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それは退職金代わりです

「ええ、聞いていますよ侍女仲間から。麗しのピアノマンに夢中なご令嬢がロア様にひと目会いたいと並んでおられるそうですね」


「リア!揶揄わないでよ。仕事だと思って愛想振りまいてるんだから。まあ・・・狙ってるけど・・・」


三人はフフフ・・・と悪人面をした。


「ではお嬢様を中心に食堂経営を始めるということですな?」


「いいえ、できればビスタとリアでお店は廻して欲しいの」


「私達二人でですか?」


「あの店はビスタとリアに渡せる退職金だと思って頂戴。それにリアの婚約者も入ってくれれば万全だと思うのよ?」


「えっ!お嬢様。そんな・・・それは有難いお話しですが、お嬢様はどうされるのですか?」


「だってほら。私は売られてるじゃないの。ここからは動けないわ。って言っても絶対集金だけして回避するけどね」


「何かプランをお持ちなのですね?」


「勿論よ。まあ、多少は賭けになるけど。残りの半金が送られた事を確認したら行動を起こすわ。その時には二人とも既に辞めている事が重要なのよ。知らぬ存ぜぬで通せるでしょう?だから早いところ食堂を始めてほしいの」


「お嬢様・・・」


「大丈夫だから任せておいて。キリウス様のお話しだと今日中にはお店の体裁は整うそうよ。明日の朝食がここでお出しする最後になるわ。騎士の皆さんも食堂で食事をなさって、ここにはお風呂と寝るだけに戻られる事になるの」


「ではランチタイムが終了したら一旦戻ってお風呂の用意。またお店に帰って夕食の準備という事ですな」


「それは忙しいですね。私すぐに彼に相談してきます。大丈夫!頑張っていつかは食堂を始めたいって話していたので、お嬢様のお陰で計画が前倒しになるのですもの。今日にでも辞めさせて引っ張ってきます!」


「まあリア!頼もしいわね。ビスタのこともよろしくね?」


「勿論ですわお嬢様。さあ!叔父さん!三人で頑張ろうね」


「良いのかい?なんだか新婚夫婦に割り込むような気分だが」


「何言ってんのよ。叔父さんは私の大切な家族よ?」


「ああ、精いっぱい頑張るよ。それにしてもお嬢様・・・あんなに弱弱しくて虐められても抵抗もできなかったお嬢様が・・・お強くなられましたね」


「ええ、あの日から変わったの。頭を打ってね、神様にお会いしたのよ。本当は死んでたのに戻してくださったの」


「それはそれは。では生まれ変わって強くなったという事ですな?」


「ええ。そうよ」


本気にしていないビスタとリアは楽しそうに笑っている。


(大筋ではホントなんだけどね)


ティナはクスっと笑って肩を竦めた。


(そういえばこのところ大魔神と話てないわね・・・ってことは聖女はまだ見つからないのか・・・何やってんのかしら。あのウスラトンカチのスットコドッコイは)


ティナが神の悪口を呟いていたらビスタが言った。


「ほんの数か月前までのことを考えたら地獄から天国に行ったような気分です。あの時はティナロアお嬢様に対するあまりの仕打ちに怒りで震えていましたから」


「そうね、叔父さん。恐ろしい決心をしていたものね」


「ああ、もしも本当にお嬢様があの汚らしい男の手に渡るなら、そいつを刺してお嬢様をお連れして逃げようと思っていました」


ティナは驚いた。


「まあ、ビスタ!そんな事まで考えてくれていたの?ありがとう・・・ありがとうね。二人とも。本当に・・・」


前世でもここまで自分の事を考えてくれた人などいなかったと思い、ティナは涙が止まらなかった。

その後三人は屋敷から持ち出す調理道具や食材などを話し合った。

あの襲撃の後なので今日と明日はクラブも臨時休業だ。

ぽつぽつと帰ってくる騎士たちの食事の世話をしながら久々に神を召喚してみようかとティナは考えていた。

ゆっくり湯船に浸かると疲れもとれる。

髪を乾かした後、ベッドに腰かけてティナはペンダントを強く握った。

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