第3話 初めての異世界人
全体的にステータスを上げました。
ーーー禁忌の森
「我ながらなんて威力だ。やっぱりLv10の魔法は簡単に使えないな」
カグラの使った魔法はゴブリンの集落だけでなく、その周囲も消し飛ばした。しかし、カグラの魔法はそれだけではなかった。
「魔法が発動した範囲だけだが魔力が満ち溢れている。魔法が発動した後は、毎回こうなるのか?それとも、魔力が満ちることがLv10の世界の理に干渉するということか?まあ、考えても分からんものは分からんからな。日も暮れてきたし、今日は小屋に戻って明日また森の外を目指すとするか」
カグラは、記憶を頼りに小屋に戻っていった。
ーーー辺境の街テルミナス
禁忌の森から膨大な魔力を観測した翌日、ダグラスの前には、二人の男女がいた。
「さて、今日は呼びかけに応じてもらい感謝する。突然だが、二人には今すぐ禁忌の森に行き、昨日観測された魔力の発生源を調べてもらいたい。それに、あれだけの魔力が発生したとなれば、森に何かかしらの変化があるはずだ。最悪、発生源がなにかを突き止められなくてもいい。だが、森の変化だけは必ず見つけてくれ」
ダグラスが依頼の内容を伝えた。
「わかりました。最善を尽くします」
そう返事をしたのは、S級冒険者『舞姫』のフェルン。
「任せてくれ。だが、禁忌の森に行くんだ。報酬は期待してるぜ」
続いて返事をしたのは、こちらもS級冒険者である『星墜』のケイネス。
「では、頼んだぞ」
「さて、禁忌の森までは何日かかるのか覚えてないんだがフェルン、何日かかる」
「二日よ。急げば、一日ちょっとかしら」
「なら急ぐか。早い方がギルマスも助かるだろ」
「わかったわ」
ーーー禁忌の森入り口
テルミナスを出発した翌日、二人は禁忌の森の入り口に立っていた、
「・・・どうなってやがる。何度かこの森に来たことはあるが、感じる魔物の気配がその時よりも強い。それも複数だ」
「先日の魔力の影響でしょうね。しかし、魔物に影響を与えるということは、強力な魔物が生まれたということなのかしら。もしそうなら、最高位の魔物、竜の可能性が高いということになるわよ」
「仮にそうだとしても森の中もある程度調べなきゃならねえだろ。森の外からだけで判断はできないぞ」
「わかってるわ。でもどうするの?」
「・・・何体か狩るぞ。二人ならできるだろう」
「正気?」
「ああ。この森の魔物が進化しているならどの程度強くなっているかを確かめなきゃならねえ。もし倒せなくとも、逃げることはできるはずだ」
「・・・わかったわ。やりましょう」
二人は森の中に足を進めていった。
ーーー禁忌の森
カグラが小屋に戻ってから二日がたった。カグラは、森を進んでいると魔物ではない気配を察知した。
「この気配は・・・魔物じゃない。何の気配だ?行ってみるか」
カグラは気配のする方に向かった。
「・・・人間だ」
木の上からカグラが見つけたのは巨大な狼の魔物と戦う二人の男女だった。
「なんだこいつは!見た目は魔狼に近いが、全く別物だ!こんなにでけえのに攻撃が当たらねえ!」
「私の斬撃も通らないわ!剣の斬れ味、厚い鉄板も切断できるくらいには上がってるのに!」
魔物に攻撃が通用せず、二人は焦っていた。
「あの狼と二人のステータスみてみるか」
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種族:風魔狼
性別:オス
称号:
装備:
スキル:風魔法(Lv7)
威圧(Lv7)
身体強化(Lv8)
気配察知(Lv8)
気配遮断(Lv8)
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フェルン
性別:女
年齢:21歳
種族:人間
称号:舞姫
装備:流転の剣×2
風乗りの衣
精霊の雫
スキル:剣術(Lv8)
舞踊(Lv8)
身体強化(Lv6)
気配察知(Lv5)
気配遮断(Lv5)
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ケイネス
性別:男
年齢:30歳
種族:人間
称号:星墜
装備:延震の戦斧
魔鋼の鎧
スキル:斧術(Lv8)
身体強化(Lv7)
気配察知(Lv5)
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「あの狼に攻撃が効かないのも当然だな。単純にステータスに差があり過ぎる。さて、どうしたものか」
カグラは二人と風魔狼の戦闘に介入しようかどうかと考えていると、ケイネスに風魔狼の風魔法が直撃した。
「がっ!」
「ケイネス!」
ケイネスは後ろに吹き飛び、木に勢いよくぶつかった衝撃で何とか保てていた意識を失った。フェルンはケイネスが吹き飛ばされたことに動揺してしまい、その隙を風魔狼は見逃さず、魔法を放った。
「しまっ」
「流石にまずいな」
カグラはアイテムボックスから魔剣グラを取り出し、身体強化を発動させ、フェルンの前に降り立った。
「シッ」
カグラは目前に迫っていた魔法を魔剣グラで斬り払った。そのとき、魔剣グラは斬り払った魔法に込められていた魔力を喰らい、その魔力がカグラに流れ込んできた。
「これが魔剣グラの能力か。・・・それで、お前はどうするんだ?」
カグラは威圧を発動させながら風魔狼を睨むと、風魔狼は実力差を悟ったのか、森の奥深くに戻って行った。
「・・・さて、大丈夫ですか?」
「・・・ええ、あなたのおかげでね」
「さっき吹き飛ばされてた人も気を失ってはいますが生きてますよ」
「・・・あなたは一体」
「話してもいいですが、彼を回収してからでもいいですか。あの魔物と同程度の気配がまだするので、そのままにしておくと危険ですよ」
気を失っているケイネスを回収し、カグラとフェルンは魔物の気配がない場所まで移動することにした。
ーーー禁忌の森入り口
三人は魔物と出会わないように移動していたからか、森を出た時にはすでに、日が暮れていた。
「ここなら魔物もいないし大丈夫かな。日も暮れてきたし、今日はここで野宿になりますがいいですか?」
「ええ、大丈夫よ」
「では、焚き火に使えそうな木の枝を集めてくるので、少し待っていてください」
そう言ってカグラは森の中に木の枝を集めに行った。
(彼は一体・・・。私たちの攻撃が通用しなかった魔物を威圧だけで退けれるほどの実力を持っている存在は、他のS級冒険者にも数えるほどしかいないわよ。まさか、彼が先日の魔力の発生源だとしたら・・・、人間から進化しているとしたら、あり得なくはないわね)
フェルンはカグラが先日の魔力の発生源なのでは?と疑い始めていると、ケイネスが目を覚ました。
「ここは・・・森の外か」
「起きたわね」
「フェルンか。あの魔物は?まさか一人で殺せた訳じゃないだろ。まして俺を抱えながら逃げるってのはなおさら」
「助けてもらったのよ。その人は焚き火に使えそうな木の枝を集めに行っているけど」
「その人ということは一人か。だが信じられねえな。あの魔物を一人で殺したってことだろ。二人がかりでも無理だったってのに」
「その人はあの魔物と戦ってないわ」
「どういうことだ」
「威圧だけで退けたのよ」
「ありえねぇ!あの魔物相手にそんなことができる人間はS級冒険者でも数えるくらいしかいねえ!そいつらも人間から進化した本当の化け物だぞ!・・・まさか」
「そのまさかよ。私はそうだと思ってるわ。先日の魔力も彼が原因だともね」
「なんだと・・・」
「目覚めたようですね」
「「!!」」
声のした方を二人が顔を向けると、そこには木の枝を抱えたカグラがいた。
今回、初めて出てきた装備の説明です。
流転の剣:
剣を鞘にしまわず振り続けるかぎり、一振り毎に斬れ味が上昇し続ける。剣を鞘に戻すと、斬れ味は元に戻る。
風乗りの衣:
空中を数歩だけ踏むことができる。風が強いほど、踏める数は多くなる。
精霊の雫:
魔法に対する抵抗力を上昇させる。
延震の戦斧:
この戦斧が当たった衝撃だけでなく、同じ衝撃を僅かに遅れて再度発生させる。
魔鋼の鎧:
魔鋼で作られているので、鉄の鎧よりも軽くて頑丈。