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USSF機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター戦記』第四部 [ 最後の夢編 ]
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『変容する世界』

修理改修の進むSCV-01〈リベレーター〉。そんな中、SAIは深宇宙から日本防衛省の軌道ドック〈しきしま〉から発信されたTXCI(Thing X Communication Interface)のコールを受信する。通信チャンネルを開き〈しきしま〉の艦長、林と交信するランドーだったが、突然、スクリーンの映像と自身に異常を感じたランドーは交信を切り、TXCIの使用に制限を掛ける。

一方、世界は変容を続けており、アメリカの国内も混乱していた。ハワードは国内の混乱と変容を報告書で確かめると、アメリカの為政者の歴史を回想する。


SCV-01〈リベレーター〉がエドワーズに帰還して、凡そ二ヶ月、地球に近づいた日本防衛省の軌道ドック〈しきしま〉に収容されている戦傷者の地上への回送が行われようとしていた…

『変容する世界』



CICへ入ったランドーは、先ず周囲の人員と修理改修状況を確認した。管制科員の代わりにアンドロイドが配置に着き、宇宙戦闘で破壊されていた全球スクリーンと操縦航法管制エリアは、ほぼ修理改修を終わっていた。


それを確認すると、彼はSAIに何か有ったか聞いた。


「何か有ったかっ?!」



普段はマーベリット大尉が座っているシートに着いているアンドロイドが振り向くと、TXCI(Thing X Communication Interface)のコールを確認した、との事だった。


「艦長、宇宙方位よりTXCIのコールを受信。かなり弱いです。」、とアンドロイド。


「……発信位置は確認できるかっ?」、ランドーか言うとアンドロイドはコンソールに顔を近づけ、モニターに映し出されるデーターを確認した。


「0.47AU、……地球公転軌道上、速度、約16000km/h速度遅いっ!基準航法のようです。」


「物理系通信はっ?!」、とランドー。


「QCI(Quantum Communication Interface:量子通信)は向こうに問題が有るようで反応は有りません。」



少しの間、ランドーは腕組みして考えたが、顔を上げると次の様に指示を出した。


「よしっ、受けろっ!」


アンドロイドは指示を受け、こちらのTXCI通信チャンネルを開いた。通信画面が全球スクリーンの前面にオンボードされた。最初、画像は歪み、何が映っているのか分からなかったが、次第に明らかになっていった…


「…これは、…〈しきしま〉のCICじゃないのかっ!!」、とランドーは思わず発した。


”{ こちら、軌道ドック〈しきしま〉、……この通信を傍受した側は応答せよっ!……こちらは… }“


ランドーは直ぐに返信した。


「SCV-01より〈しきしま〉、艦長のランドーだっ!応答せよっ!」、向こうが受信したらしく、画像は鮮明度を増した。向こう側には〈しきしま〉の艦長、林がヘッドセットを耳に当て立っていた。


”「ランドー艦長かっ?! 〈しきしま〉の林だ、現在、わが艦は戦傷者を収容、地球へ向けて航行しているっ……SCV-01、貴艦は今どこだっ?」“


「地上のエドワーズに居るっ!」、とランドーは返した。


”「エドワーズッ!? 地上はどうなっているっ?!」“


「反勢力の騒乱は鎮圧しました、そちらの詳しい状況を知らせて下さい!」


”「戦傷者53名、KIA398名を収容している、……航海中におかしな事が起きている。負傷者と遺体が光りだしたっ…」“


「エッ、どういう事…」、そう言いかけた時、ランドーはスクリーンの通信画面を見てギョッとなった。画面に映っている林艦長の姿が画面から迫り出すように感じたからだ。また、自身の身体が異常に軽くなるような異変を感じた。


(これは、…危ないっ!!)、危険を感じたランドーはSAIに直ちに通信遮断を命じた。


「通信を遮断しろっ!! 急げっ!!」、アンドロイドは慌てて通信チャンネルを閉じた。


ランドーは指揮統括エリアから下へ降りると、アンドロイドに先のTXCI通信のエネルギー周波数を確認させた。



モニターに映し出されたエネルギー周波数を見てランドーは驚いた。先に異変を感じたくらいからTXエネルギーバンドは急激に物理バンドへ変化し、その強度はアウトライヤー(無限上昇)を示していた。


「あれは……、物理的オーバーシュート(相互入れ替わり)だったのか…!?」、と彼は呟いた。



この異常を見たランドーはSAIに対し、TXCIの使用を禁止させ、この事象の情報を直ちに統合機動宇宙軍本部へ連絡した。


本部のボイス中将を経て、この情報は軍総本部ペンタゴンに居たリードマン大将に伝わった。既に国内では通信や思考の物質化が確認されており、リードマンは高度通信システムの使用を控えるよう政府に提言した。政府の対応は早く、軍内部においてはTXCIとQCI、民生ではQCIの使用が禁止された。




  ………………………………




報告を受けたホワイトハウスのハワードは、この事象は今後加速すると考えていた。自身においても、執務室で起きたコーヒー出現事件も有り、何れ強度の高い通信を伴なわくとも、その現象は広がって行く…、そう感じた。


この事象を受け、アメリカ政府はようやく日本政府が持ち掛けている、今は亡き防衛省副大臣、和泉のレポートの公開時期を模索するようになった。


国内の崩れた社会体制を必死で立て直そうと躍起になっていたハワードだったが、毎日のように送られてくる各省の報告書の内容はそれを否定し、次の世界の形を暗黙の内に受け入れさせようとするものだった。



 

  ……………………………




ホワイトハウス大統領執務室…



「経済は底を突いている、………だがっ、……デモや暴動は殆ど起きていない、……少数、暴動が有ったみたいだが、暴動を起こした者は…!! 自ら倒れたっ?! 」



ハワードはFBI(連邦捜査局)の報告書と添付された写真を見て思わず顔を背けた。此等の行動を起こした者たちは一様に顔に黒い筋が走り、死に至った者は、以前、法廷で変死した元副大統領のエバンスや国防省の元長官だったマッカーシーのように身体の一部が異形を伴っていた。この手の死亡は、一般市民の暴動に関わった者以外、軍産複合体の上層の者、更にそれを取り仕切る金融、一般ではディープステート、またはイルミナティと呼ばれる者に多く発生した。

アメリカや世界の国々を裏から操っていた実質的な支配者層だった。ハワードは勿論その事を知っていたが、アメリカの国力維持のためにやむを得ない事、として黙認していた。彼に限らず、アメリカ歴代の大統領はそうしてきた。唯一、それに抵抗した者は1963年11月22日に暗殺された大統領、JFK(ジョン·F·ケネディ)であり、この時代になると既に異星人との技術供与協定が確立しており、アメリカは完全ではないが、高次元技術を既に取得していた。政府は極秘裏にタイムゲートチームを編成し、歴史の改竄さえ行った。しかし、近年、異星人たちは協定を一方的に破棄し、政治に介入するようになった。

こうした敵性異星人に対しアメリカやロシア連合は秘密裏に戦って来たが、新たな問題になったのが、人類の分岐種とも言える、もう一つの人類、カインによる世界線の破壊と統合だった…、以降、現在に至る。


 


ハワードは報告書に添付された写真を見てガタガタと身体を震わした。


(自分もこのようにして死ぬんだろうか…)



そんな思いの中、執務室に補佐官のクラウディアが入って来た。彼女はハワードの様子が変なことに気が付き、何か有ったか尋ねた。


「大統領、顔色が……、何か有りましたか?」、彼女の問いかけに対し、もはやハワードは自分を隠そうとしなかった。


「シンシア、…私は良くない大統領だっただろうか…」、彼の言葉にクラウディアは首を傾げた。


「言っている事が分かりませんよ…?」


「歴代の大統領は沢山いる、…各々、国のために働いてきた。JFKは暗殺さえされたんだ…」、とハワード。


「ハワード、貴方も国のために働いてきたでしょう…」、とクラウディアは言った。


「もし、正しいと思ってきた事が間違いだったら…」、そう言ってハワードは報告書に添付された写真をグシャッと握り潰す…



クラウディアは、各省庁の報告書を纏めたレポートを静かに机の上に置いた。


「各省庁の報告を纏めました……、読んで下さい。世界はアメリカが掲げてきた『自由と平和』を享受する事になります。真の『自由と平和』です。」



「真の…、自由と平和、…か。」、そう呟くとハワードは報告書を取った。




      ◆




世界では異常現象が驚くべきスピードで加速していた。


思考の物質化が食料を供給し、通信は機器を介さなくとも出来るようになりつつあった。その為、言語を必要としない、昔、言われていたテレパシーによるコミュニケーションが特に多くなった。このコミュニケーションは人間だけに留まらず、あらゆるものに対して有効、という特徴を有していた。アクセスした側の思考や傾向性を瞬時に理解し、その為、以前に電子端末を介した時のような不完全な意思疎通や詐欺的行為は激減した。


移動に於いては、まだ少数ではあるがテレポート能力を有する者も出てきた…、これは国境という概念を覆すものだった…




  ………………………………




SCV-01〈リベレーター〉が地上のエドワーズへ帰還してから、凡そ二ヶ月が過ぎた。修理と改修を終えた後、乗組員は復帰し、訓練が行われていた。


乗組員の中には超常的な能力を現す者も居たが、艦の運用は従来のセオリーに沿って行われた。

しかし、変容の兆しを見せる世界情勢により、軍の組織も次第に簡略化されつつあった。乗組員の中で軍事の必要性に疑問を持つ者も少なくなかった。




  ………………………………




リベレーター艦長室にランドーはリモートで本部のボイス中将と話し合っていた。


スクリーンに映し出されたボイスはランドーに言った。


{ 高高度防空網に日本防衛省の軌道ドック〈しきしま〉を確認した。地球周回に入り次第、SCV-01は戦傷者を回収、地上へ回送せよっ! }


「承知しました。…ところで司令、基地に収容しているカインの避難民がテレパシーを使い出したと聞いています。本当ですか…?」、とランドー。ボイスは軍帽を脱ぎ、手で頭を掻いた。


{ その事かっ、………困ったもんだよ。彼等の能力に接した者は秘密を保持できない、………まぁ、彼等には軍の秘密なんて只のガラクタだろうが、念の為、人員は重要情報を持たない者に入れ替えた、……施設の管理作業を行っていた者が何人か誘惑されたらしいんだ。}



「誘惑っ?……まあ、カインは女性だけですからね。異性には興味が有るのでしょう…」、そう言うとランドーは表情を崩した。







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