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若い神官と神の啓示

「大変です!ロージー様が!早く・・・こちらに!」


アランが駆け出す。

ティナも後を追った。


「急に倒れられて・・・今神官様とお医者様をお呼びしています」


アランがシスターに支えられて苦しそうに顔をゆがめるロージーに駆け寄った。

どうすることもできずオロオロするティナの耳元で神の声が聞こえた。


『ティナ。この声は他には聞こえないから。お前も返事は頭の中でするんだ』


『ひえっ!驚いた!大魔神ってこんな事もできるの』


『教会の中だからね。いろいろ融通が利くんだ』


『なるほど・・・で?ロージーの容態は?』


『あと三か月は大丈夫だけど、もう動けるような状態には戻らない。息子を引き留めておいた方が良いだろう』


『そうなの・・・』


『息子が来るまではって思っていたのだろう。かなり無理してるから』


『母は強しってとこね』


『それでティナ。お前が看病してやれよ。教会にいる方が何かと都合が良いだろう。俺もこうやって話すことができるし』


『それは都合がいいけど・・・居ていいの?』


『今から来る神官に看病を申し出るんだ。俺からもかるく啓示を与えておくから』


『あんた・・・ホントに・・・神の力を何だと思ってるのよ!』


『お前にだけは・・・言われたくない』


頭の中で神と口喧嘩していた時、慌ただしい足音と共に美しい銀髪の神官が走り寄った。


「ロージー!ああ、こんなに顔色が・・・すぐに治療を・・・」


深い緑色の目が美しい若い神官だ。

ロージーを心から心配しているのが感じられる。

抱き起こそうとする神官を助手の神官が止めた。


「フェルナンド様。今は動かすべきではありません。医官の到着を待ちましょう」


「そうですか?まあ、あなたがそういうなら・・・うっ!あ・・・頭が・・・」


「どうされました?フェルナンド様?」


「‥‥‥‥いえ・・・あっ・・・」


「フェルナンド様?」


「いえ、大丈夫です。私は少し大神官様の所に行ってきます・・・」


ちらちらとティナを見ながら高揚した顔でフェルナンド神官が立ち去った。


(ああ、神の啓示ってのを受けちゃったのね?あんまり信用しない方が・・・)


大神官の部屋に向かうフェルナンドの背を見ながらティナは小さく十字を切った。

フェルナンドとすれ違うように医官が到着し、その場でロージーを診察した。

アランが心配そうに見詰めている。

医官が指示を出し、ロージーを部屋まで運んで寝かせた。

薬を投与されたロージーは静かに眠っている。

心配そうに見守る人達に向かって医官が言った。


「脳の病気だと思われます。大きな影を感じます。ここまで大きいと薬でどうこうなるものではありません。ご親族の方を呼ばれる事をお勧めします」


アランの肩がビクッと跳ねた。

ティナが後からそっと支える。


「私は息子です。親子二人だけの家庭でした。それで医官様、母はどのくらい持つでしょうか。意識は戻るのでしょうか」


「そうですね・・・意識は戻るかもしれませんが混濁する可能性が高いです。どのくらい持つか・・・難しいところですが・・・早ければひと月だと思ってください。会わせたい人がいれば早急に呼んだ方が良いでしょう」


医官の言葉にアランの目から涙が溢れる。

付添ってきたシスターたちは跪いて祈りを捧げている。

ティナはアランの背を撫でることしかできなかった。

ロージーが眠るベッドに跪き、手を握るアランに横でティナはどうすることもできず佇む。

小さなノックの後、静かにドアが開きフェルナンド神官が入ってきた。

先ほど一緒に居た助手の神官の他に年配の神官も一緒にいる。


「シスターロージーの容態は如何ですか?」


アランが涙を手の甲で拭いながら立ち上がった。


「神官様、ご心配をおかけして申し訳ございません。母は今落ち着いていますが、ひと月位の命だろうと・・・医官様が・・・」


「そうですか・・・ロージー・・・どうか最後の瞬間まで神に祈ってください。私たちも祈ります・・・」


ティナが遠慮がちに言った。


「あの・・・もし良ければ私とアラン様で看病をしたいのですが・・・教会に滞在することをお許しいただけないでしょうか」


フェルナンドと年配の神官がハッとした顔で向き合った。

年配の方の神官が口を開く。


「私はこの神殿で大神官をしておりますオルフェウスと申します」


「これは・・・大変失礼しました。私はティナロア・ランバーツと申します。幼い頃ロージー様に命を救われた者でございます」


ティナは美しいカーテシーを披露した。

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