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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター戦記』第四部 [ 最後の夢編 ]
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『〈あまてらす〉発進せよっ!』

月面のカインの都市セイルが在った巨大なクレーター跡へ降着を試みるSCV-01リベレーター。ランドーは敵との交戦を予測し、セントラルデッキに居るカインの避難民をデッキ中央構造部へ移動させる。地上の作戦司令部の要請を受けリードマンは〈あまてらす〉を地上へ返すことを決定、ランドーは直ちに〈あまてらす〉発進準備へ入り、〈あまてらす〉はリベレーター艦内から超次元空間へ向け、分離発進する。一方、SMS-01アトランティスを中心とする統合機動宇宙打撃群艦隊は激しく消耗し、最期の時を迎えようとしていた…


『〈あまてらす〉発進せよっ!』




「目標ポイント直上っ!高度35000mっ、………毎秒25で緩降下っ………、高度読み、ftへ変更っ、………9800ft(約3000m)で反動推進ゼロ調整+3、月重力に合わせっ………降着ギヤダウンッ!」、とアスカは操縦指示を読み上げていく…



ランドーはリードマンの方を向いて意見を具申した。


「リードマン大将、敵は我々を見つけ出せば、必ず追撃して来ます。今のうちにセントラルデッキのカインの避難民を中央構造部へ移動させますっ!」


リードマンは前を向いたまま頷いた。



ランドーはオープンチャンネルで全艦へ発した…



“「CICより全艦へ達すっ!本艦は月面へ降着し、敵の追撃を躱すが、いつ発見されるか分からんっ!セントラルデッキに居る避難民をデッキ中央構造部へ誘導せよっ、通路を使っても構わんっ!対艦対空兵装はオープンのままっ、CP-1(Combat Position Level -1)を維持せよっ、繰り返すっ………」”



直ちに艦内ではカインの避難民の誘導が行われた。その間にもリベレーターは月面降着に向け、高度を下げて行った…



サブCICの180度開口スクリーンにはクレーターの稜線が映し出され、それが次第に上にあがり、艦体が月面に近づいた事を知らせた。


「高度230ft、反動推進+5……降下速度最減速っ…0.8m/sec……降着まで12sec……6,5、4、3、2、着地っ!! 反動推進停止っ!」、月面とのタッチダウンの瞬間、リベレーターの8つの降着ギヤは、月面の土にめり込むようにして艦体を支えた。


軽い振動が艦全体に伝わった…



ランドーは操縦航法管制エリアへ降り、アスカの肩を軽く叩いた。


「よしっ、良くやったアスカっ、上出来だっ!」


「艦体の大きさを考えると結構難しかったですよ、ランドー艦長っ…クレーターの大きさの1/3をホールへ入れる訳だから…」、とアスカは袖で額を拭うような仕草をした。ランドーはアスカの方を見て互いに目を合わすと、シートの後ろから彼女を軽くハグし、再び肩を軽く叩いた。



上にあがり、ランドーはリードマンに〈あまてらす〉をどうするか尋ねた。


「リードマン大将、司令部からの要請はどうしますかっ?」


リードマンは次の事を聞いた。


「〈あまてらす〉を切り離したあと、リベレーターの防御はどうだ……」


「TXエネルギーコンデンスが十分なら、暫くは……但し機関操作員が不在になるのでジャンパーは出来ませんっ。」、ランドーの返事にリードマンは目を瞑り暫く考えると、顔を上げて次のように指示を出した。


「〈あまてらす〉を地上へ返すっ!!  直ちに五十鈴宙佐に伝えてくれっ!」、とリードマン。



(もう、この状況ではカインの超次元境界層の破壊を待っている時間は無いっ、……我々は手持ちの手段で対抗するまでだっ!!)、リードマンはそう思った…



リードマンの指示を受けたランドーは〈あまてらす〉へ走った。カインの避難民たちは既にデッキ中央構造部に入り続けており、ランドーは避難民を掻き分けるようにボーディングブリッジの場所へたどり着いた。



〈あまてらす〉艦橋内へ入るランドー、既に五十鈴宙佐は〈あまてらす〉が地上へ戻る事を察知していたのか、既に準備を整えていた。脇にはメディカルのマーティン中佐もいた。


「五十鈴宙佐っ!……」


「分かっています、ランドー艦長。〈あまてらす〉が地球へ戻らなければならない事はっ……、私は山元作戦司令から、どうしようもなくなった時は戻れと言われていました。今がその状況ですかっ…」、と五十鈴はランドーに尋ねた。


「リベレーターはまだ戦えるっ!戦況は不利だが最後まで闘い続けるっ…〈あまてらす〉の分離は戦略的撤退だっ、……」、そう言うとランドーは五十鈴に手を差し出した。


「五十鈴宙佐、いやっ、五十鈴さん、今までよく頑張ってくれたっ、……この戦いが終わったら地上でまた会おうっ!!」、ランドーは両手で五十鈴の手を包むように握り、日本人の様に頭を下げた。


「…大げさですよっ、でも嬉しいです。ランドー艦長っ…」、そう言うと彼女はヘルメットのバイザーを下げてパイロットシートに着いた。後を振り向き、マーティン中佐へ言葉を贈った…


「マーティン中佐、ありがとうございました…」


マーティンはパイロットシートの後ろから五十鈴の肩を掴み、頭を近づけて短くフゥッとため息を吐くと離れた。


「君の健闘を祈っているっ!」、とマーティン。



五十鈴は前を向いたまま、ランドーに手短に離艦の説明をした。


「〈あまてらす〉は此処から直接超次元へ飛び、日立宇宙工廠地下のガントリーへ接続しますっ、……此処へ接続した時のような複雑な手順は要りません、安心して下さい…」


ランドーとマーティンはンッと頷くと敬礼し、艦橋の外へ走った。




  ………………………………




デッキステーションには〈あまてらす〉の発進は既に伝えられ、Aデッキのクリアが確認された。


デッキステーションへ入ったランドーとマーティンはデッキステーションに居たライトニング中佐と共に〈あまてらす〉の発進を見守る…



“ビィイイイイイイイイイーンンン…”



〈あまてらす〉の機関駆動音がデッキ内を満たした。


「Aデッキっ、ボーディングブリッジ及びSAIエネルギーリンクバイパス、パージっ!! デッキディレクター退避完了っ!……オールクリヤッ!」、とライトニングが叫ぶ。彼はランドーの方を向き浅く頷いた。ランドーも頷き、ライトニングからヘッドセットを取ると〈あまてらす〉へ下令した。



「〈あまてらす〉発進せよっ!!」、彼が叫ぶと五十鈴の声が返る…


“{ 了解っ、〈あまてらす〉発進するっ!! }“



ステーション内に五十鈴の声が響くと同時に、〈あまてらす〉は赤金色の光に満たされ、次の瞬間、大きく輝くとその存在は消えた。



デッキには〈あまてらす〉の専用ガントリーの複雑な接続回路が見えていた。


(行ったなっ………)、ランドーがそう思っているところにビィーッビィーッビィーッという第1種戦闘警報音が艦内を包んだ。



「来たかっ!!」、ランドーとマーティンは其々に自分の持ち場へ走った…




       ◆




敵と混戦状態へ入ったSMS-01アトランティスを中心とする統合機動宇宙打撃群艦隊は既に高速遠征輸送艦ST-EPF-04アイアンロッドを失い、残る02アークセイバーと母艦アトランティスも激しく消耗していた…




アトランティス発令センターはダメージを示す赤色の光で満たされ、脳の奥に響くようなけたたましい警報音が鳴り響いていた。



「TXジャマーの出力を上げろっ!!……動力管制っ、どうなっているのだっ!?」、と私は大声で叫んだ。


「TX機関っ、何れも正常稼働範囲を超えていますっ!! 出力低下中っ!!」、続けて火器管制から悲鳴にも似た報告が発された。


「TXジャマー、有効出力出ないっ!! 対空火器群37%沈黙っ!! 重粒子砲、有効稼働25%っ、……Δ-9隊壊滅っ!!」


「アークセイバー、戦線を離脱しますっ!! 損害甚大っ…」、航法管制も絶望的な声を上げた。




報告がなされる中、アトランティスの艦体は爆発の振動が続いていた。


「提督っ!」、と私はカートライト提督に叫んだ。彼はゆっくり軍帽を脱ぐとそれを握りしめた。


「ロバートソンッ!!」、と低く唸るような声で彼は返した。


「撃ち続けろっ!! 弾薬が無くなるまでっ、ステーターコイルが焼き切れるまで撃ち続けるんだっ!!」、彼は各管制官に叫ぶと再び私を見た。



「ロバートソンッ、君は『隅の親石』の行を知っているかっ!?」


発令センターが近傍のセクションの爆発で大きく揺さぶられた…、私は必死に手摺にしがみついたが彼はブレること無く姿勢を維持していた。


「…ウゥッ…それは聖書のっ……確か詩篇のっ……クッ!……何章か忘れましたがっ…知っていますっ!!」


彼は私を見た。それは決意の塊のようだった…



「ではそう言う事だっ、ロバートソンッ!!」、とカートライトは鬼のような形相で私に発した。






※「隅の親石」

詩篇118篇22~25節

ペテロの手紙一2章4~8節

家を建てる者の退けた石が、隅の親石となった(詩編)。

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