5 修行の2ヶ月
転職が完了し持ち家もゲットしたので、これから魔法研究を始めようと思う。
執務室の机に以前買った魔法書を広げる。魔法書に書かれている内容を一通りチェックし、どの魔法を会得するか目星をつける。
「転移魔法、《ゲート》。これは便利そうだな」
訪れたことのある場所に一瞬で転移できる補助系統の魔法。
超級クラスだがマスターする価値は十分ある。
一つ目はこれに決定だ。
「擬人化魔法、《パーソナル》。動物を人間に変身させることのできる魔法か。シルバーシップに使えそう。これもありだな」
2つ目はこれに決定だ。
人化したら人間の食べ物も食べられるようになる、という記載が決め手である。馬小屋生活のシルバーシップにも旨いものを食わせてやりたいからな。
「とりあえずこの2つの魔法を覚えよう」
どちらも超級魔法なので習得までそれなりの期間を要するだろう。およそ2ヶ月ってところか。
「あの、シルディさん」
メイアが部屋に入ってきた。
「メイアか。どうした?」
「私も魔法を覚えたくて……。私の師匠になってもらえませんか?」
ほう、それはまた想定外のお願いだな。
「かまわないが、俺もほとんど初心者のようなものだぞ?」
「大丈夫です。シルディさんの勉強の仕方を横から見るだけで十分です」
「わかった。それでどの魔法を覚えたい? この中から選んでくれ」
魔法書をメイアに渡す。
メイアは渡された魔法書を眺める。
「私、魔法適正がDで魔力がCだそうです。でも魔法初めてなので初級魔法から覚えたいです。できたらその一つ上の下級魔法も」
ほお。並の冒険者よりもランクが高いな。努力次第で中級魔法も会得できそうだな。
「うーん……。初級は生活魔法のファイア、ウォーター、ウインドにします。下級は回復魔法のヒールにします」
「4つか。なかなか欲張りだな」
「えへへ。ガンバりますので!」
こうしてそれぞれの目標に向かって、俺とメイアの魔法生活が始まった。
それからというもの、俺たちは魔法に没頭した。執務室で魔法書を熟読し、外庭で実践を行う。そんな日々の繰り返し。
そして2ヶ月が経過する。
「はあはあ。やっと出来たぞ!」
俺は《ゲート》、《パーソナル》を習得した。
「良かったですね。さすがシルディさんです」
「それほどでもないさ。それにメイアもやるじゃないか。本当に4つとも覚えらたのだからな」
本当にすごいことだと思う。彼女は俺と違って家事もこなしてくれていたからな。
「頑張った甲斐がありました!」
メイアは満足そうに笑みを浮かべる。普段は物静かな彼女だが、明るい表情もするんだな。
「さて、2ヶ月立ったわけだが。ついに残金が0になった」
「え、そうなんですか!?」
「そういうわけでクエストを受けに行こうと思う。メイアも手伝ってくれるか?」
「もちろんです。私はいつだってシルディさんについていきますよ」
それは嬉しい言葉だな。
「それじゃあ冒険者ギルドに行くぞ」