異星人達の夕べ
昔々、哀れな星のお話
7月の午後4時頃、北の空に一際明るく長い尾を引く彗星が現れた。天文台の説明によると、地球と月の間を通るらしい。
まだ明るいと云うのに流れ星が見えると言って、皆は珍しそうに北の空を見上げていました。そんな中、僕も北の空を見上げて彗星を眺めていると「流れ星を観ていの」ポン!と、佐藤さんが肩を叩いてきました。僕は「あぁそうだよ、君は観ないの」と聞くと、頭を横に振り笑顔で「もう、見飽きちゃった」 彼女は「ところでさ、今夜の星空観察会には田中くんも来るよね」僕は「もちろん行くけど」彼女は「良かった、それじゃ迎えに行くね」そう言うと、いつの間にか人混みに消えていた。
その夜、少し早めに彼女は僕の家に来て、話したい事が有ると云うので、僕の部屋に入れた。彼女は僕の部屋に入ると、立ったまま真剣が眼差しで僕の目を見つめて「テレビのニュースで、天文学者が彗星は地球には衝突しないと、話していたでしょう。あの話は嘘よ」彼女は僕の部屋に入るなり、唐突に何を言いだすかと思えば、彗星が地球に衝突するなどと馬鹿げた事を言い出したではないか。世界中の天文学者や数学者が、緻密な観測と計算を元に彗星は地球に衝突する恐れはない。と言っているのに、17歳の女子高生が何を言っているのだろうと思い、僕は話半分に聞くことにした。
僕は「それで、どうして君は彗星が地球に衝突すると思うんだい」そう聞くと、彼女は「思っているんじゃないの、確実に彗星は地球に衝突して、木端微塵に吹き飛んでしまうの。細菌やウイルスも生き残れやしないわ」
彼女はそう言うと、着ている服や肌着を脱ぎ始めて素っ裸になった。驚いた僕は「おいおい、いきなり何をしているんだ、服を着てくれ」彼女は、慌てる僕を気にもせずに、背中を丸め両腕を体の前にだらりと垂らすと。彼女の背中が建てに真っ二つにパカッと割れ、眩い光を放つ人が出て来ました。
彼女は、開いた口が塞がらない僕を、覗き込むように観て「私たちは、この星の人達を救うために来ました」そして、眩く光る掌を僕の頭に乗せると、頭の中にヴィジョンを送って来ました。それは、例えるなら拡張現実のような夢を観ているような感じ。その中で、彼女たちが何処の星から来て、僕達をどこへ連れて行くのかも教えてくれました。
彼女は僕の頭の中に直接語り掛けてきて「分かってもらえましたでしょうか。もう、あまり時間がないので、これから貴方を目的地まで転移移送します」そう言うと、彼女は両手を合わせ広げると、オレンジ色にピカピカ光る大きな輪を取り出して、僕の頭から足に掛けて8個を通すと。僕の目の前でクルクル高速回転し始めると、キラキラ光り始めて全身が中に浮いたような感覚がしたかと思った瞬間・・・
その時、地球から多くのオレンジ色の長い尾を引いた発行体が、彗星にむけて飛び立って行きました。
彗星に見えていたのは、資源の枯渇した惑星から脱出してきた異星人達の巨大な宇宙船だったのです。彼らは宇宙を探査し、資源や食料を確保できる惑星を見つけると。その惑星の事を隅から隅まで調べつくし、用意周到に準備をして地球人に気付かれる事なく侵略をしていたのです。
地球の水や大気から植物鉱物に至るまで、根こそぎ持ち去ると、地球を爆発して去って行きましたとさ。
おしまい。
子供たちと焚火を囲んでいた老婆は、一冊の本を閉じて「だうだった、面白かったかい」子供たちは、笑顔で「うん、面白かった」「そうかい」満足そうな老婆、一人の子供が「ところで、時空転移装置に乗せられた少年はどうなったの」老婆は「あゝあの子かい、あの子はね美味しく食べられたそうな」好奇心に目を光らせた子供は「わー僕も食べたかったな」老婆は微笑みながら「みんなも毎朝食べているフレークがあるだろう、あのフレークは人間の肉から出来ているんだよ」
「へ~そなんだ、知らなかった」「人間はね繁殖力が旺盛だから、家畜としてとても重宝されているんだよ」「みんなも好き嫌いを言わずに残さず食べるんだよ」「はーい」こうして異星人達の夜は更けていきました。