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星ひとつ、見えたなら
星ひとつ、西の空
雲のたなびく
夕焼けの影
灯りはじめの
電灯の下
深い青空に
溶けそうな
透明な気分で
家にかえろう
星ひとつ、南の空
しだいに明るくなる陽射し
温かくなる日々
春風めいた日が続いて
明日はどうなるんだろう
いい日であればいい
星ひとつ、北の空
葉のない木々の
枝先に
終わりかけの
冬が残って
風に流されて
飛んでいくよ
きみは、どこに行くの
そう言うときみは
小さく微笑んだ
春になれば
北へ行くの
振り返らないで去ったから
きみの瞳は
見えなかった
雪の幻が北の空に消えたら
月が追いかけて
星ひとつ、東の空に
町あかりは薄れて
朝が来る
街はまだ起きない
梅の花咲く
神社に行けば
異形の者の
時間の終わり
また来年ね
また会いましょう
夢の中へ
時の彼方へ
消えていく名残りは
朝日の影に




