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月光の狐  作者: 葉暮銀
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ナギとの再会【シロの視点】

 祠が私の家だった。

 金色の狐が私のお母さん。

 人型になると綺麗な金髪の女性になる。私のみたいに狐耳や尻尾なんかは出ない。

 「シロも大人になればできるようになるよ」と微笑みながらお母さんは言っていたが、未だにできない。


 私は祠を出て日光浴をするのがとても好きだった。日の暖かさがお母さんに似ていたから。

 祠は日本家屋の庭にあった。

 私が日光浴をしていると、たまに男の子がやってくる。

 私は人型になって良く一緒に遊んだ。

 男の子は陽だまりのような笑顔を向けてくれた。

 とても楽しい日々。


 それがいつの日からか男の子が遊びに来なくなった。

 お母さんに理由を聞いたら、男の子は遠いところに引っ越してしまったって言っていた。あんなに気持ち良かった日光浴が暖かく感じ無くなってしまった。

 お母さんの眷属の源治さんは「また機会があったら孫と遊んでくれな」って笑って言っていた。


 その後、私は狐神界での妖狐小学校に入学した。

 私は金狐のお母さんの子供と言うことで周囲の期待が大きかった。

 しかし成績は平凡。知識も体術も神力も中の中。

 私は周囲の期待に応えようと一生懸命努力した。しかしどうにもならない。

 その内、私は努力も人並みにしかしなくなってしまった。

 妖狐中学校に上がり平々凡々に過ごす毎日。


 勉強の息抜きに神界から物質界の祠に行く。

 祠を出ると辺り一面白銀の世界だった。

 雪はもう降り止んでいる。月の明かりがとても眩しい。雪が全ての音を吸収しているのか静寂な世界だ。

 雪の上を歩き出す。

 日向ぼっこをしていたお気に入りの場所に行き月を見上げた。

 冷たい風が清浄な空気を作り上げている。

 肺の奥まで呼吸をすると頭が冴えてくる。

 その時、何かが近づく気配がした。

 慌てて祠まで逃げて神界に戻った。


 妖狐高等学校に進学したある日、母親に呼び出された。

 重要な任務が入ったから何かあっても落ち着いて行動するように言われた。

 金狐であるお母さんは狐神界の神格管理局の重鎮だ。

 お母さんの眷属の源治さんは「困った事があったら孫のナギを頼れ」とニッコリと笑いながら言う。

 改まって二人から言われた事で、とても危険な任務なのだと感じた。心配する私にお母さんは大丈夫と優しく諭す。


 その3日後、狐神界での争い事が起きた。

 狐神界の中央と野狐の里で大規模な戦闘に発展したようだ。

 お母さんがそれに関わっていたのかは分からない。

 ただお母さんは帰ってこなかった。


 物質界の祠に行き、源治さんを確認しに行くと、御通夜が行われていた。

 源治さんは亡くなっていた。


 狐神界の神格管理局にお母さんの行方を何度も聞きに行った。

 返事はいつも素気ないもの。重要機密のため、家族であろうと話せないの一点張り。

 お母さんの手掛かりを得る為には狐神界の神格管理局の重要情報にアクセスできるようにならないとダメだ。

 その為には神格を上げるしかない。

 それからは必死に自分を鍛えた。

 苦手な体術、多種多様な知識、神格を上げる為の修行をこなした。

 もう一度、日の暖かさがするお母さんに会うために。


 妖狐高等学校を卒業し、神格を上げるために1人で悪霊退治を始めた。

 源治さんの言葉は覚えていたが、昔一緒に遊んでいた男の子を頼る事を躊躇した。男の子に断られる事が怖かった。

 思い出は綺麗なままで心にしまっておきたかった。


 しかし悲しい事に、なかなかうまくいかない。

 妖狐高等学校を卒業してすぐに悪霊退治などできるものではなかった。

 3ヵ月間1人でもがいた。


 身体も心もボロボロになってしまった。

 精も根も尽き果てた先に、男の子の陽だまりのような笑顔が頭に浮かぶ。

 物質界に行き、祠を出る。

 日本家屋は暗くなっている。狐の姿のまま裏口の専用出入口から中に入った。

 源治さんの家にはお母さんと私の部屋がある。暗闇の中、その部屋に向かう。

 その部屋は源治さんが生きていた時と同じままだった。


 人型になり、衣装箪笥を開ける。

 特注で作られた尻尾を出せる袴があった。私の為に源治さんが用意してくれた服だ。服を着て居間の電気を付ける。

 ドキドキが止まらない。

 あの男の子とはもう16年も会っていない。

 私の事は覚えているだろうか?

 冷たくされたりしないだろうか?

 追い出されたりしないだろうか?

 暫く待っていると玄関が開く音がした。

 人が歩いてくる音。心臓がバクバクする。

 襖が開いた。

 青年が入ってきて気安く話しかけてきた。


「久しぶりだな、シロちゃん!」


 ナギは、()の日を思い出させる陽だまりのような笑顔を浮かべていた。

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