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神のオボシメシということで

「神官様!ティナ嬢が!ティナ嬢が目覚めました!」


日ごろは走ることのないシスターが慌てた足取りでロージーの部屋に駆け込んだ。

ロージーの手を握っていたアランが立ち上がる。


「ティナ嬢が?ああ・・・神よ・・・ありがとうございます」


たった一日だったがピクリとも動かないティナをアランは心から心配していた。

自分の母親の看病のために疲労で意識を失ったのだから当然と言えば当然だが、アランは生きた心地がしなかった。

ロージーの手を離しティナが寝かされている隣室に向かう。

フェルナンド神官も後を追った。

知らせを聞いてオルフェウス大神官もやってきた。


「ん?この気配は・・・もしや・・・」


ティナの部屋に入るなりオルフェウス大神官が呟く。


「やはり・・・そうですか。私も感じています」


フェルナンド神官が胸の前で十字を切りながらオルフェウス大神官と目を合わせた。


「うむ・・・フェルナンドも感じるのか。なるほど確かにいらっしゃるな。この気配はティナロア嬢が目覚めてからか?」


「私も目覚めたと聞いて駆け付けたのでそこまでは・・・しかし朝方訪れたときにはありませんでした」


「ではやはりティナロア嬢は神の・・・なんと言ったかな・・・おつかい係だったか?それなのだろうな。しかしなぜ聖女とは違うのだろうか。普通神の御声を聞く者を聖女というのだが」


覚醒したことを自覚したティナが口を開いた。


「ああ、それは根本的に間違っていますよ。って言うか・・・ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。体は大丈夫なのですぐに起きますね」


そこにいた全員が慌てて起き上がろうとするティナを止めた。


「いやいやいやいや!まず水分を摂って。消化の良いものをすぐに準備させましょう。もう少しこのまま横になっていてください」


少し困った顔をしながらティナが言った。


「いえ、神のお言葉を聞きました。すぐにロージーさまの所へ行きましょう」


アランがすぐに反応してロージーの部屋へ向かう。

オルフェウスとフェルナンドに支えられながらティナも向かった。


「母さん!母さん!・・・ああ、神様・・・」


三人がロージーの部屋に入ると上半身を起こそうとしているロージーの姿が飛び込んできた。

ティナを椅子に座らせてからオルフェウスがロージーの枕元に跪いてお祈りを始めた。

ロージーも一緒に祈りを捧げ、ティナ以外の全員が同じように跪いた。


『ちょっと・・・なにこの状況。もしかしてあんたに感謝を捧げてるとか?』


『ああ、そうだな。恐れ入ったか?』


『バカじゃないの?あたしを誰だと思ってんのよ。恐れ入るわけ無いでしょうが!なんというか壮大な詐欺事案を目撃している気分だわ』


『おい!』


『ははは。まあ良いから。計画を遂行するよ!準備は良い?』


『おう!任せとけ!』


ティナはニヤッと笑ってからおもむろに口を開いた。


「えっ!おお・・・神よ・・・はい・・・はい・・・畏まりました。謹んでお言葉に従って行動いたします」


オルフェウス大神官とフェルナンド神官が同時に振返る。


「何かお言葉を賜ったのですか?」


ティナは慎ましい微笑みを浮かべて言う。


「神がロージー様にお時間を下さるそうです。今までの熱心な信心と清らかな行いに対する褒美だと仰っています」


アランが弾かれたようにティナに駆け寄った。


「神が・・・母に褒美をと?いったいそれは・・・」


「はい。神の御前で隠し事はできません。正直に申し上げますが、少々厳しい内容かと存じます。よろしいでしょうか」


「勿論です。何事も受け止めます。どうぞ教えてくださいティナロア嬢」


「本来ならばロージーさまのお命は本日で尽きてしまうのです」


アランがビクッと一歩下がる。

余命を宣告されたロージーは平静を保ち、二人の神官も穏やかな表情を崩さない。


「しかし、これまでのロージーさまの行いや、私を命を賭して守り抜いた勇気に対し、神は深く思われるところが御有りのご様子です」


『お前の方がよっぽど詐欺じゃねえか!』


頭の中で神の笑い声が聞こえたがティナは無視して続けた。


「母親思いのアラン様にも感心していらっしゃるようで、お二人に最後のひと時を賜るとの事です」


フェルナンドがその場で跪き再び祈り始めた。

目を瞑って滔々と喋っていたティナが薄目を開けてその様子を見る。


(ちょっとさすがに・・・ごめんね?みんな・・・)


「十日・・・今日から十日間、ロージーさまのお命を永らえてくださいます。その間に親子の時間を持つようにと。その代わりに・・・はい・・・畏まりました・・・私が・・・喜んで承ります」


オルフェウスがすぐに反応した。


「ティナロア嬢、神はなんと仰せなのですか?少し聞こえたのですが・・・気のせいかな」

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