プロローグ
特別ななにかになりたい。
口には出さずとも、心の中でそう考えている人は、きっと多いと思う。
画面の向こうにいるヒーロー。その姿を見て、自分もああなりたい。皆から褒められ、認められるような存在になりたいと、漠然とした憧れを抱いた経験は、誰にでもあるんじゃないだろうか。
憧れ。夢。ああなりたいという希望。
それはきっと、人が抱く当たり前の感情なんだろう。
だけど、時間が経てばやがて皆気付くのだ。「特別」には限りがあると。
「特別」というものには、なろうとしてなれない。選ばれた存在だから特別なのだ。
普通じゃないから、別の存在として扱われる。見られる。
それが「特別」だ。だからこそ、「特別」になれない平凡な人たちが憧れる存在となる。
幼い頃、僕こと東条秀隆はそのことに気付いた。
いや、気付かされたというべきだろうか。誰よりも近くにいた、誰よりも「特別」な存在だった妹によって、僕は自分が凡人であることを分からされたのだ。
妹の名前は、東条アリス。
輝くような銀色の髪。透き通るような青の瞳。妖精のような、圧倒的ともいえる可憐な容姿。
見た目だけでも他人とは違う「特別」であることは、きっと誰もが認めざるを得ないだろう。
それに加え、運動も勉強も彼女は誰よりもこなせる。人当たりもよく、常に誰かに囲まれていた。
事実、僕の通う高校でアリスの名前を耳にしない日はない。まだ入学して間もないというのに、学校一の美少女だとか学園のアイドルだなんて声も聞こえてくるほどだ。
誰もが認める「特別」。それが僕の妹、アリスだった。
「好きです、兄さん。私は貴方のことが、この世の誰よりも好きなんです」
――そんな妹が、今は僕を求めていた。
「誰にも渡したくない、渡さない。私の、私だけの……」
アリスと比べて、凡人でしかない僕を、「特別」なものを見るような目で。
その想いは、きっと間違っているというのに。
ヤンデレ依存義妹とヤンデレ執着幼馴染によるシリアスラブコメです
よろしくお願いいたします
読んで面白かったと思えてもらましたらブクマや↓から星の評価を入れてもらえるととても嬉しかったりしまする(・ω・)ノ