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遂に発見しました

オルフェウスによって持ち込まれた厳かな雰囲気の中、貴族たちは一斉に頭を下げる。

説教台の前に立ったオルフェウス大神官が小さく手を上げると、貴族たちは席についた。

オルフェウスがちらっとティナに視線を送る。

小さくうなずいたティナはピアノを弾き始めた。

ピアノの音をBGMにオルフェウスが説教を始める。


(ほんとにいい声してるわ。さすが大神官ね)


説教の内容はあまり聞いていないティナだが、オルフェウスの声にはいつも感心していた。


「それではともに祈りましょう」


いつもの通り説教を締めくくる一言をオルフェウスが口に出す。

貴族たちはそれを合図に椅子から降りて跪いた。

静謐な時間が大聖堂を包み、ステンドグラス越しに差し込む日差しでさえ神々しく感じる。

祈りの時間が終わり、それぞれが雑談を始める。

今日の来訪者の中で一番高位であるハロッズ侯爵がオルフェウス大神官に近寄って行った。


「今日もありがたいお話を伺うことができて喜びに堪えません」


「熱心に聞いていただいてありがとうございました。今日はナサーリア様もご一緒なのですね」


「ええ、体調も良くなって一安心です。今日はどうしても一緒に行きたいと珍しく駄々をこねましてね」


「素晴らしいことです」


「私も驚きました。なかなか外には出たがらない子なのですが、どうしても教会に行きたいと言いましてね」


「ほう!何か理由でも?」


「理由は言わなかったのですが、行かなくてはいけないと真剣な口調で訴えるのですよ」


「何か思うところがおありなのでしょうね・・・神も喜んでおられることでしょう」


「ありがたいことです。それと・・・こちらを」


革袋を従者から受け取り、大神官に手渡すハロッズ侯爵。


「ありがとうございます。有意義に使わせていただきます。ご一家に神のご加護がありますように」


「こちらこそありがとうございます。それではこれで」


「お気をつけてお帰りください」


挨拶を終えたハロッズが娘の姿を探した。


「ナサーリア。帰るよ?こちらにおいで」


「はいお父様・・・少しお時間をいただけませんか?私・・・あの方とお話がしとうございます」


「あの方?ああ、ピアノの?」


そんな親子のやり取りを見ていたオルフェウスがハロッズに近寄った。


「彼女はティナロアと言います。さあ、お嬢様。ピアノを弾いてみますか?」


「大神官様。お心遣いありがとうございます。ですが私の拙いピアノなどお耳汚しでございましょう。ティナロア様の音色は素晴らしいですね・・・神の御声のように聞こえました」


「・・・神の御声ですか。ある意味その通りかもしれません。ティナさん、こちらハロッズ侯爵のご息女であるナサーリアお嬢様です。あなたとお話がしたいそうですよ」


オルフェウスがナサーリアを連れてティナの横に来た。


「お嬢様。私はティナロアと申します。ピアノにご興味がおありですか?」


ナサーリアはとても嬉しそうにティナに微笑みかけた。


「ティナロア様は聖女様ですね?」


「聖女?いいえ、私はただのピアノ演奏者ですよ?なぜそう思われたのでしょう」


「ティナロア様が奏でられる音色はまるで神の御声のようでしたから」


「まあ、ありがとうございます。お嬢様もピアノをお弾きになるのですか?」


「はい。お母様に教えていただいていますがまだどなたの師事も受けてはいません」


ナサーリアの言葉に返事をしようとしたときティナの頭に神の声が響いた。


『おい!ティナ!もしかしたら・・・』


『えっ?この子なの?』


『いや確信は無いが・・・可能性は限りなく高い』


『あんた・・・ロリコン?』


『お前なぁ・・・ロリコンとか言うな』


急に黙ってしまったティナをナサーリアは不思議そうに見ている。


「ティナロア様?」


「えっ!ああ、ごめんなさい。少しボーっとしてしまいました。えっと・・・」


『とりあえず仲よくなっておいてくれ』


『了解』


「あの・・・ナサーリアお嬢様。ピアノにご興味が御有りなら、私でよければご指導いたしましょうか?」


「本当ですか!うれしいです。お父様!私ティナロア様のピアノを習いたいです」


話の急展開に苦笑しながらハロッズ侯爵が口を開く。


「ナサーリア?本気なのか?」


「はい。私ティナロア様の音色に心を奪われたのですわ」


「ははは・・・そうか。心を奪われたか。オルフェウス大神官様、いかがでしょうか」


「私共に否はございませんよ?ティナは素晴らしい人です。ご推挙申し上げますよ」

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