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女なので女のツボはよく心得ております

厨房横の通用口から男装したティナが仕事に向かう。

伯爵家の厨房には大き目のパントリーがあり、そこから数メートルで道路に出られる。

厩舎は騎士団に使ってもらうという名目で、ティナの愛馬は荷馬車の横に繋いでいた。


「遅くなりました・・・」


「ああ、ロアさんご苦労様です。今日も満席ですよ、頑張ってください。それと今日のプレゼントはピアノの上に置いてありますので」


バーカウンターのスタッフが声を掛けた。


「ありがとうございます」


ティナ目当ての令嬢たちから花束を贈られるのは毎度のことだが、宝石を贈ってくる女性もいる。

保護欲をそそる男性に見せかけてはいるが、ティナは身も心も性的趣向もノーマルなので心苦しいとも感じたがお金を稼ぐことが先決だ。


「あら、今日は遅かったのね?ロア。ワンステージ目はこれをつけて5番テーブルの真っ赤なドレスのご令嬢を見詰めながら1曲お願いね。それから・・・」


マダムラッテから詳細な指示を受け、渡されたブローチを襟元に留めてステージに向かった。

ピアノの横に立ち穏やかな微笑を浮かべて貴族紳士の礼をすると小さなため息があちこちから聞こえた。

会場を見回す振りをしながら5番テーブルの赤いドレスの令嬢を確認する。


(ソフトブラウンの髪のお嬢様ね・・・なかなか可愛いじゃない)


数曲ほどワルツ曲やノクターンを弾き、目当ての令嬢にウィンクしてから弾き語りを始める。

曲は『time after time』を選んだ。

かなりスローテンポにアレンジし、なるべく目をそらさないように歌い切った。

ピアノの横に立ち紳士然としたお辞儀をした後、もう一度彼女にウィンクして楽屋に下がった。

バーテンダーが楽屋を覗いて声を掛けた。


「相変わらず鮮やかなもんですねぇ~。かのご令嬢泣いちゃってますよ。罪作りな人だ」


泣くほどとは思わないがまあこちらも商売だ。

その様子を見ていたマダムラッテはご機嫌だった。


「もうすぐあなたとデートできるなら屋敷の一軒でも差し出しそうな感じだわね、ロア?」


「いやぁもうそろそろ身の危険を感じていますよマダム」


「そうね、夜道にはお気をつけなさいね?私のかわいいロア」


華やかな扇で口元を隠しながら笑っている。

本当に金儲けが上手いとティナは思った。


今夜は短めのステージを3つこなして家路に着いた。

馬を繋いで水を与えてから部屋に戻ってベッドに身を投げる。

明日は市場の食堂にいかなくてはいけない。

ティナは胸のペンダントを握り祈った。


(疲労回復よろしく!)


ぱぁっと光が指の間から漏れると体の疲れが一瞬で吹き飛ぶ。


(さすが神の道具!やるじゃんあの大魔神)


ティナはゆっくり目を閉じた。

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