドワーズ統合機動宇宙軍工廠に帰還したあとに、マーベリット大尉から貰ったものだった。勿論、マークはその理由を知らなかった…



(ウフフッ…、好き好き、マーベリットちゃん ♡、これでやっと人並みに告白できるんだ! 今まで病気の事で、彼女も作れなかった、…どんなに辛かったか…、でも、今は解放されたんだっ!)



意気揚々と彼はCICへ戻った。



それを見たバートルは彼の変化を見て、一体どうしたのかっ?、と思った。PHAを受ける時マークは決まって暗い顔をしていたからだ。


「マーク、何かいい事が有ったのか?随分、気分が良さそうだけど…」、とバートル。すると彼はハッキリ次のように言った。



「直ったんですよっ!! 血液の病気がっ!」


「エエッ、あの病気って、まず治らないって聞いてたけど……、奇跡だな!」、驚いた表情を見せるバートルの前でマークは次のように言った。


「これでマーベリット大尉に告白できますっ!」




右側の火器管制に居たフスター少佐と妹のマーベリット大尉は、その声に気が付きマークを見る…


「マーク中尉、妹になんだってっ?」、と先ほどから兵装の事で少し気が燻っていたフスターが低い声でマークを詰めた。その様子にマークは言葉が詰まった。


「いっ、いやっ…その。……以前、大尉からプレゼントを貰ったので、そのお礼を、……したいな、なんて…」


「どんなプレゼントなんだっ………アッ、あの時の紙袋かっ!! 去年のクリスマスの時かっ?! 何を妹から貰った?」、とフスターは更に詰めた。


フスターの横に居たマーベリットは顔を真っ赤にして身体を硬直させた。


(私、CICに居られなくなるっ!…)、と心の中で叫んでいた。



「何を貰ったんだっ!?」、とさらに詰め寄るフスター。それを見ていたランドーは、統括指揮エリアから下へ降りるとフスターに言った。


「フスター少佐、その辺にしておけっ、これ以上はトラブルだ。一緒に艦長室へ来てくれ…」、そう言うとランドーはフスターを連れて、指揮統括エリアの後方にある艦長室へ向かった。



部屋に入ったランドーは彼に椅子にかけるように言うと、自分もそうした。



「マーク中尉がマーベリット大尉から何を受け取ったか、私は知っている。私が彼女にそれをマーク中尉に渡せと命じたからだ…、これは以前、土星宙域で高次干渉を受けた事が関係している。」、とランドーは彼に言った。


「何で艦長がっ!?…高次干渉?」、フスターが頭をひねるのは無理もなかった。高次干渉の情報はメディカルのマーティン中佐の他は、今は亡きロバートソン提督とランドーしか知らなかった。



「高次干渉については話せない、問題が複雑になる。……君に言えるのは、私が君の妹にマークへ何を渡させたか、だ…」、とランドー。


「………何です?」、と彼は静かに問うた。



「…………………………………………」





長い沈黙が続いた。


(そこはスルーして欲しかったな……)、とランドーは心の中で呟いた。


ランドーは話を変えた…



「フスター、君は前に、バートル大尉が今回の戦闘で戦死した、元TX機関操作員のエディ·スイングを庇って、私に誤射されたのを知っているだろう。」


「妹から聞いてます、あの時、直ぐ近くに居た、という事で…」


「エディは私の妹だったんだ…」、ランドーから聞いたフスターは顔色を変えた。何故ならTX機関操作員はバイオクローニングによって造られた、所謂、”人工人“と言う事は知られていたからだった。彼は言葉が詰まり、何も言えなかった。




ランドーの話は続く…



「それを知っているのはCIC内でバートル大尉だけだ。………妹は死んでしまった。彼女とバートルはお互い愛してたんだ……残念な結果だった。フスター、もし妹に誰か良い人が出来たら、君はそれを祝ってやれるかい、……自分はそれが出来なかった。」、そう言ってランドーは悲しい思いを露わにした。


「………勿論です、祝いますとも。…大事な妹です。」、フスターはそう言うと質問に戻った。


「何を渡させたんですか?」、それを聞いたランドーは、なんで何回も聞くんだっ!と思った。観念したランドーは次の事を約束させた。


「これから言う事は絶対に他言無用、妹さんのマーベリット大尉にも言うなっ!私はロバートソン提督に無理にお願いされて引き受けただけなんだからなっ…」


「分かりました、それは守ります。」、と淡々とした表情で返すフスター。


「………下着だ。」、と小さな声でランドーは呟くように言った。


「エッ、なんてっ?!」、フスターは声がよく聞こえなかったのでランドーに近づいた。


「下着………だ。」、それを聞いたフスターは、目を大きく見開いたまま固まった。よほど混乱していたのか、彼は次の事を……、それは火器管制員の性なのかも知れなかった。


「いっ、妹の下着っ…、下着は”Lise Charmel“のブラントなんですよっ!! そっ、それを安々と他の者にやるなんてっ……最初は安いものからでしょっ!!」、それを聞いたランドーは、いやっ、そこじゃないだろう……、と密かに思った。



ランドーは立ち上がるとフスターに命じた。



「話は以上だ。君はCICに戻って、本艦の発進準備に備えてくれ。くれぐれも先の事は言うなっ!」


そう言ってランドーはフスターを艦長室から退出させた。










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