プロローグ
私の処女作になります。
文章や物語など至らない点が多数あるのは承知しておりますが、読んでくださると嬉しいです。
また、ご評価頂けると幸いです。
更新頻度は未定です。
少しづつですが、なるべく早く投稿していきます。
少年は目の前が歪んだ。
鈍く重い痛みが襲いかかり、思考力を低下させていく。
置かれた状況を理解できない。
しかし、痛みに襲われる寸前、自らの目で捉えた'それ'を理解するのに苦労はしなかった。
"紅い甲冑を着た何者か"が、少年に寄り添うようにして、腹に日本刀を突き刺している。
そいつは戦国時代の侍の様に面頬を着けているので顔が見えない。
性別も年齢も分からない。
腹からは大量の血液が流れ出ていた。
涙が溢れてくる。
アドレナリンが出ているのか、徐々に痛みが消えていき、視界が真っ白に変わった事に気付く。
視界を奪われた少年は、耳から入ってくる情報に縋り付く。
聞こえてきた音。
少年はその意外な音に驚きを隠せないでいた。
その甲冑野郎も泣いていたのだ。
薄れゆく意識の中、啜り泣く音に集中する。
(ああ、この甲冑野郎は女だったのか……)
啜り泣く声で性別が分かった。
紛れもなく女性。年齢までは分からないが、比較的若そうな声質のように聞こえる。
そして甲冑の奥から、もう二度と感じられないと思っていた、どこか懐かしい、昔を思い出させる香りがした。
(か、母さんの……香り?)
しかしながら異常である。
少年は放課後、自宅に帰る途中、休憩がてら自動販売機でお茶を買い、通っている高校と自宅の丁度真ん中くらいにある公園に立ち寄るのが日課だった。
お気に入りの休憩ポイント。
沢山の遊具が立ち並ぶ中、ベンチに腰掛け子供達がサッカーに明け暮れる姿をぼんやりと眺める。
少年は中学時代、サッカー部に所属していた事もあり、その景色を見るとリラックス出来た。
子供達のプレイを脳内監督するのが、いつもの楽しみ方である。
そしてお茶を飲み終わり、さあ自宅へ帰ろうかと公園を出た矢先、どこからともなく現れた甲冑女に襲われたのだった。
少年の意識が途切れる寸前、甲冑女が初めて言葉を発する。
「ごめんなさい……」
(なぜ謝る?)
聞き覚えのある声だった。
少年は薄れゆく意識の中でなんとか声を振り絞る。
「あ、あんたは……もしかして……」
少年の意識は虚しくもここで絶たれた。
それを確認し、甲冑女は再び声をかける。
「ごめんね、春翔くん……」