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夜会の後で

パーティー会場の壁際でティナはハーベストの姿を探した。

背も高く輝くような金髪の皇帝ハーベストはどこにいても目立つ。

各国の首脳やその令嬢たちに囲まれ、美しい微笑みを浮かべて対応しているその姿は神々しささえ感じる程だった。


思えば神の願いとはいえ、あのハーベストと一回寝てみたいなどと考え、実行したあの頃の自分の行動力には恥ずかしさしか無いなぁと考えていた時、ベルツ王国第一王子ユリアが近寄ってきた。


「やあティナロア嬢、先ほどは挨拶だけで失礼したね。元気そうで何よりだ」


「まあユリア殿下もますますお元気そうになられて。素晴らしいことですわ」


「ああこれもティナロア嬢とナサーリアのお陰だな。あなたが考案してくれたこの車椅子と、ナサーリアの祈りでここまで来ることができたよ。改めてお礼を言わせてほしい」


「そう言っていただけるだけでも幸せですわ。ところで国王陛下のご容態は如何です?」


「うん、悪い状態で安定しているというところかな。今日明日でどうこうなるような感じではないが、このまま回復しない事も十分考えられる」


「そうですか・・・」


「だからね、重臣や叔父上達とも相談してね。今回の件が落ち着いたら立太子をして一年後には即位する予定なんだ」


「それはおめでとうございます」


「ありがとう。キアヌも頑張ってくれているし、私も命の続く限り国王としての責務を全うする決心がついたよ」


「ユリア殿下でしたらベルツ王国も安定しますわね。国民の一人として心より感謝申し上げます」


「ティナロア嬢にそう言ってもらえると自信になるな。ところで、キアヌが迷惑を掛けたそうだね?あいつなりに必死だったのだと思う。許してやってほしい」


「迷惑などと・・・ありがたいお言葉をいただきました。それにこれからは同志として一緒に頑張ることになりましたし」


「ああ、そう聞いているよ。キアヌも嬉しそうだった。これからもよろしくねティナロア」


「私にできることでしたら全力で」


二人は顔を見合わせて笑いあった。

その時ふっと照明が変わり、楽団の演奏が始まった。

ナサーリアがユリアの側に来た。


「殿下、踊りましょう?」


「ああナサーリア、私に君と踊る栄誉を与えてくれるのかい?」


「はい喜んで」


二人はホールの中心を避けた場所に移動していった。

ナサーリアが車椅子に座ったままのユリアの手を取り左右に体を揺らしてリズムを取っている。

そんなナサーリアを愛おしそうに見上げながら、ユリアも楽しそうに体を揺らしていた。

楽しそうに踊る二人を見ながらティナは少し涙ぐんでいた。


「私の大事なレディを泣かせたのはどこのどいつだ?」


振り返るとハーベストが微笑みながら立っていた。


「愛しいティナ、ファーストダンスの栄誉を私に与えてはくれないだろうか?」


「ハーベスト様・・・喜んで。私に幸せな時間を下さいませ」


二人は優雅にホールのセンターに移動した。

見つめ合い微笑み合う二人のダンスに会場中の視線が集まる。

ティナは頬を染めてハーベストに囁いた。


「ハーベスト様・・・あなたにお会いできて良かった」


「ティナ!愛しいティナ!君はどれほど私を夢中にすれば気が済むのだろうか?私の心臓は既にあなたの物だというのに」


「ハーベスト様ったら。私の全てはハーベスト様に捧げておりますのよ?お会いしたあの瞬間から」


「ティナ・・・今宵アーレントはどこで眠るの?」


「今夜は、リリアン様にお預けしようかと・・・」


「それが良い。ティナ、すぐに私の部屋に行こう」


「ハーベスト様はパーティーのホストですわ。もう少し我慢なさって?」


「まだ我慢を強いられるのか?そんなにおあずけを喰らわすと野獣になるぞ?」


「まあ!野獣になったハーベスト様・・・どうぞ食い潰して下さいまし」


ハーベストはダンスを止めてティナを力強く抱きしめた。


『アル?』


『いや、まだ俺じゃない』


『乗っ取ったら教えてよ?』


『どうしようかなぁ~』


ティナに姿は見えないが、悪戯っぽく笑うアルフレッドの顔が浮かんだ。

抱き合う二人を遠くから見る二つの目があった。


エイアール国王とキリウス。

一方の目は暗く、もう一方は優しい。

少しだけ抱き寄せる力を抜いてティナの顔を見下ろすハーベストの目は欲情で燃えていた。


徐々に人が減り、キリウスから退室許可が出ると、ハーベストはティナを抱えるようにして自室に急ぐ。


ハーベストに攫われるように連れ去られたティナの後姿にアーレントを抱いたリリベルが手を振っていた。


いつの間に手を打っていたのか、ハーベストの自室では湯あみの準備も整えられており、ベッドの周りには真っ赤なバラの花弁が撒き散らされていた。

それを見たティナはこれから起こることを想像して真っ赤になってしまった。


そんなティナの顔中にキスをしながらハーベストが忙しなくティナのドレスを剥がしていく。

なされるままに脱がされながら、ティナは体の中心が濡れていくことに戸惑った。

一糸纏わぬ姿になったティナを抱きかかえ浴室に向かうハーベスト。

ティナを宝物のように湯舟に入れると、その場で引きちぎるように自らも脱いでいく。

湯船に横たわるように浸かるティナを後ろから抱くようにハーベストも湯に浸かった。

まるで一瞬でも離れたら消えてなくなるとでも思っているのか、ハーベストはティナの首筋を吸い続けていた。


「ハーベスト様・・・」


「アルと呼んでくれ」


「アル・・・アル・・・」


「ああ、アルだ」


「アル・・・あなたは神なの?」


「ふふふ、さあどちらでしょう?」


「間違いなくアルフレッドね」


「なぜわかった?」


「ハーベストはそんなこと言わないわ」


「そうか、失敗したな。ずっと明かさないでお前に背徳感を味合わせてやろうと思っていたのに」


「必要ないわ・・・アル、抱いて?」


「もちろんだ。離すものか」


ティナを抱き上げたアルは濡れた体のままベッドに向かった。

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