第4話 辺境の街テルミナス
ーーー禁忌の森入り口
「目覚めたようですね」
「「!!」」
木の枝を集め終わり、戻ってきたカグラは、目を覚ましていたケイネスを見つけ、そう話しかけた。
「・・・あんたが俺たちを助けてくれたのか。感謝する。俺はケイネス、こっちがフェルンだ」
「改めて感謝を。このご恩は必ず返させてもらうわ」
「俺はカグラといいます。そうですね、恩を返すというのであれば、一つ頼みたいことがあります」
「なんでしょうか。私のできる範囲であればなんでもやらせてもらうわ」
「ああ。俺もだ」
「そんなに身構えなくてもいいですよ。俺は一番近い街に案内してもらえればそれでいいので」
「ほんにそんなことでいいのか?」
「ええ」
「・・・わかった。ここから一番近いのはテルミナスという辺境の街だ。そこでいいだろうか」
「いいですよ。ちなみにそこでお金を稼げる場所ってありますか?」
「私たちも所属している、冒険者ギルドという組織があるのだけれど、そこだったら魔物を狩ったり、商人の護衛などの依頼をこなすことで報酬がもらえますわ」
「なるほど。ありがとうございます。では、そろそろ火をつけますか。“雷球”」
カグラは、火をつけるために魔法を使った。
「あっ、今更でなんですけど何か食べ物ありますか?」
「・・・ええ。干し肉があるので今日はそれを食べましょう」
「すみません、ありがとうございます」
カグラは、フェルンから干し肉を受け取り、火が消えないように木の枝を焚き火に放りながら食べ始めた。そして二人はそんなカグラの様子を見ながら小声で話し始めた。
「・・・おい」
「わかってるわ。今のはLv1の魔法ではあるけれど、詠唱をしていなかった。恐らく詠唱破棄のスキルを持っているわね」
「やっぱりか。それでどうする。こいつのことはギルマスに報告した方がいいんじゃないか?」
「そうね。先日の魔力の件に彼が関わっていようがいまいが、あの魔物を威圧だけで退けれるような存在は放置できないわ。森の変化と一緒に報告しましょう」
「わかった」
二人はカグラのことをギルマスに報告することを決め、干し肉を食べ始めた。
翌日、朝食を済ませた三人は、談笑しながらテルミナスに向かって道を歩いていた。
「そういえば、二人は何故あの森にいたんですか?」
「俺たちは、禁忌の森で発生した膨大な魔力の発生源とその影響について調べるためにあの森にいたんだが」
「禁忌の森?」
「知らないの?あの森は禁忌の森といって、他の地域に生息している魔物よりも上位の魔物が生息している危険な森よ。立ち入ることは禁止されてはいないけれど、余程の理由がない限り誰も入らないわよ」
「なるほど・・・。アルカードめ」
カグラは自分がどんな場所に居たのかを理解し、そんな場所に転生させたアルカードに対し、二人に聞こえないように愚痴を漏らした。
「二人とも襲撃だ。これは盗賊だな」
ケイネスは複数の人の気配を察知し、二人に報告したと同時に三人の前に十人の男が現れた。
「止まりな。悪いが、お前らの持ち物と女は全部もらってくぜ。男はいらねえから、ここで死んでもらうがな」
盗賊の中でリーダーであろう男がそう叫んだと同時に盗賊全員が武器を構えた。
「ここは俺がやろう」
そう言いながらケイネスは延震の戦斧を構えた。
「舐められたものだ。その選択を後悔しながらしね!」
そう言いながら盗賊が一斉にケイネスに攻撃を仕掛けた瞬間、ケイネスは延震の戦斧を振り下ろした。
「ふんっ」
振り下ろした延震の戦斧は盗賊のリーダーを両断しながら地面を砕き、その衝撃が盗賊を襲った。そして僅かに遅れて地面を砕いた衝撃が同じ威力で再度、盗賊たちを襲った。
「「「なっ」」」
二度の衝撃で体勢を保てず、倒れそうになっている盗賊に向かってケイネスは延震の戦斧を横に振り払い、運良く倒れ込んだ一人を除き、残りの盗賊は胴体を両断された。
「さて、あとはお前だけだな」
「待ってくれ!そうだ、俺たちが溜め込んでるものは全部やる!だから!」
「いらねえよ。お前のような野郎はここで死ね」
ケイネスは残った盗賊の首を刎ねた。
「まあ、こんなもんだろ。周りには他の気配はないからな」
「しかし、こんなところで盗賊に出くわすなんて運がないわ」
「まあ、いいじゃねえか。そろそろテルミナスに着くんだからよ」
「そろそろですか」
「ああ。街に着いたら冒険者ギルドまで案内するからよ。俺たちもギルドに用事があるからな」
「そこまでしてもらえるとは。ありがとうございます」
「いいのよ。昨日も言ったけれど、私たちは命を救われているのだから」
「その通りだ」
ーーー辺境の街テルミナス入り口
「ここが辺境の街テルミナス・・・」
カグラは目の前の門と街を囲む壁に圧倒されていた。
「何してるカグラ。行くぞ」
「ええ」
三人が門を通ると、一本の大通りがあり、そこをカグラは、歩きながら活気のある街並みを見ていた。
「活気がすごいですね」
「ここは辺境だから、冒険者や商人が多いのよ」
「なるほど」
三人はしばらく歩いていると、周りの建物より一回り大きな建物があった。
「あそこが冒険者ギルドだ」
「あそこが・・・」
三人は冒険者ギルドに入ると、騒がしかったギルド内が一気に静まった。
「おい、『舞姫』と『星墜』だ。二人揃ってるなんて珍しいな」
「それに、二人と一緒にいるあの黒いローブの人は何者かしら。背丈的には男っぽいけど」
「あの二人と一緒ってことは、相当の実力者だとは思うけどな」
周りにいる冒険者たちは、S級冒険者である二人が一緒にいる珍しさと、その二人と一緒にいるカグラの存在が気になっているのか小声で話していた。
「二人って有名なんですか?」
「まあ、S級冒険者だからな」
「S級冒険者?」
「冒険者にはE〜Sの階級があるの。私たちはS級だから、一番上の階級ってことよ」
「なるほど。お二人ってやっぱり強かったんですね」
「あなたの方が私たちよりもずっと強いのだけれど・・・」
フェルンの呟きが周りの冒険者に聞こえると、静かだったギルド内は一気に騒がしくなった。
「おい聞いたか。あのローブ、『舞姫』と『星墜』が二人がかりでも勝てないってことか!?」
「ありえねえだろ!S級が二人だぞ!」
「でも、もし本当なら、あのローブの人をパーティーに誘えれば・・・」
「おい、『舞姫』。流石に冗談だろ?そんな線の細いやつがお前らより、まして、俺らより強いわけがねえ!」
冒険者が騒がしくしていると、一人の男がそう叫び、その男の後ろから四人の武装した男が出てきた。