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カルミナ・グラーンツール
はじめに
本歌集は、とある教会に蔵書されていたものであり、「グランド・ツアー」に参加した遍歴学生と教授らによって作られた歌を後に再構成したものと言われている。本歌集にある歌の幾つかは当時の宗教的・文化的背景に基づく解説が必要な物と考えられるため、必要に応じて適宜解説を加える。
歌集の成立年は四か国戦争より一世紀から二世紀程後の時代と目されており、作品の中には、随所に当時の生活感を伝える表現があり、また、当時の学術的に重要な論争に対する皮肉のような歌も存在する。幾つか間違いを含んだ作品もあるが、これについても解説を加えたうえで、間違いの訂正を行う。
本歌集は三部構成となっており、【真面目】、【恋、愛】、【酒や遊び】という題目が付けられている。それぞれが旅の最中の記録として作られた歌と思われるが、その他にも、神や、文化や、社会に関する問題提起もさしはさんでいる。学歴のある人々によるため、歌の中にもやや偏見が散見されるものの、当時の人々の暮らしを楽しみながら、読んでいただければ幸いである。