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この異世界で人は信用できません。  作者: あけらんかい
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魔族、魔物、獣、獣人、小人、怪人、人間、その他種族。どんな種族もいるこの世界は、各種族が自分達の平和を求め他種族と日々戦争をしている。

およそ700年にも及ぶ長い戦に週末が来ないと、心の中で皆が思っているのであった。


そんな中森の中に1人で住む青年が家から出て風に吹かれながらこう言った。

「暇だな…よし、散歩でも行くか」

そう言うと青年は昼過ぎの森中を歩き出した。


彼の名は「ハル·クレア」人間である。

家は自分で作ったものであり、今年でハルは17になるがハル自身は自分の年齢を知らず、ましてや誕生日を誰かに祝われた事など人生で1度も無かった。

ハルは産まれてすぐ両親に自身の名前が書かれた紙を紐で軽くお腹に巻かれた状態で森に捨てられ、両親の顔は知らず森の中で1人で住んでいるのである。

そんなハルだが今までの人生でおよそ人やその他の種族の者たちと、関わりがなかった訳ではなく人間の町への行き方も知っており何度も立ち寄っている、それでも尚森の中に1人で住んでいるのはハル自身の意思であった。



ハルがしばらく森を歩いていると、山菜採りに来ていた20歳位の女性に出会い声を掛けられた。


「あ!ハル!」


綺麗で透き通るような金髪の彼女は名は「エリア·ヨネ」130を超えるエルフである。

彼女は今から15年前、その時も丁度山菜採りをしに森の中に入り昼過ぎ頃、近くの池から何者かが水浴びをする音が聞こえ、エリアは今までの戦場で培った技術で足音を最大限に消し少しずつ、慎重に、まるで肉食動物が獲物を逃がさぬように近付いた。

そして身を隠すために利用していた草むらを両手で左右に開き、その隙間から池の方を覗くとそこに居たのは成長期の狼1頭と2歳を迎える頃のハルであった。


その光景を見たエリアはすぐにハルを、人間の子供を助けなければとエリアの良心が身体を動かそうとする中、幾度もの戦場の経験や今までの人生での経験がエリアの脳内に走り、走り出そうとする自身の足を数秒止めた。

だがその数秒の間でエリアはハルとその狼が余りにも仲良く、そして楽しそうに水をお互いに掛け合っているのを観た。100を超える年月を生きてきた彼女だが、この様な光景を観るのは初めて故に混乱し更に数十秒彼女の身体を止めたのである。


エリアが衝撃的な光景に見とれてから事数十秒、狼が見られている気配に気付きエリアが潜んでいる草むらに向かい吠え始めた。ハルはエリアに気付いておらず急に吠え始めた狼を優しく撫で落ち着かせながら吠えている先、エリアのいる草むらをじっと見つめる。

エリアはその時自分が見られ吠えられている事に決して驚きも動揺もしなかったが、それでもピクリとも動かなかったのは水を掛け合っていたハルと狼の光景を見た今、狼への敵意もハルへの助けようという良心も無くなっていた為にどうすれば、自分は今どう動けばいいのか、なんて声を掛ければ…など様々な事を考えていた為動かなかったのではなく、エリアは動けなかったのだ。


そんな中狼を落ち着かせたハルはそっと振り返り狼の背中を二回、ポンポンと叩いた。すると狼も振り返り二人(頭)はエリアを背に池を去ろうと歩き出した。

その時エリアは森の中に子供が1人、そればかりを心配していた。ハルと狼が少し歩いた辺りでエリアは立ち上がり草むらから飛び出し右手をハルの方へ向け、ハルに向かって声を掛ける。


「待ってくれそこの君!少し話がしたい!」


エリアがそう言うとハルは振り返り、その時初めてエリアの姿を見た。2歳頃の子供が、ましてや森の中で1人で育った子にエリアの言葉が通じる訳もなく、ハルには目の前にいる彼女が何を言っているのか、何を伝えようとしているのか全くわからなかったが、自身に対して悪意や敵意が無いことは、ハルに向けられたエリアの右手と必死そうなその顔から何となく読み取ったのだ。

だが言葉が分からないハルはエリアを見ながら立ち止まる事しか出来ず、それを見たエリアは少し冷静になり言葉が通じてない事に気付き、どうしたものかと考える。

どうやって?何を?どう伝える?私はこの子に何をしてあげたいのか、あるいはして欲しいのか、少し考えエリアが導き出された答えは、両膝を地面につけ両腕を大きく開き優しい笑顔に、ほんの少し悲しい様な顔でハルに向かい小さな声でこう言った。

「おいで」

これであった。

エリアはこの行動を何かの考えがある訳でも何か意図がある訳でもなく、何となくとしか言いようがない行動であった。


その姿を数秒間じっくりと観たハルは少しづつエリアに近付き、ハルも何となくではあるが目の前まで歩くとエリアが両腕をハルの背中に回しギュッと強く、そして何よりも優しく、包み込むように抱きしめる。それに応えるようにハルも両腕をエリアの背中に回そうとする。

その状態がしばらく続き、とっくに狼はどこかに行ってしまったが数時間もの間、夕日が暮れる頃まで二人はそうしていた。



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