10/22
月と雲と
あかるい月の夜に
晩秋の薄墨の雲が
宵空に広がっていました
金色の月は
雲から現れては
隠れて
山々の端や
すすきの原野を
照らしていきました
すすきの穂先に
光が宿ると
見えるでしょうか
とんぼの形をした透明な何かが
ふわりと飛んでいくのが
あれは月の光が結晶化した
クリスタルらしいのです
秋のさなかの満月の日に
生まれては消えていく
そんな幻想のいきものは
月夜の静かな草原を
みずみずしい好奇心で
ふわりと飛んでどこかに行って
暁の光とともに
消えてしまうらしいのです
ふわり、と




