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やっと始まる会議

キリウスと面談した翌日からも、ティナは相変わらず屋台でフィッシュバーガーを売っていた。

情報収集という側面がある限り簡単に止めるわけにもいかない。

雑談する風を装いながらもティナは着実に市井の声を拾っていた。


第一王子派と皇太后の推す第二王子派の争いは表面上だけだったことや、自分の産んだ第二王子をゴリ押しした皇太后が王宮の奥に隔離されたことなどもこの市場で市民の口から知った。


(ハーベストって意外と人気があるのね・・・それに第二王子とも実は仲がいいみたいだし、帝国も安泰ね)


たった1日とはいえ、この世界で初めて身を任せたハーベストの評判が良いことはティナにとって嬉しいことだった。

神からの願いもハーベストとの関係が良いからこそ叶ったようなものだ。

ティナがハーベストを憎からず思っているのも当然だった。


(後はどうキアヌ殿下と会わせるか・・・)


ティナは屋台を店じまいし、そう考えながら迎えの馬車に乗り込んだ。


「ただいま帰りました」


「ああ、お帰りティナロア嬢。疲れただろう?」


「ああ、キアヌ殿下。今日もお早いお帰りでしたのね。相変わらずって感じですか?」


「いや、今日はとっても良い報告ができるよ。遂に明日会えることになったんだ」


「まあ!それは・・・おめでとうございます」


「ああ、ありがとう。まあ会えることになっただけで、勝負は始まったばかりだけどね」


「会って話すことさえあんなに難しかったのですから、大進歩ですね」


「うん。ロバートやワンドも張り切っちゃってね。明日の資料作りで部屋に籠りきりさ」


「待ちに待った日ですものね」


ティナはキアヌにエスコートされながら居間に向かった。

共有スペースである居間にはアーレント用のベビーベッドが置かれている。

その中で機嫌よくニコニコ笑っているアーレントをキアヌが抱き上げた。


「アーレントの様に素直で優しい心根の方なら良いのだけれどね」


アーレントをあやしながらキアヌが不安を口にした。


「殿下、そこは大丈夫ですよ。この国の皇帝も宰相も本当に良い人ですから」


「なんだかティナロア嬢が言うとその辺の若者に会いに行く程度に聞こえるから笑えるね」


「だって本当にそうなんですもの・・・そうだ!今から例のメレンゲクッキーをたくさん焼きますから、手土産としてお持ちください」


「ああ、それは良いね」


「ハーベスト様とキリウス様はフィッシュフライバーガーがお気に入りでしたから、それも用意しておきますね」


「えっ?帝国の皇帝と宰相がフィッシュバーガーを?」


「ええ、大好きでしたよ?一人で三つ位ペロッと召し上がっておられました」


「・・・想像できないが」


「まあ騙されたと思って。大丈夫ですから」


「そう?」


不安そうにアーレントを抱きしめるキアヌを残してティナは厨房に向かった。

そもそもキリウスと話がついているティナは心配などしていない。

むしろ話がとんとんと進みすぎて疑われることを恐れていた。


(キリウスのことだから心配はいらないと思うけど・・・キアヌも意外なところで鋭いのよね)


翌朝、いつもより早めに起きてお土産用のバーガーとメレンゲクッキーをバスケットに詰めたティナはキアヌ達を見送ってから屋台に向かった。


「おう!今日も早いねティナロア」


「あら、おはようダンさん。今日もよろしくお願いします」


『おはようティナ。昨夜は話せなくて悪かったな。寂しかっただろう?』


開店準備をするティナの頭の中にアルの声が聞こえた。


『おはようアル。そうね・・・とても寂しかったわって言っておくけど・・・何かあったの?』


『ああ、大したことではないさ。サーリが熱を出したから、看病していたんだ』


『まあ、サーリが?大丈夫なの?』


『うん、もう熱も下がったし。ちょっと張り切りすぎで疲れたのだろう。父親に外出禁止を命じられて落ち込んでいた』


『そうなんだ・・・大事じゃなければ良かったわ。そういえば今日はハーベストとキアヌがやっと会うのよ。まあ殿下の事だからソツなく進めるだろうけれど、アルも様子を見ておいてよ』


『そうだな。見るだけなら・・・まあ心配するな。アーレントは元気だし、お前は俺を愛しているんだから、他のことはゴミ以下だろう?』


アルフレッドの言葉にティナは苦笑いをした。

商品を並べ終わったティナに次々と声がかかる。

今日も完売早じまいね・・・ティナはそう思いながらどんどんお客を捌いていった。

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