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恥ずかしい痕跡

(やっぱりバレてる?)


いつもと変わらない景色なのに、どこかぎこちない空気が流れるロビーでティナは気まずい雰囲気を感じていた。


(声?声出てた?そんなに?)


誰と目が合っても二秒以上は合わせない。

ビスタもリアもティナと目が合うと頬を染めて目をそらす。


(えぇぇぇぇぇ~!なになになになに!)


そう考えて耳まで赤くしたティナに元気よく声を掛けたのはテラだった。


「おはようございます・・・ってロアさん?それ・・・ヤバくないですか?」


「えっ!な・・・何が?」


「それですよ。首筋の・・・熱くしたタオルで叩くと消えるらしいですよ?研修で習いました。姐さんたちもやってましたし」


「研修って・・・」


「お仕事のですよ。それにしても・・・」


「な・・・何なの?(もしかして・・・キスマーク?)」


「体中にあるなら手伝いましょうか?」


前世では経験豊富なティナもこの言葉には参った。

体中の血が沸騰したような気分になって少し目眩がした。


「大丈夫ですよティナロアお嬢様。手伝う必要があるなら私がやりましょう。お前らも文句は無いな?まあ、そういう事だ。理解と善処を求める」


いきなり現れたハーベストに向かってロビーに集まっていた騎士たちが立ち上がり同意の意味の礼をした。

それを見て笑ったテラがハーベストに優雅なカーテシーを披露した。


「ハーベスト殿下、心よりお礼と感謝を申し上げます」


「お礼?」


「ええ、お礼です。私の大事な雇い主をどうか幸せにしてやってください」


ニコッと笑ったハーベストが胸に手を当てて礼を返した。


「お任せください。ティナロアお嬢様」


その光景を見ていたキリウスが大きな音を立てて手を叩き、全員を現実に引き戻した。


「さあさあ!お前たち!さっさと食って仕事にいけ!」


一瞬で戻った日常にティナは胸を撫でおろした。


(そんな盛大なキスマークなの?)


そっと席を外し自室に戻ったティナはワンピースを脱ぎ全身をチェックした。


(蜂の大群に襲われたみたい・・・ってかハーベスト!どんだけぇぇぇぇぇ!)


お湯を貰うべくティナは厨房に急いだ。


ビスタが気まずそうに笑っている。


「お嬢様・・・ハーベスト殿下はお嬢様を連れて行って下さるのでしょうか・・・私は心配で」


「ビスタ・・・ありがとう。また心配させてしまったわね。でもこれは私が望んだことなの。それに私はハーベスト様と一緒に行くつもりは・・・無いわ」


「えっ!お嬢様・・・それは・・・」


「こんな事を言うとあなたに怒られるかもしれないけど、ハーベスト様とのことはほんの一夜の過ちにするべきだと思うの。だってそうでしょう?ハーベスト様には婚約者がいらっしゃるわ。本来なら一度きりだって許されることではないわ」


「それはそうかもしれませんが・・・貴族の結婚はそもそも政略結婚ですから、そこまでご自分に厳しくされる必要は無いのではありませんか?」


「確かにね・・・ではビスタは私がハーベスト様について行って私の母親と同じ道を歩むことを良しとするの?」


「それは・・・そうですね・・・あの方は・・・リリア様はいつも悲しそうでしたね」


「それに私はもうティナロア・ランバーツ伯爵令嬢ではないわ。ただのティナよ。一緒になんて行けるわけがない・・・」


「お嬢様・・・」


「ビスタ・・・私ね、近々王都に向かうわ。ハーベスト様たちがこの屋敷に滞在されている間はあの男が来ても怖くは無いけど・・・もし何らかの理由でハーベスト様たちが急に出立される事も想定するべきだと思うのよ」


「そんな事がありますかね?」


「備えあれば憂いなしよ。もし急なご出立になった場合、その日のうちに私も出るわ。後のことはお願いね・・・お店のことも、リアの事も・・・ビスタだけが頼りなの」


「お嬢さま・・・お任せください。店のことは順調ですしリアもジャンも張り切って働いています。私の部屋も用意してくれていますから、どうか安心してください。それよりも私はお嬢様の事が心配で・・・」


「私は大丈夫。一度死んで生まれ変わったようなものだから。怖いものが無くなっちゃったの」


「確かにお嬢様はあの日を境に人が変わられましたね・・・」


「そうよ。人が変わったの。だから大丈夫よ!」


お湯を貰うことも忘れてティナはビスタを励ました。

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