表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/182

騎士たちの活躍

壊された店内を片づけていた騎士たちが一斉に礼をとった。

厨房からティナが顔を出す。


「まあ、ハーベスト様!ご視察ですか?」


「いいえ、あなたの顔を見に来たのですよレディティナ」


「恐れ多いことでございますわ。それに私このような身なりで・・・恥ずかしいので見ないでくださいませ」


「ティナは何を着ていても美しいですよ?」


「まあ、ハーベスト様ったら・・・口説きなれておいでだわ」


騎士たちが笑いをこらえている。

キリウスが空かさず口を出した。


「そうですね。一番近くで常にお仕えしている私としては否定はいたしませんが・・・片付けの方は進んでいますか?」


「はいお陰様でサクサクと。後は壊れたテーブルや扉などを直すだけですわ。でも今回の騒ぎで修繕依頼が多いらしく、大工さん達が足りないみたいなのです。かなり遅れるかもしれません。間に合えば良いのですが・・・」


最後は呟くようにティナが言った。

ハーベストとキリウスは眉間に皺を寄せて顔を見合わせた。

気を取り直すようにハーベストが口を開く。


「騎士たちは修繕作業にも精通していることをご存知ですか?わが国では近衛も含め騎士の奉仕作業に教会の修繕も含まれているのですよ?」


「騎士様がですか?」


作業をしていたひとりの騎士がティナに向かって言った。


「そうです。私たちはなんでもやります。大工仕事も左官仕事も一通り仕込まれるのです。命令があれば橋でも道路でも作れますよ」


「まあ!頼もしいですわ!でも皆さま事後処理や国境警備などでお忙しいのでは?」


キリウスが笑顔で話を引き取る。


「国境警備は数人で向かえば良いでしょう。今回の事で一掃できたと考えています。この後は市街地の復旧支援に人員を割く予定ですから」


「それは大変有難い事ですわ。住民になり替わりお礼を申し上げます。本当なら我が国が真っ先に動かなければなりませんのに・・・」


「いえいえ、こちらの国が手が回らないから私達隣国に要請があったのです。ですから私たちが支援することになんら問題は無いですよ」


ティナは申し訳なさそうな顔をして上目遣いにハーベストを見た。


(大サービスですよ!ハーベスト様)


「っっつ・・・ティナ・・・その顔は・・・反則です!」


ハーベストが頬を染めて口に手を当てた。

その様子をキリウスが冷めた横目で見ている。


(まあ、キリウスの悪い顔ってステキ・・・)


紆余曲折はあったが、当初描いた通りに進んでいる事を確信したティナは心の中でキリウスに負けないほどの悪い顔で微笑んだ。


咳ばらいをしたハーベストがキリウスに向かって言った。


「どのくらいで大まかな復旧が見込めるか?」


「ざっと見て回っただけですが廃材処理も含め一週間というところでしょうか」


「そうか。ではそのスケジュールで頼む」


「畏まりました」


「この店を優先的に」


「仰せのままに」


ティナが慌てて止める。


「ハーベスト様!ここはご主人が怪我をされておりますからすぐには再開できません。どうぞ他の皆様を優先して差し上げてください」


ハーベストが予想通りの反応を見せたティナを愛おしそうに見詰めた。


「レディティナ、それは違います。働く人間には休息と食事が必要ですから。まずその場所を確保するのです。確かに店主たちは動けませんから、ティナがそれをされてはいかがですか?」


「私が?仰ることは理解できるのですが・・・あっ!ではビスタとリアをこちらに寄こしましょう。皆様もここでお食事していただくことになりますが・・・いけませんか?」


「勿論大丈夫です。それが一番効率的ですしね。キリウスはどうだ?」


キリウスが微笑み乍ら大きく頷いた。


「では決まりだな。そうと決まればお前たち。今日中に完成させろ」


「はっ!」


「後で応援も送ってやる。ティナはそろそろ帰りましょう。ビスタ達にも話さなくてはいけないでしょう?」


そう促されたティナは後ろ髪を引かれながらも、騎士たちの明るい笑顔に見送られ帰途についた。


ハーベストとキリウスは復旧作業計画を練り、ティナとビスタとリアは食堂の運営について相談した。


「ビスタ。あの店のご亭主はたぶん復帰できないと思うの。お医者様にも確認したけど歩くのも大変だって・・・」


「それはいけませんね。ではお嬢様は違うお仕事を探されるのですか?」


「いいえ。もう仕事はしないわ。あの店を買い取ろうと思うの」


「えっ!そんなお金が?」


「大丈夫。これでも休みなくずっと働いてきたのよ!それに貴族のお嬢様方に気に入っていただいてたくさんプレゼントも貰っているの。それを売ればなんとかなるわ」


リアがニヤニヤしながら口を挟んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ