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神の作法

なんとか解決策が見つかったので久しぶりに神に話しかけてみる。


「出でよ!大魔神!!」


「へいへい。何か御用でございますかね?」


「もっとそこはさぁ勢いよくさぁぁ・・・掛け声とか合言葉的なヤツをさぁ」


「なんだよそれ。で?何か進展があったのか?」


「あったよ。例のティナロアお嬢様がヒヒおやじに売り飛ばされるって話で」


「ほぉ?逃げるしかないかもって言ってた話だろ?どういう展開?」


「うん。私がピアノマンやってるクラブのマダムが、私に似てる娼婦志願の子を見つけてきてね~替玉にしてくれそうなの。でもその子に悪いなぁって・・・ちょっと参ってる」


「まあ気持ちは解るよ・・・でもその子って攫ってきて無理やりってわけじゃないんだろ?本人が納得で金の方が良いって言うんだったら・・・現実問題として娼婦になってでも金が欲しいって子もたくさんいるわけだし」


「まあそうなんだけどね・・・なんかさぁ・・・」


「気にすんなよ。本人がいいって言うんだろ?」


「うん・・・でね、貴族令嬢としての仕草のレッスンをすることになったんだ」


「そうだな。何回かはバレないようにしないと面倒なことになるかもしれないからな。でもあまり時間が無いだろ?大丈夫か?」


「そうなのよ。たぶん難しいと思うわ。そこで大魔神の登場なんだけど」


「何させようとしてる?」


「私につけてくれたチートをさぁ・・・」


「ああ、それはムリ。あれは転生する過程で入れ込まれるものだから」


「そうかぁぁぁ・・・」


「まあそのヒヒおやじってのはさぁ、要するにイタシタイだけなんだろ?食事に連れて行ったり夜会に行くわけじゃ無いんだから、そんなに広範囲で考える必要は無いんじゃない?」


「あっ・・・そうか。要は押し倒されて無理やりされる伯爵令嬢を演じて貰えばいいんだよね」


「そういう事。だからコアポイントは話し方だろうな」


「お止めになってとか言ってシクシク泣いてりゃ良いかな」


「う~ん。そもそも無理やりっていうシチュエーションが無いからな・・・神の世界では」


「あら?完全同意の合体なわけ?」


「おまえ・・・合体とか言うな!」


「ははは!照れてやんの!」


「神を揶揄うと天罰下るぞ!」


「ジョークよ!ジョーク」


「お前・・・ちなみに神は合体しない。心を通わせて手を強く繋ぐのだ」


「えッ!キスも無し?」


「・・・‥‥もういい・・・」


「ごめん!ごめんてばぁ~。悪かったわよ・・・許して?」


ティナは小首をかしげて手を合わせた。

神の顔が赤く染まる。


「だから・・・もういいって・・・他にも用があるのか?」


「うん。一回あっちの世界に戻るって話なんだけど、王都に行ってからの方が良いかな」


「う~ん・・・お前が言ってたマダムなんとかの身代わり作戦ってちょっと安易過ぎるような気がするんだ。結果を数日隠れて様子を見るっていうのはどうだ?その間に行ってくるってのも良くないか?」


「その間この体はどうするの?」


「こっちの時間軸なら2日位のもんだろう?気を失って担ぎ込まれた診療所でそのまま寝かせてもらっとけば?まあこの街に戻ることは無いと思うが、なるべく後腐れの無いようにしとけよ。じゃあ俺は帰るわ・・・頑張れよ?」


「うん。また呼ぶね」


すうっと神が消えた後に残る光の粒を目で追いながらティナは浅い眠りについた。

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