表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/182

ターゲット到着

ティナは約1か月働きづめに働いている上にドレスも貴金属も買っていないので、予定より早いペースで貯金できていた。

使用人たちの給料は半年分先払いされているから、ターゲットが来るまではひたすら貯蓄に廻せるのがありがたい。

しかし備えあれば憂いなしという言葉通り、食料品や毛布などは余分に準備しておきたい。

というのもつい先日、神から情報提供されたのだ。


「ターゲットは初冬に到着する。この街の先にある国境沿いで発生する隣国との小競り合いを静めるためという理由だが、国境近くの川が氾濫して通行止めになるんだ。そこで遠い親類であるランバーツ家に宿泊要請に来るというわけ。滞在は約1か月で人数は30人程度だ。まあ自然災害によって小競り合いは自然に収まるが、ベルツ王が王都に招待するから帰国せずそのまま向かうことになる。で、せっかく乗っ取ろうとしている国の王都に滞在できるチャンスを逃すわけもなく、そこから2年程度は王都に居座り続ける」


「なるほど・・・じゃあ2年半後が第一次の戦争危機ってことね」


「そうなるだろうな。そこで揉め事でも起こして皇太子が怪我でもすれば戦争になっても不思議じゃない」


「まあこの国が滅びないようにするためには絶対回避ね・・・それとあんたの番になる可愛そうなお嬢さんはみつかったの?」


「かわいそうじゃなくてラッキーなお嬢さんだ!まだ・・・見つかってない」


「はぁぁぁ・・・ちゃんと探してるんでしょうね?」


「もちろんだ。もうそれはそれは目を皿のごとくして・・・」


「なんだか必死ねぇ」


「そりゃ必死にもなるさ!前の番が死んでから何年独身を貫いていると思っているんだ!」


「神の恋愛事情って人間より大変そうね・・・気の毒に」


「お前なぁ・・・まあいいや。他には?何か困ってること無い?」


「働いても働いても我が暮らし楽にならずじっと手を見るってとこかしら」


「お前さぁ・・・また人の話聞いてなかったろう。神通力ってのを授けてやっただろう?治癒能力と防御能力があるんだよ?そのペンダント握って祈ってみろよ。一発で疲労回復する」


「えっ?神通力って?私?」


「やっぱり・・・まあお前らしいっちゃお前らしいけど」


「ありがたい!ガンガン稼ぐことにするわ」


「ああ、あんまり無理すんなよ?お前って結構心配な奴だよなぁ」


「ふふふ・・・惚れた?」


「いや。無い」


そういうと神は霧のように消えたのだった。

しかし無駄に凄い力を貰っても使いようは無いものだとティナは思った。

それから約4か月の間、午前中は食堂のロア君として市場のおばさまたちと仲良くなり、夜はピアノマンロア様と呼ばれながら確実に貴族令嬢たちの心を掴んでいった。

ロアが出演する日は常に満席になり、入店待ちの令嬢たちの列ができるという状況だ。

お嬢様方はロアの気を引こうと高価なプレゼントを持参し、高額な飲食代を落としていく。

そんなお嬢様方の機嫌を損ねないように愛想を振りまき、たまにはダンスパートナーや手の甲へのキスなどティナも努力を惜しまなかった。

そして神の情報どおり国境沿いで小さな戦乱が発生し、同盟国であるアルベッシュ国の皇太子が出兵してくるという話を買い出しに出たビスタが仕入れてきた。


(いよいよね。食料品のストックも燃料もリネンも万全よ!)


市場の食堂には一緒に暮らす叔父の体調が悪いので二日ほど休むと伝えてある。

冬場は暇だから問題ないというので安心だ。

クラブDは休めないのでこっそり出るしかないが、まあそれもシナリオに折込み済だ。

貯めたお金で上品だが質素な普段着ドレスを数着とメイド服、使用人服を新調した。

庭も屋敷内も何もないが清潔感だけは満載にしてある。

後はビスタとリアの献身的な働きと『可愛そうな境遇にもかかわらず、健気にひとりで頑張っている売られる運命の伯爵令嬢』を演じるティナの演技力だ。

そしてその日はやってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ