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やっぱり仕事三昧

騎士のジョンが同行し、ティナは第一候補の露店場所に向かった。

ほどほどの道幅に多くの人が行き交っている。


「なかなか活気のある場所ですね」


「ええ、この辺りは商業的にも多くの店が並んでいますが食べ物を提供する露店が多いことでも有名な場所です」


「家賃はどのくらいですか?」


「少々お高いですが、まあ相場の範囲ですね。月に20シルバーです」


「まあ許容範囲ぎりぎりっていうところですね。迷っても仕方がないのでここに決めましょう」


「では手続きに行きましょう。借主の名はティナロア様でよろしいですか?」


「はい、それで結構です」


二人は露店を管理する商会に向かった。

ティナはベルツ王国の実家の住所で契約を結んだ。

サインをして契約金と前家賃を支払う。


契約を済ませた二人は必要なものを買いそろえるために市場に向かった。

仕込みは邸宅の料理人たちに手伝ってもらい、ここでは販売のみを考えているため、露店といっても販売カウンターと作業台くらいしか必要ない。


重たいテーブルは運んでもらい、こまごましたものはジョンが運んでくれた。

明日から仕込みを始め、明後日にはオープンする予定だった。

メニューはもちろん魚フライを挟んだバーガーだ。


白身の魚と食パンはすでに配達依頼しているので、後はマヨネーズづくりだ。

上質のオリーブオイルと新鮮な卵、酸味の強いビネガーを仕入れて家路についた。

ティナは平民と同じシンプルなワンピース姿で軽やかに歩いて行った。


「もっとゆっくり。糸のように垂らすのです」


ティナが料理人たちにマヨネーズづくりを教えている。

マヨネーズというものを知らない料理人たちだが、さすがにソツなく作っていく。


「後はこのピクルスを刻んで、ゆでた卵も刻んで・・・玉ねぎも同じように刻んでください。ああ、水気はしっかり絞ってくださいね」


どんどん作業は進んでいく。

いつの間にか帰宅していたキアヌが興味深そうに作業を覗き込んでいた。


「後は塩と胡椒で味を調えます。あっ!殿下お帰りなさいませ」


ティナが慌てて挨拶をする。


「嫌だなぁ・・・ここではキアヌって呼んでよ。私もティナロアって呼びたいな」


「それは構いませんが?ではキアヌ様?」


「キアヌ」


「キ・・・アヌ?」


「そう。よくできました」


明るい笑い声が厨房に響いた。

白身魚のフライも順調にできていく。

さすが王城の料理人は絵にかいて教えただけのバーガーバンズを見事に焼き上げていた。

今日の夕食は当然試食を兼ねたフィッシュバーガーだ。


「どうですか?」


「旨い!うますぎる!絶対売れる!」


全員に絶賛されティナはホッと胸をなでおろした。


「大量に発生する卵の白身は炒って混ぜ込みましょう」


料理人が提案した。


「さすがです。お任せします」


ティナは販売だけに専念することにした。

翌日は朝から市場に向かい、バーガーを渡すときに包む紙を見て回った。

油を適度に吸ってくれつつ、水気を撥ね返すものが理想だが、コーティングという考えがない今の世界では、なかなか思うようなものが見つからない。


「困ったわね・・・」


店員たちもいろいろな提案をしてくれるがなかなかしっくりしないティナだった。


「これはどうですか?少し値が張りますが」


「どれどれ?ああ!これは良いわね!いくらするのかしら」


「ご指定の大きさにカットする手間賃を含めて大判一枚で1シルバーです」


「高いわね~」


「でも水気があっても破れにくいですから、食材に紙が着くのは防げますよ」


「まとめ買いするから少しお安くなりませんか?」


「なるほど・・・では100枚纏めていただけるなら90シルバーにしましょう」


「もう一声!」


「参ったな・・・では85」


「いやいや。もう少し頑張れるでしょう?」


「無理無理!」


押し問答の末、100枚で75シルバーという値切りに成功したティナは鼻息を荒くしてガッツポーズを決めた。

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