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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター戦記』第四部 [ 最後の夢編 ]
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『最終防衛線』

敵UFOの追っ手を逃れたSCV-01リベレーターは月周回軌道上へジャンプアウトする。それを捉えていた地上の統合機動宇宙軍作戦司令の山元は、対峙する地上政府軍の激しい通信ジャミングの中、リベレーターとの交信を試みる。そこで分かった事は、リベレーターがカインの避難民を収容している事と機動宇宙打撃群艦隊が窮地に陥っている事だった。司令の山元はリベレーターの機関である〈あまてらす〉を地上へ戻すよう訴えるが、その直後、交信は不通となってしまう。リベレーターは退避する為の場所を探し、月面を走査…、そこで見つけ出したのは、かつてカインの都市セイルが在った巨大なクレーター跡だった。


『最終防衛線』




アトランティスのBS(Break Shot:指向性破壊波動放射)発射準備を聞いたリベレーターCIC内では全員が動揺した……、既にTXジャンパーシーケンスとSAIによるコース自動算定は完了していた。



火器管制のマーベリット大尉はシートから立ち上がってランドーの居る統括指揮エリアを振り返り叫んだ。


「ランドー艦長っ、アトランティスより各艦へBS準備が下令されていますっ!この状況は……、最後の艦隊攻撃ですっ!! 我々も、…」


マーベリット大尉が言い終わる間もなく、隣りに居たフスター少佐が警報を発した。


「TX ソナーッ、RAW(Radar Warning Alert)!!、高次波動受信っ!…見つかったっ!! 敵UFOクルーザークラス、接近して来るっ!!」




ランドーは顔を歪めた…


(ここで〈BS:Break Shot 指向性破壊波動放射〉一発放っておけば敵の足を遅らせる事は出来る………、だが問題はその後だっ!)


ランドーは顔を上げアスカに指示を出した。


「本艦は戦線を離脱っ!! 月周回軌道へジャンプせよっ!」


「了解っ!!」、と返すアスカ。


ランドーは隣りに居るリードマンの方を向くと、彼は黙ったまま浅く頷いた。




リベレーターは艦体が一瞬ストロボで照らし出されるように輝くと、その影は空間から消えた…





      ◆





日立宇宙工廠ではSCV-01リベレーターが月近傍の空間にジャンプしたのを捉えていた。工廠内の発令センターでは〈あまてらす〉の波動紋を検知し、直ぐに山元作戦司令へ伝えられた。



火器管制で状況を確認していた副官の宗方美姫三等宙将は山元司令のもとへ走った。


「司令っ、SCV-01〈リベレーター〉が月周回軌道へ現れましたっ!!」

「何っ!? 通信は可能かっ!」、と山元は声を大きくして返した。


「地上軍のジャミングで物理系通信は軒並みダメですが、この距離で TXCI(Thing X Communication Interface:通称タクシー)ならいけそうですっ!」


「直ぐに継なげっ!!」、と山元は宗方へ命じた。



通信管制員はリベレーターとの通信を試みるが、反勢力のTXジャマーにより画像は安定せず、音声は辛うじて聴き取れた……、向こうのマイクからはリベレーターCICの慌ただしさが伝わってきた。



「リベレーターッ、作戦司令部の山元だっ!聴こえたら応答せよっ!!」、と山元はモニターに向かって叫んだ。



“ガガーッ  …ザザッ…  ザッ……”



暫くのノイズの後、声が有った。



{…山元司令かっ!? ……リードマンだっ!}


「リードマン大将っ!! ご無事でっ!?…」


{ …司令っ、地上の … “ガガッ” …況を知らせっ!! }、ノイズにかき消されそうな感じでリードマンの声が返って来た。


「地上で残っているのはグアムのアンダーソン統合機動宇宙軍基地と日本国だけですっ!! アンダーソンは長くは保ちませんっ、…大将っ、そちらの状況を伝えて下さいっ!!」、と山元はヘッドセットのマイクを口に押し当てるように叫んだ。


{ 現在、機動宇宙打撃…“ザザッ…ガガッ…ガ”  …隊は交戦中だっ!SCV-01はカインの…“ザザッ”  …民を収容し…“ガピィーッ” …いるっ! }


「エエッ、よく聴こえないっ!何を収容してるってっ!?」、と山元は声を荒げて聞き直した。


{ カイン6000人… “ガガッ ガ” …収容…“ザザッ” ているっ!… }、途切れ途切れでリードマンの声が返ってくると山元は、これはもう通信が途絶えると感じ、リードマンへ最後の言葉を叫んだ。


「〈あまてらす〉をこちらへ返せっ!! あれが有れば我々は勝てるっ!!」、もはや山元は敬語を使わなかった………直後、ノイズが次第に大きくなり、通信管制員はTXCIの波動調整を試みたが、遂に通信は回復しなかった。


「通信回復不能っ!!」、と管制科員の声が虚しく響いた。


「司令……」、肩を落とす山元に副官の宗方が寄り添った。山元は俯き加減に宗方の方を見ると短い溜め息を吐いて次のように言った。



「恐らく相当厳しい状況だ……、リベレーターは避難民を収容している。月の周回軌道に現れたのも戦闘を回避しての事だっ、……機動打撃群艦隊も乾坤一擲の状態だろう………、最後の通信が届いていれば、…〈あまてらす〉が戻ってくれば我々にも勝機は有る…」


「〈せおりつ〉と〈とようけ〉、〈そさのを〉の連携運用ですね、司令。………そのセンターシステムコアが〈あまてらす〉。」、と宗方。


「そうだっ!、〈あまてらす〉建造計画は全体で超次元の固定砲台として機能するように計画されているっ、〈あまてらす〉が戻ってくれば高次元に潜んでいる敵を一掃出来るんだっ!!」、と山元は口惜しそうに言った。


「地上の反対勢力も、ですね…」、と宗方は付け加えた。




  ………………………………





SCV-01〈リベレーター〉CICでは月周回軌道上から退避出来る場所を走査していた…



「ランドー艦長っ、月面で退避出来る適切な場所は………、東経173度、北緯3度地点に直径3km、深度1480mのクレーターが存在しますっ!」、と航法管制のアスカが発し、更にSAIが補足した。


“「このクレーターは、かつてカインの基地(都市セイル)が存在した場所ですっ!外殻のクレーターと地下深度は本艦体を隠蔽するのに適切ですがっ…………クレーター周囲には陸上用小型ドローンSGD-A1、10機が点在…」”



これを聞いた火器管制のフスター少佐はアッと思った…



「艦長っ、これは我々が放ったドローンですっ!!」


それを聞いたランドーはウムッと頷き、ドローンの誘導が可能かフスターに聞いた。


「ドローンには地雷用の炸薬が積まれていたな……、炸薬の種類と、こちらからの起爆は可能かっ!?」


「SGD-A1にはHMX (オクトーゲン)が積まれていますっ、リモートの起爆は現在も可能ですっ!」


「ドローンの機動は可能かっ!? 補助電源はっ?」、とランドー。

「待って下さいっ……、行けますっ、一基当たり約3kmの移動が可能ですっ!!」



「フスター少佐、ドローン起爆時にエネルギーをクレーター水平面中央方向に集中させる……ノイマン効果が出るよう配置してくれっ………アスカ、リベレーター降下、ポイントへ降着せよっ!」、ランドーはフスターにドローンの移動を指示し、アスカにリベレーターを月面へ降着させるよう下令した。



「ラージャッ!現在高度100、減速開始っ!反動推進起動、SAI精密誘導、…」


「マーベリット大尉、RAW(レーダー警戒受信)に問題は無いかっ!?」、とランドーは周囲の状況を尋ねた。


「物理系PAR(Phased Array Radar)、QR(Quantum Radar)、及びTXソナー、今のところ高次波の干渉無しっ!……TXソナーレンジ内、最近距離の敵は0.7AUに存在っ!」、とマーベリット大尉は返した。



ランドーの横に居て暫く沈黙していたリードマンは機動宇宙打撃群艦隊の様子をマーベリット大尉に聞いた。


「打撃群艦隊の状況はどうだっ!?」

「BSを発射したようですっ……敵UFO残存数は依然として大っ!! 前衛線崩壊っ、混戦中ですっ!!」、悲鳴にも似た声でマーベリットは返した。


「混戦っ、かっ……最早ここまでかっ!」、とリードマンは奥歯をキシらせた。横に居るランドーはリードマンの方を向いた…



「まだ我々(リベレーター)が居ますっ!この最終防衛線はリベレーターが守るっ!!」、とランドーは声を上げた。




リベレーターは目標ポイントに向け降下して行った…






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