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まさかの子沢山

持ち帰りたい歴史書の算段がついたティナは、もう一度昏睡状態になる方法を考え始めた。


(ベッドから落ちて頭を打つとか・・・病院内をうろついて階段から落ちるとか?)


顎に手を当ててうんうん唸るように考えていたとき担当医師が入ってきた。


「体調はどうですか?ちょっと診察させてくださいね」


「あ・・・先生。特に変わりはありませんが、足が動かしにくいですね。まあ随分寝たきりだったので仕方がないのでしょうけど・・・」


「そうですか・・・リハビリでも始めて見ましょうか。無理のない範囲で」


「時間が掛かりそうですね」


「無理をするのは禁物ですから・・・1か月は必要ですね」


「1か月・・・」


「まあ時間はたっぷりありますから、ゆっくり考えましょう」


「はい・・・」


手早く診察を終えた担当医は優しい微笑みを浮かべながら出て行った。

ふと窓を見ると美しい夕焼けが白いカーテンをオレンジ色に染めていた。


(あと1日しかない・・・)


そっと目を閉じたティナはそのまま眠ってしまった。


「ティナさん・・・ティナさん?大丈夫ですか?」


遠くで担当医の声がした。


(あ・・・私・・・眠ってたのね)


「先生・・・眠っていたようです」


「眠っていたというより意識がありませんでしたよ?薬を替えたのが良くなかったかな・・・明日は少し検査をしましょう。検査結果によってリハビリのスケジュールを組みますので」


「検査ですか・・・痛くないですか?」


「まあなるべく痛くない方法をとりますが・・・」


担当医の気まずそうな顔を見てティナは顔を顰めた。


(これはかなり痛いのね・・・)


「分かりました。頑張ります」


ティナが深いため息を吐きつつ部屋を出る医者を見送っていたらケヴィンが紙袋を手に入ってきた。


「ティナさん。ご希望のものです。冊子にしましたから読みやすいと思いますよ」


「ケヴィンさん・・・早業ですねぇぇ~凄いです!」


「いやぁそう言っていただけると嬉しいですが、秘書が有能だったという事でしょう。他にも何かご依頼事は無いですか?」


「いえいえ。もうこれだけで本当にありがたいです。感謝します」


「喜んでいただけてとても嬉しいです。ではここに置きますね?」


ケヴィンはニコニコして手を振りながら部屋を出た。

ティナは早々に冊子を取り出し頁をめくった。

最初の頁にはご丁寧にハーベスト皇帝の肖像画が綴られていた。


(あらぁぁ~ハーベストったら壮年になっても良い男~。何歳の時の肖像画かしら・・・)


ハーベストの肖像画の裏には誕生年から没年まで彼の歴史が大まかに記されていた。

没年から計算するとハーベストは60才まで生きたらしい。

当時にしては長生きな方かもしれない・・・そんな事を考えながら頁をめくるとハーベストを中心とした家系図があった。


「えぇぇぇぇ~」


ティナは大きな声で叫んでしまった。


「ハ・・・ハーベスト・・・あなた・・・どんだけ・・・」


家系図を凝視したままティナは微動だにしない。


ハーベストには正妃はおらず、側室ばかり25人の名前が並んでいた。

要するに週に一回休んだとしても日替わりで側室を呼べる態勢が組まれているという事だ。


「恐ろしい・・・ハーベストって絶倫なのね・・・」


ティナは側室たちの名前をひとつずつ確認した。


「私の名前が無い・・・という事は私たちは再会しないってこと?それとも私はこっちに戻ることを選んだのかしら」


ティナは少し残念な気持ちを抱きながらその先を読み進めた。


「ハーベストの血脈は続くのね・・・次の皇帝は?ん?コピーがブレてるわ・・・名前が読めない・・・まあいいか。私には関係ないし?」


家系図を見る限りハーベストの子供は男4人に女8人の合計12人だ。

成人しても帝国に残った男の子は2人、後の二人は近隣国の王配となっている。


「さすがに上手いこと廻してるわね・・・あら?次の皇帝の妃の名前って・・・アリア・レーベン・・・まさか!キリウスの娘?あらあら・・・ふふふ・・・キリウスもお父さんになるのね」


ケヴィンが準備してくれた冊子を胸に抱き、憂いを帯びた眼差しの美しい騎士を思い出してひとり悶えるティナだった。

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