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再会

「ただいまぁぁ・・・」


ベルツ王国第二王子であり、アルベッシュ帝国訪問団団長であるキアヌが疲れ切った顔で帰ってきた。


「お疲れさまでした殿下も伯爵様達も・・・で?どうでした?」


「ああ、予想以上に好感触だ。すでに実務レベルで擦り合わせを進めていたのも大きいが、何よりの成果はあちらの責任者に宰相自ら就任されたことだ」


「まあキリウス様が?」


「うん、皇帝が指名されて宰相が快諾された。いわゆるトップダウンってやつだな。話がサクサク進んでいくから・・・逆に疲れた」


さすがキリウスだとティナは思ったが口には出さなかった。

そもそもティナが王宮に住むのであれば、何の問題もなくすべての条件を呑むとハーベストが言ったとキリウスから聞いていた。


ティナとしてはアーレントの安全が第一だ。

本当ならキアヌ達と一緒にベルツ王国に戻って今まで通り暮らす方が気は楽なのだが、アーレントにアルベッシュ王家の直系子孫だけが持つ痣があると分かった時点で、予定は大幅に変更を余儀なくされた。


ティナの使命はナサーリアの保護だ。

ナサーリアに天寿を全うさせるためには戦争を回避し、ベルツ王国を繁栄させる必要がある。

そのためには絶大な力を持つアルベッシュ帝国との友好な関係維持が必須だ。

そう考えるとティナがアルベッシュ帝国に留まり、ハーベストの力を頼るというのも悪い案ではない。


(そうよね・・・みんなと一緒に改革を進めるのも楽しかったけど、考えてみるとあまりアーレントの側にはいてやれなかったし。それにティナロア嬢のためにもちょっとやりたいこともあるしね)


そう考えたティナは何事も無かったように明るい声を出した。


「さあさあ、すぐにご飯にしますか?それともお風呂に入りますか?」


「先に食事にしよう。頭を使ったからお腹がペコペコだ」


キアヌの一言で使用人たちが動き出す。


「ところでティナロア嬢、キリウス宰相が明日にでも来てほしいと言っていたぞ?何かあったのかい?」


「ええ、アーレントの件だと思います。おそらくハーベスト殿下との対面の日程とか?」


「そうか・・・そうなるとティナロア嬢の立場も変わってくるのだろうな」


「そうかもしれませんね・・・まあ私としてはアーレントが第一優先ですから」


「それはそうだろうが・・・何というか・・・おんぶにだっこで申し訳ないな」


「何を仰います。私はたまたまハーベスト様やキリウス様とご縁があったというだけです。ここから先は殿下たちの手腕がものをいいますよ?期待していますからね?」


「あ・・・ああ、そうだな。精一杯頑張るよ。明日は私たちと一緒に登城するだろう?」


「そうですね、そうさせてください」


それからすぐに始まった夕食は、当たり障りのない話題で和やかに進んだ。

各自が自室に引き取り、ティナもベッドに横になった。

ティナの横でアーレントが静かな寝息を立てている。

ティナは心から安らいだ気分になり、やがて穏やかな寝息を立て始めた。


翌朝、キアヌ達と一緒に登城したティナを迎えたのはキリウスの弟であり宰相補佐を務めているハリス・レーベンだった。


「お待ちしておりましたティナロア・ランバーツ伯爵」


ハリスのその言葉に同行者全員が声を上げた。


「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇ!は・・・伯爵?」」」」」


あまりの声の大きさにアーレントが怯えてティナにしがみついた。


「ええ・・・私も最近知ったのですが、どうも伯爵位を受け継いでいたらしいです」


はくはくと口だけを動かしている全員を不思議そうに見ていたハリスがティナの手の甲にキスをした。


「ティナロア嬢、あなたのお話は皇帝と兄から耳にタコができるほど聞いていますよ。大げさに言うなぁなんて思っていましたが、あの二人にしては控えめに言っていたようですね。これほどお美しい令嬢だとは・・・お会いできて光栄です」


「まあ、ありがとうございます。故あって市井での暮らしが長く、伯爵令嬢としての矜持も保てておりません。お恥ずかしい限りですわ」


「・・・ティナロア嬢が・・・貴族っぽい・・・」


キアヌ第二王子の呟きは全員の耳に届いたらしく、ベルツ王国側の全ての人間がコクコクと頷いていた。

ティナはそんなことなどマルっと無視してハリスが差し出した手をとって宰相執務室に向かった。

執務室で待っていたキリウスはティナに駆け寄り優しい笑顔を浮かべた。

アーレントがキリウスに向かって手を伸ばす。

キリウスは嬉しそうにアーレントを抱き上げた。


「レディティナ、知っていますか?この城内ではアーレント様が私の隠し子だと噂されているようですよ?」


「まあ、そうなのですか?確かにアーレントは初めからキリウス様には懐いていますものね・・・ふふふ、ご迷惑ではないですか?」


「迷惑なわけ無いですよ。むしろ光栄に思っています。何よりもハーベストの悔しい顔が見れましたしね」


「ハーベスト様にはいつお会いできるのでしょう?アーレントもお見せしたい・・・」


「ええ、もう少し待ってください。お迎えする準備を整えています。ん?あれほど言ったのに我慢出来なかった戯け者が向かっているみたいですよ?」


「戯け者?」


ティナがそう言った瞬間、執務室のドアが勢いよく開いた。


「ティナ!ティナティナティナティナティナ!」


ハーベストが護衛を置き去りにして駆け込んできた。


「ハーベスト様!」


ハーベストがいきなりティナを抱きしめた。

二人は何も言わずただただ抱きしめ合っていた。

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