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マダムからの贈り物

「おはようございます」


「やあロア殿、ご苦労様です。マダムがお部屋でお待ちですよ」


「ありがとうございます。お話しが終わったらお掃除を手伝いますね」


「いえいえ、こちらは大丈夫です。それより何か美味しいものでも作るように言っておきましょう」


「それは楽しみです。では後ほど」


開店前の掃除時間だったクラブDには数人のスタッフしかいなかった。

仕事着を着ていない彼らはとても若く見える。


「おはようございます、マダム。今日も大輪のバラのようにお美しい」


「ありがとうロア。あら?なんだか今日は雰囲気が違うわね?もしかして?ふふふ」


「・・・‥‥‥マダム、お話しがあるとのことでしたが・・・」


「あら?話題を変えるのね?うふふふ・・・まあ良いわ。時間はたっぷりあるから詳細は後ほど聞かせていただく事にしましょう。ところで昨日は大丈夫だったかしら?」


「ええ、帰ると騎士の皆さんと数人の破落戸たちがにらみ合っていました。ビスタが交渉してくれていて、帰った時点ではテラはまだその場に出ていませんでした」


「そう・・・テラもなかなかやるわね」


「ハーベスト殿下が入って下さって押し戻そうとしたのですが、なんだかんだと粘るのでテラが出ました」


「摑まったの?」


「いいえ、ホンモノかどうか確かめるだけだと言うので会わせたというところです。まあ私の顔をハッキリ知っているわけでは無いので、黒髪と貴族然とした態度で納得していました」


「へぇ~テラも大したものじゃない?」


「ええ、本当に。私だったらあそこまで毅然と対応はできなかったと思います」


「本物より本物らしい偽物って・・・面白いわね」


「そういえばそうですね」


「でも・・・いよいよ時間が無くなって来たわ。おそらくあいつ等は屋敷を見張っているはずよ」


「ええ、今日も出掛ける時に人影を確認しました。まだ疑っているのでしょうか」


「おそらく騎士たちに紛れて抜け出すことを警戒しているのだと思うわ。人の動きは逐一ジャルジュの耳に入っていると思った方が良さそうね・・・そういう事ならロア、残念だけど今夜のステージを最後になさい」


「えっ!今夜ですか・・・」


「だって毎日同じ人間だけ夕方に出掛けているというのは目立つでしょう?」


「それは・・・そうですが」


「迷惑をかけるなんて考えている?」


「はい・・・マダムには何から何までお世話になって・・・」


「あなたの後釜の事なら心配ないわよ?もう決まってるの。後で紹介するわ」


「ああ、そうなのですね・・・少し安心しました」


「大丈夫よ。今度の人は正真正銘の男だし、かなり見目麗しいわ。ピアノの腕は・・・まあ許容範囲というところかしら」


「正真正銘の・・・ははは!それは何よりです」


「そうよ、だから心配しないで。自分の事だけを考えなさいね」


「ありがとうございます。それでは・・・急ですが明日には出ます」


「それはまた・・・あの美しい王子様を置き去りにするの?」


「これは・・・予感というか・・・ハーベスト殿下達は明日の朝ご出立になると思います」


「予感?」


「‥‥そんな予知夢を見た?」


「予知夢?」


「ええ・・・‥‥」


「まあ良いわ。言えない事などたくさんあって当たり前だわ。それじゃあ・・・あの子にも旅の準備をさせましょう。明日の何時頃かしら?」


「昼に出る駅馬車を使いたいと思います」


「わかったわ。間に合うように行かせるから駅で待ち合せましょう・・・旅費とかは大丈夫?」


「はい。お陰様で多少は貯えがあります」


「そう、それなら安心ね、それとこれはあなたの物よ」


そう言うとマダムラッテはビロード張の箱を取り出した。

箱を開けたティナは驚いた。


「マダム!これは・・・」

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