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USSF機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター戦記』第四部 [ 最後の夢編 ]
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『鎮魂と戦いの残響』

警戒を解くことのないリベレーター艦内でランドーはカインの避難民と、今回の戦闘で死傷した者を見舞う。死亡者と戦死者…日本防衛省副大臣の和泉と妹のエディを収容した部屋に入るランドー。そこには、ハワードとクラウディアの政府関係者とリードマン大将、バートル大尉、カインの風早志門らが亡くなった者の死を悼んでいた。ランドーもたった一人の血族であるエディの死に激しく声を上げる…

二人の死を悼んだハワードらは、その後、地上の混乱を収拾する為、TR-3Dで地球のアメリカ本国を目指し、リベレーターから飛び立つ。


『鎮魂と戦いの残響』




SCV-01〈リベレーター〉内。



ランドーはリベレーターの警戒態勢レベル2を継続し、避難民の様子と今回の戦闘で亡くなった者と負傷者を見舞った。艦内の移動に、彼を警護するアンドロイドは彼自身がキャンセルした…



避難民の代表であるカインの最高評議会議長のエルメラと政務執行長官のエステルに対し、一部死傷者を出してしまった事を彼は深く詫びた。


「この戦いは避けることが出来なかった……、カインの人達に死傷者を出してしまった事を艦長として深くお詫びします…」、彼がそう言うとエルメラは近づき、ランドーをハグして優しく言った。


「貴方も辛かったでしょう…、私達を背負いながら良く戦い切りました。死者は復活します、それを信じてください…」、ランドーはその時、死者の復活の事を思い出したが、まだ実感は湧かなかった。


「避難民の事は気にしなくてよい、……それより亡くなった者を………」、隣りに居たエステルはそれ以上言葉が出ず、顔を手で覆い嗚咽を漏らした。


「和泉が…死んでしまった…」、と震える声で彼女は呟くように言った。ランドーは俯き、重い気分の中、ただ無言で二人に敬礼し、その場を後にした。



メディカルセクションの片隅に設けられた遺体収容室へ入ると、其処には大統領のハワードと補佐官のクラウディア、リードマン大将とバートル大尉、カインの風早志門他、数名の者が、今回の戦闘で亡くなった防衛省副大臣の和泉とエディを囲むようにして、その死を悼んでいた。遺体は床に横たえられていた…


ハワードとクラウディアは負傷していて、ギプスや傷口にバンドやテープが貼られていた。ハワードとクラウディア、リードマン大将は和泉の遺体の前で跪き、感謝と哀悼の言葉を送った。ランドーもまた敬礼で哀悼の意を表した。彼がエディの方を振り向くとバートル大尉、風早志門と他の者はエディの遺体を抱きかかえ、咽ぶように泣いていた…


エディの遺体…彼女は薄目を開け、ただ虚空を眺めている。彼女の最期がランドーの脳裏で再現される……



  ”兄さん………私…戦えた…かな…“



ランドーは必死で声を抑えたが涙は止められなかった。頬を伝って落ちる涙は足元の床を濡らした。彼にとってせめてもの救いは、自分の妹は沢山の人に愛されていた…、目の前に在る自分の知らない事実だった。


(自分の知らない所で、沢山の人にエディは愛されていたんだ………)



ランドーはついに声を上げ、遺体に走り寄ると抱きかかえた。



「まだ温かい…いや、………冷た…」


彼は抱きしめ、妹の名前を何度も叫んだ。


「エディッ、エディーッ、エディイイーッ!!………」



艦長の肩書も何も無い…、そこに有ったのは一人の人間としての深い悲しみだけだった。




  ………………………………




大統領ハワードらは遺体収容室を出るとリードマン大将へホワイトハウスへ継なぐよう指示を出した。リードマンは横に居るランドーに通信は可能か尋ねた。


「先ず、地上の通信の状態を調べなくてはなりません…、こちらのTXソナーの観測では地上で核が使われた可能性が有ります。大気圏に電磁障害が発生していなければ………」、ランドーはエディとの別れが尾を引いているのか、その言葉は歯切れの悪いものだった。収容室でランドーを見ていたリードマンは察してか、彼の肩を掴むとギュッと握った。



一行がCICへ入ると、ランドーはSAIに対し、ホワイトハウスとの交信が可能か尋ねた。火器管制エリアで通信管制も行っていたマーベリット大尉の姿は見えず、兄のフスター少佐だけが居た。彼の顔は疲れ果て、その目は死んでいた…


(皆、疲弊しているんだ……、あれだけの戦闘の後だ…)、そう思っている時、SAIから答えがあった。


”「物理通信では月軌道にリレー機を配置しなければなりません。以前の戦闘でブラックバードから月面に投射されたリレーポッドは使用出来ません、…TXCIでは地上の稼働機を見つけて経由させる必要が………」“


SAIが言い終わらない内にランドーが発した。


「もう、いいっ!…私のTR-3Dを準備せよっ!!」


「待てっ、通信だぞ、ランドー艦長!? 艦載機でどうするのだっ!?」、とリードマンは言った。


ランドーはハワードに振り向くと説明した。


「TR-3Dなら直接地上へ行けます。アメリカ本国の統合機動宇宙軍基地でIFFビーコンが確認できれば其処へ飛びます。」、ランドーの説明にハワードは頷いた。


「いずれ、地上には降りねばならないのだ……、艦長、お願いする。君たちはどうだっ…」、そう言って彼は補佐官のクラウディアとリードマンの方を見て促した。全員黙って頷いた…



ランドーはSAIへTR-3Dのスタンバイを指示…、一行を引率してデッキステーションへ向かった。通路では乗組員、アンドロイドとカインの避難民で埋まっていた。ハワードは足を取られながらも、すまないっ、といった仕草で片手を挙げた。カインの避難民たちは特に何かを言う事はなかったが、不思議な目でハワードらを見ていた。


(彼等は初めて地上の者と接触したのだから当然か…)、とハワードは思った。一方、一緒に居たクラウディアは、これら避難民が地上へ降りたあとの事を考えていた。


(彼等は同じ人間だけど、全く違う文化特性が地上のそれと合わないかもしれない………、慣れるまで特別な施設が必要になるかも知れないわね…)




避難民を掻い潜りながらデッキステーションへ入ると、ライトニング中佐の副官、ハミルトン少佐が一行を待っていた。


「ご苦労っ、少佐。ライトニング中佐はっ?」、ランドーがそう言うとハミルトンは、あそこっ!、と言うふうにステーションの隅を指さした。部屋の隅の管制シートに座ったライトニングはコンソールに伏していた。


ランドーはそれを見て短い溜め息を吐くと、ハミルトン少佐にTR-3Dの状態を尋ねた。


「問題は無いか? 大統領も乗る。」


「アンドロイドとSAIの点検では問題は無いと…、我々ではあの機体は扱えませんから…」、とハミルトンは申し訳なさそうに答えた。次にこうも言った…


「Δ-9のパイロットは居ますが、TRは使えないそうです…」、彼の言葉にランドーは答えた。


「TRはプロトタイプだ、パイロットも特別あつらえだ、気にしなくていい…」、そう言ってランドーは表情を崩した。



SAIから準備完了の声が有った…



ランドーは専用パイロットスーツを纏うと機体底部の昇降ハッチを開放し、ハワードらを搭乗させた。




”「3番エレベーターゲート開放っ、TR-3D、艦上露天デッキへっ!」“


ハミルトン少佐の声と同時に、機体を固定しているスライド甲板はエレベーターへ移動し、上昇してリベレーター艦上の中央露天デッキへ持ち上げた。



「………位置に着いた、システム…オールグリーンッ!………重力可変っ…TR-3D、発艦するっ!!」、ランドーは機体をチェックし、ステーションとCICへコールした。


「了解っ、発艦せよっ!!」、とステーションのハミルトンは発した。CICでも確認していたフスター少佐から声が入る。


”「艦長、お気を付けてっ!!」“


「了解したっ、少佐、留守を頼むっ!!」、とランドーは返す…



TR-3Dは甲板から約3m浮き上がると閃光を発し、一瞬で機体は消えた。




  ………………………………




高次ドライブで一瞬で地球圏内へ到着したTR-3Dは直ちに友軍のIFFビーコンを探した。それは案外早く見つけ出せた…



「エドワーズ、IFFを確認した! リードマン大将、どうしますかっ!?」、とランドーは尋ねた。


「囮ではあるまいな……、こっちは大統領を乗せている。管制と通信は出来るか?」、とリードマン。ランドーはエドワーズの通信周波数を調べた。


「周波数、MW-001734…、変更されています!」


「私が通信に出る、危険な動きがあれば空域を離脱してくれっ。」、とリードマン。ランドーは頷くと通信チャンネルを開いた。


「エドワーズッ、応答せよっ!統合機動宇宙軍本部のリードマンだっ………」、少し間をおいて返信が返って来た。


”「……管制より不明機っ、所属と機体番号を知らせっ!…」“


リードマンはランドーの方を見て顎を上げ、返信を促した。


「SCV-01所属、機体番号、TR-3D-01、コマンダーのR·ランドー大佐だっ、着陸許可を求めるっ!」




暫く大きな間が空き、その後、返信が有った。


”「確認したっ、第1ドックAラインへ降着せよっ!」“


(かなり時間が掛かった……、指揮系統が混乱しているのかっ?)


ランドーはそう思いながら、慎重に高度を落とし、指示されたラインへTR-3Dを降着させた。すぐ横のハンガーから数台の輸送車が走ってくるのが見えた。機体を取り囲むように車両は停まると、将官らしき男が出てきて敬礼した。それを確認したリードマンはランドーに昇降ハッチを開放するよう指示を出した。



先ず、ランドーが先頭に立ち、昇降ハッチを降りた所で周囲を確認し、次にリードマンとハワード、クラウディアらを降ろした。


将官は一行に近づき、声を掛けた。


「ご苦労様でしたっ、リードマン大将、そして大統領っ!!」


「本部の副官のボイス中将は何処にいるっ…」

「中将は現在、ワシントンです。反勢力の政府と対峙しています。」、そう聞いたハワードは前に進み出た。


「直ちに連絡機を用意してワシントンへ飛ぶんだっ!この状況は私が収拾しなければならんっ!」、ハワードの言葉を受け取ったリードマンは直ぐに将官に対し、高速輸送機の準備を指示した。


「リードマン大将、私は…」、とランドーが言い掛けると、リードマンは振り向き次の事を下令した。


「リベレーターへ帰還っ、状況が整うまで待機せよっ!」


「ハッ!! SCV-01、月面にて待機っ!!」



ランドーは復唱すると、リードマンとハワードらに敬礼し踵を返すとTR-3Dへ走った。






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