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王子様登場

「リア!ロビーを早く温めて!それとお風呂を沸かしてちょうだい。家中のお風呂を全部よ。それから全部のお部屋の換気をして!バラの芳香剤も忘れないでね」


「畏まりましたお嬢様」


「ビスタは夕食をお願い。今夜は特に寒いから温かいシチューを50人ね!パンも全部出して!足りなければ私が買いに走りますから!」


「承知いたしました」


たった3人で30人をもてなすという離れ業だが、何度もシミュレーションを重ねているので無駄な動きは一切ない。

予定通り40分以内には計画行動を完了した。

外から馬の嘶きが聞こえ、すぐにドアがノックされた。

ビスタが開けに行く。

これも練習通りだ。


「お待ちしておりました。アルベッシュ王国第二騎士団の皆さま」


ティナが優雅なカーテシーを披露した。

先頭を切って入ってきたハーベスト皇太子が挨拶をした。


「この度は急な要請にもかかわらず、快くお受けいただき感謝申し上げます。あなたがティナロア伯爵令嬢ですね?お美しい方で驚きました。おひとりでお留守番とか・・・我々は野営にも慣れておりますので、庭先をお借りできれば十分です。どうぞお気遣いなく」


「アルベッシュ王国第一皇子ハーベスト殿下にご挨拶申し上げます。私はベルツ王国伯爵、ランバーツの二女ティナロアと申します。我が国のために殿下自らご出兵賜り、心より感謝いたします」


「ご丁寧な挨拶、痛み入ります」


「先ほど庭先をというお話しでございましたが、夜は大変冷え込みます。すでにお聞き及びと存じますが、我が屋敷は空き家も同然の状態でございますので、ご存分にご利用ください」


驚いた顔をしているハーベストに向かってティナは続けた。


「私の部屋は二階の右側で、使用人たちの部屋は一階の奥手にございます。その他の部屋はどうぞご自由にお使いいただいて構いませんわ。但しベッドもテーブルもございません・・・お恥ずかしい次第ですが・・・お風呂とお食事は私共でお世話させていただきます」


「いえっ!そんなお気遣いは・・・」


「粗末なもので申し訳ございませんが・・・寒い日は温かいというだけでご馳走だとも申します。お風呂は各階に二か所ずつございます。既に全て準備が整っておりますので順番にお使いください」


「何から何まで・・・痛み入ります。それではお言葉に甘えさせていただきましょう・・・」


「皇子殿下のお部屋は二階の東側の客間をご用意いたしております。この部屋には小さいですがベッドもお風呂もございます。どうぞお寛ぎ下さいませ」


ハーベスト皇子は補佐官らしき男に目線で指示を出した。

騎士たちが粛々とロビーに入ってくる。

ビスタがハーベスト皇子用の部屋やその他の間取りを補佐官に説明している間に、リアがロビーに簡易テーブルを運び始めた。

騎士たちが率先してテーブル運びを手伝ってくれたので、リアは厨房に走り食器を持ち出した。

皿もグラスも一級品ではないが数だけは揃えておいた。

ワインも樽で用意している。

全て予定通りに運んでいた。


「ハーベスト皇子殿下、よろしければお部屋にご案内いたしますわ」


「ご令嬢自らとは・・・感謝します」


「どうぞティナとお呼びください。大したおもてなしは叶いませんがどうぞお寛ぎくださいませ」


「ああ・・・ティナ嬢、ありがとうございます。それでは私のことはハーベストと呼んでください。敬称は要りませんよ」


「そんな・・・それではハーベスト様とお呼びしても?」


「もちろんです」


「それではハーベスト様・・・お部屋はお二階でございます」


微笑を忘れず静々とした美しい姿勢のままティナが先導する。

ハーベストはその貴族令嬢のマナーの美しさに小さくため息をついた。

ハーベスト皇子の荷物を持った補佐官が後に続いた。


「どうぞこちらでございます。補佐官の方はお隣のお部屋をお使いいただければと存じます」


「お気遣いありがとうござます。これは私の補佐官をしてりますキリウス・レーベンです」


「キリウス・レーベンと申します。ティナロア伯爵令嬢」


キリウスはティナの手を取り騎士らしいお辞儀をした。


「よろしくお願いいたします。レーベン卿」


二人の様子を見ていたハーベストが口を出した。


「レディティナ。こいつに卿などつけなくても良いですよ。キリウスは私の乳兄弟であり親友ですからどうぞ呼び棄ててやってください」


「恐れ多い事ですわ。では私のことをティナロアと呼び棄てていただけるのでしたらそういたしましょう」


キリウスが慌てて顔の前で手を振った。


「無理です無理です。殿下!助けてください!」

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