表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

第1章 記憶を辿り彼女を探す②

前回より、かなり期間が空いてしまい申し訳ございません。

これからは一定のペースで投稿していきます。

是非、なんでも良いので感想などあればお願いします。

雪乃美月ゆきのみつき

 そこに立っていたのは、幼馴染でクラスメイトの美月だった。

 春翔とは幼稚園からの付き合いで、よく家族ぐるみで一緒に遊んでいた。

 整った顔立ちに艶のある長い黒髪、深紅の瞳が輝いて見える。

 おまけに生徒会書記なもんだから学校中の人気者で、よく男子に告白されては断っている。

 誰かと付き合えばいいのになと、春翔はいつも傍観していた。


 「はーるとくん!」

 「珍しいな、美月が遅刻なんて。なにかあったのか?」


 被せるように彼女は答える。


 「うん、ちょっと野暮用でね……」


 誤魔化すように話題を変えた。


 「あ、ハル。月末の体育祭、何の種目に出るか決めた?」


 ”ハル”彼女は春翔をそう呼んでいる。


 「決めてないなら、私と同じ競技に出なさい! 勝負するわよ」

 「いや、まだ決めてない。そして、男女で一緒になる競技はクラス対抗リレーくらいだ。クラスメイトだよな?俺たち。正直、参加するのも億劫おっくうだ」

 「いつからか、本当面倒くさがりよね」

 「しょうがねえだろ」

 「うん……」


 三年前。

 春翔の母親が病気で他界した。

 父は元々単身赴任で海外を飛び回っているので、一緒に生活したことはない。

 母が重度の癌と診断されたのが亡くなる1年前。

 何度も何度も病院に通いつめた春翔は、母親の他界と同時に気力を失ってしまった。

 ただ、廃人のようになってしまった訳では無い。

 目標もなく、無難に1人で生活してきたのだ。


 「ごめんね、思い出させて。いつからか、なんて言わなきゃよかった」

 「いや、いいんだ。別に特別なことじゃない」

 「うん。優しいね、ハル。さ、学校着いたよ! 行こ、教室!」


 私立三鶴城高校。

 学校は小高い丘の上にある。

 進学校で生徒数もかなり多い。

 校門までの坂道を歩いて登ると、誰でも息が上がるくらいの坂道だ。

 大抵はバスで登ってくる。

 駅からバスに乗る者もいれば、近くに住んでいる者は途中からバスに乗る。

 自転車通学の場合は自転車を押して上がり、坂の途中の駐輪場に自転車を止め、そこからは校舎までエスカレーターが伸びている。

 通学時間はバスが生徒でごった返す。

 入学から一度も、春翔はそのバスに乗ることはなかった。

 これも遅刻の原因かもしれない。

 通学時間外はバスもガラガラで快適だからだ。

 いつもなら坂の下のバス停から乗車するが、美月と話をしていたので、二人で歩いて上がってきた。


 「春翔。分かってるわね?」

 「ああ。バレないように入るぞ!」


 玄関で靴を履き替え、階段を上がる。

 三階、そこが二人の教室だ。

 教室の前に到着し、二人は息を整える。

 もちろん、そう上手くいくはずもなく……


 「おい! おまえら!」

 ドアをそっと開け、しゃがんで入ったその瞬間。

 担任の伊藤がこちらを睨みつける。


 (そりゃばれるよな……)


 伊藤重利いとうしげとし

 通称、シゲ爺。

 彼らの担任だ。

 地理の担当教師で、よく学校の周りの地形の話を長々としている。


 「おまえら仲良く二人で登校か。それも、雪乃! お前は生徒会だろ? こんな奴に構ってないで、しっかりしなさい。あと、桜川。お前は放課後職員室に来なさい」


 呼び出された春翔。

 実はここまで毎日遅刻をして、呼び出されるのは初めての事だった。

 春翔は不思議に思う。

 

 (なにかやらかしたか……)


 丁度朝のホームルームが終わった所だった。

 チャイムが鳴り、皆一限目の準備を始めていた。


 「はーくん!」


 一人の少女が春翔に話しかける。

 白峰しろみねゆう。

 彼女は春翔の高校からの友達で、まだ付き合いは短い。

 何故か最初から春翔に懐いていた。

 身長が低く、茶髪のショートヘアで、まるで小動物の様な可愛さが彼女の魅力である。

 時折天然が炸裂するのもまた、魅力の一つだ。


 「はーくん! 昨日の夜はちゃんと寝れたかい?」

 「ああ、いつも通りな」

 「ふふふ、ゆうははーくんに聞きたいのです!」

 「なんだ? 朝っぱらから元気すぎるだろ」

 「元気が私のチャームポイントだもん!」

 「ああ、知ってる……」


 呆れ顔を見せる春翔。


 「はーくんは、昨日の夜、夢を見なかったかい?」

 「え……」

 「それはとっても怖い夢だったでしょー」

 「なんで知っ……」


 春翔は”なんで知ってるんだ”と言おうとしたが、途中で言葉が止まった。


 (なんでこいつ、知ってるんだ)


 春翔の脳内で昨夜の夢が蘇る。

 心臓が高鳴り、あの感覚を思い出しそうになった所でまた、白峰が話し始めた。

少しづつですが投稿していきますので、今後ともよろしくお願いします。

ぜひ、いいね・ブクマ等もしていただけると、大変嬉しく思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ