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農業政策発動

ベルツ王国における主要メンバー会議の後、それぞれが精力的に動き出す。

ティナはまず結果が出るまでに時間が必要な農地改革に着手した。

文官長であるワンド伯爵が過去10年間の農作物収穫高と作地面積の推移をまとめた資料を持ってきた。

その資料をじっくりと睨んでいたティナが言った。


「なるほど・・・作地面積は変わっていないのに収穫高が右肩下がりに落ちていますね」


ワンド伯爵が頷きながら返す。


「農地が宅地に変わったわけではなく・・・要は農地が手つかずのまま放置されている地域が増えたのです」


「原因は作り手の減少ですね?」


「はい、若者の農業離れは深刻です。農民として従事している人口と都市での路上生活者の人口が見事に反比例しています」


「彼らはなぜ農業から離れたのでしょうか」


「戦争で傷ついた体での農作業には限界があったのではないかと推測します」


「従軍受傷者や死亡者に対する保証はどのように?」


「一生涯を保証することは無理ですが、症状に応じた一時金は支給しています」


「結局それを使い果たした結果が路上生活という事ですか・・・」


「おそらく彼らは支給された補償金を家族に渡し、家を離れたのだと思います。働けなくとも食費は掛かりますからね・・・」


「なるほど・・・農業が嫌で離農したわけでは無いのですね。でしたら方法はあるかもしれません」


「そうれは?」


「集団農業という考え方です。一家で全てを担うのではなく、ある一定の地域やグループで共同作業をするのです。その中で役割を分担してできることをするのです」


「不公平感は出ないでしょうか」


「なるべく不公平にならない様にグループ分けをする必要はありますね。例えば耕す作業はできなくても、収穫物の選別や管理はできるかもしれない。営業活動も可能なのではないでしょうか」


「ふむふむ・・・それを実行するには離農した者の状態を把握する必要がありますね」


「そこは領主たちを巻き込んで早急に手を打ちましょう。お願いできますか?」


「もちろんです」


ワンド伯爵は後ろに控えていた文官たちに早速指示を出した。


「それからワンド伯爵様、地域ごとの現農業従事者と帰農できそうな人数、作付け可能面積と収穫予定作物の一覧を大至急まとめてください」


「かしこまりました」


ワンド伯爵が立ち上がった。


「聖女ティナロア様、なんだか久しぶりに生きているという実感がわきましたよ」


「そうれは良かった。ワンド伯爵様がいなければ進むことはできません。頑張りましょうね」


ワンド伯爵は大きく頷いて部屋を出た。


聖女の微笑みを湛え続けていたティナは、ドアが閉まると同時に足を投げ出して大きくため息をついた。


『アル・・・私、間違ってない?』


神がスッと姿を現した。


「ああ、ティナは立派にやってるぞ。見たか?あやつの眼差し。あれはもう聖女ティナロア様に心酔しきっている人間の顔だ。なかなかやるなぁティナ。さすがクラブD で鍛えた誑し技だ』


『ああ、あれは人生の世知辛さを知らないお嬢様相手だったからね~』


『基本は同じだろ?それにお前は神である俺でさえ惚れさせたほどの女だ。この調子で頑張れよ』


『うん!頑張るわ。それと戦傷者ってどんな状況の人が多いのかしら・・・知ってる?』


『ほとんどが足か腕をやられて働くことができないというパターンだな』


『専用の器具を開発する必要がありそうね・・・この時代で可能なものを考えないと』


『そうだな。でもたまには俺のことも考えてくれよ?』


『ふふふ・・・最近は大魔神らしからぬ可愛い言動が増えたんじゃない?』


『ああ、さすがの俺もお前にだけは嫌われたくないらしい』

『ふふふ、では忙しい私の代わりにアーレントを見ていてくれる?』


『仰せのままに、お姫様』


お道化て紳士の礼をとった神がスッと消えた。

その姿を見送ったティナは勢いをつけて立ち上がり部屋を出る。

フェルナンド神官の執務室に入ると、フェルナンドは大きな地図を広げていた。


「お邪魔しましたでしょうか?」


「あなたを邪魔にするようなものは誰一人としておりませんよ?聖女ティナロア様」


「どうか昔馴染みのよしみで今まで通りティナとお呼びください。ところでお願いがあって参りました」


「何なりとお申し付けください」


「実は・・・」


ティナは障害により農作業から離れなくてはいけなかった人たちのために、補助具を作る計画を話した。


「なるほど・・・歩行困難者には移動できる椅子を、手の不自由な者には足だけで作業ができるものですか・・・。画期的ですね」


「ええ、そこで探していただきたいのが腕の良い指物職人です」


「大工ではなく指物師ですね?心当たりがありますからすぐに手配しましょう」


「よろしくお願いします」


フェルナンドはすぐに動いた。

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