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日が変わる時間に
深夜に古都を歩いた
月のない闇夜
夏の湿気の中を行くと
草の匂いがした
風は微風
空には雲ひとつなし
坂の上に見えたのは
五重の塔
その先をゆけば
人のいない大伽藍が
夜と対峙している
静かに
ただ静かに
天には星々
地には我ひとり
綺羅星たちは誰かの魂だという
道しるべなのだという
それならばこの地に眠っているという
千年前の阿闍梨たちも本当は
無数の祖先たちとともに
とっくに天に昇っていて
子孫たちを
見守っているのかもしれない
玉砂利を踏みしめながら
誰もいない古都を歩いていると
日付けが変わっていく
明日という言葉の不確かさを
時の流れの中にいて
存在していることの不思議を
知れたような気がした




