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新しい木の匂いが鼻腔をくすぐる教会の中でティナは感嘆の声を上げた。


「素晴らしいわ。ジュリア・・・良かったわね」


「はい。本当にありがとうございます。神官の方々はいつ頃来てくださるのでしょうか」


ティナはアルフレッドの顔を見た。

アルフレッドが小首をかしげて口を開く。


「そうだな・・・今からでも良いぞ?」


「またまたご冗談を。実は教会に必要なものがよくわからなくて困っていたので」


「ああ、それなら特に決まったものは無いさ。神に仕える強い意志と、己を律する強い心を持つ者がいればそこが神の家だ。ここにはすでにジュリア、お前がいる。ここは間違いなく立派な教会さ」


「義兄さん・・・どうしてでしょう。義兄さんの言葉を聞くと心が震えて涙が溢れてしまいます」


「そうか・・・ジュリアの魂はきれいなのだな。ティナと同じだ」


アルフレッドはそういうとティナの腰をぐっと強く引き寄せた。

そんなアルフレッドの耳元でティナが囁いた。


「エロさは?」


「うん、まあ男だから多少は滲んでるが・・・お前ほど強烈ではない」


二人の囁くような会話が耳に入らなかったジュリアは不思議そうな顔で見ている。

ティナは聖母のような笑顔を浮かべながら、アルフレッドの足に全体重を載せた。

ビクッとしたアルフレッドは、少し足を引きずりながら逃げるように子供たちへの土産を配りに行く。

そんな彼の周りには相変わらずキラキラした光が飛び交って、美しい金髪と戯れていた。

ふと自分の周りを見ると、同じようにキラキラした光が溢れている。


(天使に歓迎されているような気分だわ・・・私って本当に神の伴侶になれるのかしら)


神の強引な押しに流されるまま、ここまで突っ走ってきたティナは、教会が新しくなることに深い感慨を覚えつつも漠然とした不安も感じていた。


(まあ一度は死んだんだもの、怖がることも無いわね)


考えても仕方がないことは考えないようにする・・・ティナの長所であり、最大の欠点が発揮された。


「姉さん、子供たちと一緒にランチにしませんか?」


「ええ!喜んで。今日はフライドチキンをたくさん持ってきたの。まだ温かいからみんなで食べましょう」


そういうとティナは大きな紙袋を車から取り出した。

匂いにつられて子供たちが駆け寄って来る。

シェリーが工事中スタッフにも声をかけ、全員でガーデンランチが始まった。


ティナは子供たちに囲まれるアルフレッドのそばに行く。

アルフレッドは膝に乗っていた子供を降ろし、そこにティナを座らせた。

ティナの体を両手で支えニコニコと笑うアルフレッド。

これほど心から幸せだと感じたのは生まれて初めてかもしれないと思うティナだった。


一晩教会で過ごしたティナとアルフレッドは首都に戻り国立図書館に向かった。

遅めのランチはティナの要望によりピザだったが、アルフレッドの方がハマっていた。

図書館についた二人は迷わず歴史書のコーナーを目指した。


「今回の対策で歴史が変わってるかしら」


「今年の疫病は相当な死者を出したから必ず記録されているからな。対策を打つ前の死者の数は把握しているのか?」


「ええ、以前まとめてもらった資料のコピーを持ってるから比較はできるはずよ」


目当ての本を探し出し、頭を突き合わせてページをめくる。


「あったわ!ベルツ王国フィーダー三世の時代に発生した疫病・・・死者2万人。全人口の3%だって」


「対策前の資料の数値は?」


ティナは鞄から冊子を取り出して広げた。


「えっと・・・死者14万人で全人口の21%だって。激減してるわ・・・大成功って言えるんじゃない?」


「ああ、特に若年層の死者が減少しているのが効果的だ。若者が減ると国力が下がる」


「私ってかなりいい仕事してるんじゃない?まあ本当はみんなのお陰なんだけど」


「いやいや、お前でないと為せないことだったよ。さすが俺の嫁だ」


「嫁って・・・なんか恥ずかしい」


「おぉ!恥ずかしがるティナ・・・可愛い!」


アルフレッドがティナの頬にキスをした。

ティナは少し照れながら話題を変えた。


「まあ今回の対策は継続が命だから、後はいかに習慣化させるかだね」


「そこは教会を使うのがいいだろう。教会が主催するあらゆる機会を利用して地道に続けるしかないさ」


「そうね。種は蒔いたんだものね。次は?戦争回避だったっけ?」


ティナは冊子をめくって確認した。


「お~やる気満々だねぇ」


神はティナの頭をぽんぽんと撫でた。

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