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見目麗しき王子様

ティナは自室に戻り、机に向かって転生してから短時間で得た情報をメモしてみた。


(かなり逼迫した状態ね・・・まずお金を稼ぐ方法を考えないと)


現状の把握の次は今できることの整理だ。

階段から落とされた時にできたのだろう打撲跡が疼くように痛い。

気を張っていないと気を失いそうだった。

ドアのノック音で意識を取り戻す。


「はい。どうぞ」


ゆっくりと開いたドアの先にはこれ以上情けない顔は想像できないほどに萎れた父親、ランバーツ伯爵の姿があった。


「ティナ・・・ティナロア・・・弱い私を許しておくれ・・・お前に残してやれる金はこれだけしかないのだ・・・幸せになって欲しかったが‥‥私を恨んでいるだろうね?」


(はぁぁぁ!当たり前じゃないって言いたいけどついさっきまで当事者じゃなかったしね)


「お父様。仕方がない事だと理解していますわ。どうぞお体を大切になさって。伯爵夫人と二人のご令嬢に幸多き事をお祈りいたします」


「ああ・・・お前は何という優しい娘だ・・・お前の母そっくりだな・・・ティナ、できうる限り抗い逃げよ・・・それだけしか言ってやれない父を恨んでくれ」


「恨むなどと・・・仕方のない事だと存じます。どうかお父様お元気で」


「ああ、お前も」


小さな革袋をティナに渡しランバーツ伯爵は部屋を出た。


(情けない!本当の娘だったら思い切り罵倒していただろうけど・・・)


当面の生活費は手に入ったので今日はもう寝ることにした。


(神を呼び出してもっと情報を聞き出した方が良さそうだわ・・・まあ、明日にしましょう。時間はたっぷりありそうだし)


ティナは薄い掛布をめくり固いベッドに体を滑り込ませた。


窓から明るい日差しが差し込む。

馬の嘶きが遠くに聞こえたような気がしてティナは体を起こした。


(ああ、行くのね。まあお幸せにってとこかしら。私には関係ないけど)


窓から外を見ると豪奢な馬車に続いて三台の荷馬車が走り去るところだった。

夫人の実家であるアルベッシュ国の屋敷で療養生活を送るというふれこみで夜逃げ同然に出て行く伯爵一家を目で追いながら同情の念さえ抱いたティナだった。


「さあ!どうする?神でも呼び出しますか?」


首に下げたペンダントを強く握り気持ちを集中させた。


「出でよ!大魔神!」


「誰が大魔神だよ!普通に神だっつってんだろう!」


「なかなかノリがいいわ。嫌いじゃ無いわよ」


「なんか心配でずっと見てたけどなかなか酷い状況だったな・・・あれほどとは」


「ホント?知ってて黙ってたんじゃないの?」


「いや!マジで。知らなかったよ・・・で、何か用か?」


「まあ、色々大変だけど・・・とりあえず攻略ターゲットの容貌と名前を教えてよ」


にこっと笑った神がウインクすると転生前に見たイケメン王子が現れた。


「見た目はコレ。お前タイプだろう?名前はアルベッシュ国第一皇子ハーベスト・ルドルフ・ローリエ・アルベッシュだ。歳は23歳独身。現国王は隠居同然のため彼がかなりの決定権を持っている。婚約者はいるが未だに結婚はしていない。実はランバーツの正妻であるベラはアルベッシュの王族の出だ。まあ末端だがな。どう?ヤル気出た?」


「う~ん・・・ビジュアル的には問題無いけど・・・この家とは遠縁になるのね。でも婚約者ありってのがね」


「なんだ。意外と真っ当なこと言うんだな。そんなの関係ないっていうタイプだと思ってた」


「いや・・・浮気はいかんよ。浮気は。人を不幸にしてまで手に入れた幸せは薄っぺらい偽物だわ」


「へぇぇ・・・意外・・・」


「自由恋愛主義なわけ?」


「いや・・・俺は番に一途だよ?でもお前の生きてた世界では割と普通のことじゃん?」


「そうかもね・・・でも私は嫌!なので誘惑するよりお涙頂戴系のシナリオにしようと思う」


「まあ、その辺りは任せるけど・・・今のところ半年後にはここに来る。連合国であるベルツ王国が巻き込まれている戦争の火だねから救うという名目で進軍してくる。まあ虎視眈々と乗っ取りを狙ってると言うのが実情だけどね」

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