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頭を打ったから変わったわけではありません

トランクの上にクッキーとカップケーキが山のように積まれ、ベニスがケーキに手を伸ばしていた。


「何よ!何か文句でもあるの?」


「あるわよ!あんた、わたしに酷いことしたじゃないの!謝ってほしいわ」


「はぁぁ?あんた・・・頭打っておかしくなったんじゃないの?いつものようにオドオドしながら俯いてればいいのに」


「頭打って生まれ変わったのよ!もう昔のティナロアじゃ無いからね!謝ってもらうわよ」


「‥‥‥‥お姉さまに言いつけるわよ!」


「言えば?怖くもなんともないわ!ってか・・・あんた食べ過ぎじゃない?少しダイエットしないとドレスがきつそうよ?」


「‥‥‥あんたには関係ないでしょ!」


「関係ないけどあんたのために言ってんの!痩せないとモテないよ?」


ベニスは手からポロっと食べかけのケーキを落とし目に涙を浮かべて走り去った。


(なにあれ?)


手のついてないカップケーキに手を伸ばしかけたとき部屋の外にドタドタと足音が響いた。

バンっと乱暴にドアが開かれケバケバ娘が入ってくる。


(おお~真打登場かぁ?)


「ちょっと!ベニスを虐めたってホントなの!あんたが?妾の子のあんたが?ふざけんじゃないわよ!」


「そうよベラお姉さま。この女ったら私に痩せないとモテないって・・・悔しいわ!」


「何てこと!失礼にもほどがあるわ!謝りなさい!」


「えっ?あんたベニスが今のまま太ってて良いと思ってるの?自分が引き立つからかしら?だとしたらその方が酷いんじゃないの?それにベニス、今のままじゃ健康にも良くないと思うわよ?」


「べ・・・べつにベニスに引き立ててもらおうなんて・・・あんたホント腹が立つ女ね!まあいいわ。どうせあんたの顔を見るのも今日が最後だし。だからそんな態度に出るのでしょう?まあせいぜいヒヒおやじの慰み者になっていればいいわ!」


「どういう意味?」


「何言ってるのよ!あんたも納得したじゃない!もう忘れたの?」


「うん。忘れた。教えて」


「バカだとは思ってたけど・・・この家は売りに出されるのよ!あんたというオマケ付きでね!屋敷とあんたで総額いくらになるか知ってる?私達がかなりの贅沢をしても当分は楽しめるわ!まあいかに妾腹の子でも一応伯爵令嬢だものね。少しくらいは付加価値になったのだから感謝すると良いわ!」


「それって・・・もう売れちゃったの?」


「さっきあんたがお茶を持って行ったでしょう?あの人が仲介人よ。今頃お父様が契約をし終わってるはずね。だからあんたの人生はもうおしまいなのよ!」


(マジかよ・・・神の野郎!隠してやがったな!)


「で?いつ出て行くって?」


「明日の朝よ。この領地はもうすぐ隣国の兵が入って来るわ。同盟を結んでいる国だといっても危険極まりない連中のはずよ。まあせいぜい売られる前に殺されない事ね!」


「はぁぁぁ・・・明日までいるの。早く行けばいいのに・・・」


「せいぜい強がっていればいいわ!ああ、そうそうお父様ったらあんたに甘いから、少しだけでもお金を置いていくつもりのようね。まあお母さまが許さないとは思うけど。殺される前に野垂れ死にかしら?いい気味だわ!」


そんないい合いをしていたらビスタがお茶を運んできた。

入るに入れずオドオドしている。


「ビスタ、こっちに運んでちょうだい」


「はいお嬢様」


「ねえビスタ、この家に残る使用人は何人いるの?」


「私と女中のリアの二人だけです」


「そう・・・二人の給金はどうなっているの?」


「この先の半年分いただいております」


「じゃあ未払いは無いのね?半年分ってことは半年したら辞める予定ってことね?」


「いえ・・・それは・・・」


「良いのよ。義母様が半年くらいで買い手がつくと踏んでいたのでしょう。もう下がっていいわ」


トランクの上にトレイを置いてビスタは下がって行った。

部屋の外からティナに向けた憐みの視線が痛かった。


「まあ、お茶でもどう?お菓子もた~っぷりあることだし。もう一生会うことも無いでしょうけど、半分は血は繋がってる姉妹だものね」


「フン!あんたホントに頭打っておかしくなったようね・・・まあいいわ!早くベニスの部屋から出て行きなさい!あんたとお茶なんてまっぴらだわ!」


「はいはい、じゃあね」


大きくわざとらしいため息を吐いてティナは部屋を出た。


(どうりで家具も何も無いはずだわ。全部売り払ったのね・・・究極の没落貴族ってこういう末路よ。それにしても酷い父親・・・まあ現世でも同じようなものだったけど)

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